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45 遺跡の中に佇むやつ

 

 翠散水樹を回収したので、下層の18に移動しそこに生えている同じく依頼されていた宝石樹である紅玉炎樹の採取を進めた。

 採取方法は翠散水樹と同じなので、そのまま作業に移り核の処理を終わらせる。


「紅玉炎樹は翠散水樹よりは一般的な樹の木目に似た見た目をしていますね」


[いや、まあ、似てはいるけど]

[こっちもだいぶ記憶と違うんやが]

[俺こっちの方が好きやわ]

[木目がゆらゆら光ってるの不思議]


 紅玉炎樹の樹の断面はよくある樹の年輪のように早材と晩材に当たる模様が存在している。しかし、普通の樹とは異なり早材の部分は薄めの赤色、晩材は宝石のルビーのように透き通った濃い赤をしている。特に晩材の部分は揺らめくように淡く光っていて、この部分が炎樹の名前に繋がっている。


「木目の濃い部分、晩材に当たる場所が紅玉炎樹の最大の特徴です。この部分が質に応じて透明度が変わって、いい感じに採取できるとこんな感じの見た目になります」


 翠散水樹に引き続き、上手く核の処理をすることができたことで高品質の紅玉炎樹を採取することができた。


[なんでこれ有名でないん?]

[今まで興味なかったからでは?]

[興味ないジャンルは有名なものでも知らないってこと多いからそれだろうな]

[これで作った机欲しい]

[加工してもこの光維持できるのかな]


「条件が整っていれば加工してもこの揺らめきは維持されます」


 紅玉炎樹の光は外部の魔力に反応してゆらゆらと光を灯すようになっている。微量でも魔力があれば光るため魔道製品が近くにあれば条件を満たせるので、よほどダンジョン関連製品に関わらない生活をしていなければ問題なく条件を満たせるはず。


「本当にいいですよねこれ。欠点を言えばうっすら光っているからこれで作った家具の周囲がちょっと明るくなってしまうことかな」


 魔力が少しでもあると光ってしまうので寝室みたいな暗くしたい部屋には向いていないんだけど、うっすら光ってほしいところに置くのは悪くないんだよね。


[はえー、このまま光るのか]

[条件というのが加工の時なのかその後のことなのか]

[どういう原理なんだろうか]

[魔力に反応しているとか?]

[なんかちょっと艶めかしい感じで断面撫でてるのグッとくるな]


 紅玉炎樹もある程度形を整えた後鞄の中にしまう。


 これで依頼されていた素材は集まった。会社からのお願いもここに来るまでにすべて終えているので、あとは戻るだけなんだけど。


「用事も終わりましたしこのまま戻ってもいいのですが、この層ってあいつがいるんですよね」


 この階層は1つ上の階層とは結構環境が違って森もあるんだけど、火山の近くの森って感じで荒地も結構混じっていて場所によっては燃えていたりするんだよね。

 なんというかちょっと古代感ある場所もあるし、観光地化出来たら面白いと思うんだよね。ダンジョンの下層だからそんなの無理なのはわかっているけども。


[あいつとは]

[桜島ダンジョン下層の18にはやつが……いる!(何もわかってない)]

[あいつ固定エンカウントだっけ?]

[現在の時間は22時半になります。帰れるなら帰って寝たほうがいいよ]

[移動時間考慮するとてっぺんは超えるな]

[飲み物はちょいちょい飲んでたけどご飯は大丈夫なんか?]


「そういえばダンジョンに入ってから何も食べていなかったですね?」


 今まで気にして無くて忘れていたけど、意識し始めたら何かお腹すいてきたかも。

 手っ取り早く食べられるようにおにぎりは持って来ているけど、荷物になるからそれ以外は持ってきてないんだよね。


「ふむ」


 あいつが近くにいるだろうし、いっそおかずは現地調達するのもありかな。おにぎりのお供としてはあまり向いてはいないけど、他の物だと簡単に調理はできないし。


[ふむ?]

[何か思いついた顔]

[何するつもりだ?]


「ちょうどいいのでご飯でも食べようかなぁと思いまして。おにぎりはあるのでおかずは現地調達でもしましょうか」


 あいつの肉もおいしいし、解体してしまえば調理はそこまで難しくはない。一応調理できる道具はあるし、ちょっと食べるくらいならいけるよね。ここなら火もあるし。


[へ?]

[現地調達www]

[あいつ食べるのか? そもそも食えるのか?]

[あいつが何かわからないから何とも言えないけど、現地調達ってなると調理はどうするん?]


「肉の加工と焼くだけならできるので多分大丈夫でしょう。というわけでちょっとあいつに喧嘩を売りに行きましょうか」


 この階層にいるあいつは森から少し離れた荒地の先にいてそこに近づかないと襲ってこないので、場所を移動しないとね。


[ちょっと?]

[あいつって簡単に喧嘩売っていい相手じゃないと思うんだけどな]

[喧嘩ってちょっとって感覚で売るものなんだろうか?]

[移動移動]



 森から離れて荒野を過ぎあいつがいる古代の遺跡のような跡地がある場所に来た。

 ここは石造りの建物が壊れたような残骸が多く転がっており、何かしら文明があったのかもと思わせる場所だ。

 出来てからそれほど時間の経過していないダンジョンの中に文明があるわけないので、本当にそう思える場所なだけなんだけども。

 

[何ここ?]

[どうしてダンジョンの中にこんな場所があるかは不明]

[一応、地球の記憶を読み込んで、それを再現しているんじゃないかとは言われているが、真偽は不明]

[面白そうな場所]

[調べたいがここって結構危険だよね? 見た目的に何か強いのいますって感じだし]


「意外とこの場所はモンスターの数が少ないんですよね。多分あいつがいるからでしょうけど」


 遺跡が崩れた残骸の隙間にモンスターが居てもおかしくはないんだけど、本当にこの辺りは出現数が少ないんだよね。たまに遭遇するモンスターもそこまで強いわけでもないし、多分森の中よりこの場所の方が安全まである。まあ、あいつに近寄らなければだけどね。


 崩れた遺跡の中を進み奥に進んでいく。そして最奥にある祭壇のところへ到着するとそこには大きな翼をもったモンスターが佇んでいた。そして私が近づいてきたことに気づいたそいつはこちらに向かって顔を向けるとその顔についている大きな嘴を大きく開いてけたたましい鳴き声を上げた。


[ケツァル!?!?]

[え!?]

[恐竜おるんだがえうぇ?]

[こいつここに生息していたんか!?]

[考古学者が頭抱えたやつだ]

[ケツァルコアトルス]


「さっと解体してご飯のお供にするので少々お待ちください」


 私を認識したことで戦闘態勢になったケツァルコアトルスがこちらに向かって祭壇の上から滑空してくる。こいつの攻撃方法は突進と嘴による突っつき噛みつきくらい。体が大きいので突進攻撃は脅威だけど、移動速度はそこまで早くないので、躱して攻撃するのは難しくない。


 滑空しながら突進してくるケツァルを躱し、そのまま解体ナイフを体に当てた。

 


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― 新着の感想 ―
おはようございます。 恐竜(?)のお肉か~。某グラップラー漫画だとTレックスの肉はめちゃくちゃ旨い…って描写でしたが、この世界の恐竜肉も美味しいのかな?
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