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42 宝石樹

 

 突然だったけど念願のクリスタルホワイトも手に入ったし、本来の目的を進めていこう。


「さて、じゃあ改めて依頼で採取する樹を探していきましょうか」


 今から探す宝石樹の見た目は周囲に生えている普通の樹とほとんど変わらないので、じっくり観察して目的の樹を探す必要があるんだよね。


[なんの樹?]

[気になる木]

[やっとかぁ、ちょっと寄り道しすぎじゃね]

[なお、一般的なダンジョン走破速度としては平均よりやや早め]


 お昼を過ぎてから始めた配信も今では7時間ほどが経過して、今は夜の21時を超えそろそろ22時といったところだ。

 視聴者の数は今確認したところ8000人を少し上回った数。前回の配信に比べて人が減ってしまっているけど、前回とは状況が違うからこれは仕方なし。


「これから探す樹は、少し前にコメントで流れていた翠散水樹になります。この樹はダンジョン内に生える宝石樹の一種で、翠散水樹は桜島ダンジョンでしか採取できない固有種です」


[金持ちが大好き宝石樹]

[宝石樹はほとんどが固有種よ]

[少し前にニーチューブのショートで海外の金持ちの家の柱をすべて宝石樹にしてみたってやつ見たな]

[あの悪趣味な奴かwww]

[あの柱色石みたいな色合いでめっちゃ綺麗だったな。使い過ぎて派手になっててうーんって感じだったけど]


 宝石樹はダンジョンで採取できる樹の中で特に難易度が高い物で、かつ一度に採取できる数が少ないから無茶苦茶高額になることがあるんだよね。今から採取する翠散水樹も一本で1000万を軽く超える高級木材だし。


「翠散水樹の見た目は他の樹とほぼ同じ見た目なので、見分けるには結構大変なんですよね」


 そもそも宝石樹自体、ダンジョンの中に生えている樹が魔力によって突然変異したものなので、見た目は同じ階層に生えている樹とほぼ同じである。その中から宝石樹を見つけ出すにはいくつか方法があるけど、一番簡単なのは1本1本樹の中にある魔力を調べていくこと。

 地味で時間のかかるやり方だけど、これが一番確実で楽なんだよね。このために周囲にいたオールドトレントを誘き出したんだし。


[見た目同じなん?]

[中あんなに違うのに見た目一緒はバグ]

[そう簡単には見つからんのよな。しかもうまく採取出来ねぇし。何でや]

[ほぼってことは違う部分があるってことだよな]


「本当に見た目が一緒なので樹の魔力を調べて、周囲の他の樹と別の魔力をまとっている樹を探し出して、それを採取する感じですね。ぶっちゃけ見た目は同じです」

 

 視聴者にそう説明しながら、周囲の樹に手を当ててまとっている魔力を調べていく。

 樹に宿る魔力はダンジョンの中に生えていると言ってもほんのり魔力がある程度なので、普通の樹と翠散水樹の魔力の違いはほんの少ししかない。

 この魔力を見極めるのが結構コツが必要で、割と繊細な魔力操作を要求されるんだよね。


「あ、これっぽいですね」


 1本1本しっかり魔力の確認を進めていき、調べた数が20に届く少し前に他の樹と異なる魔力をまとった樹を見つけた。


[割とあっさり見つかったな?]

[レアな樹らしいのに割とあるものなのかな]

[捜索時間10分未満じゃん]

[じっくり魔力確認している時の真剣表情なんかいい]

[運良]


「本来は100本に1本あるかどうかって感じなので、これは単純に運がよかっただけですね。自分で言うのもなんですが、うん。状態もいいのでとりあえずこれを採取することにしましょう」


 もうちょっと探すのに時間がかかると思ってたからこれはうれしい。前回は1時間近く探してようやく見つけたから割と早く見つかったのはよかったよ。さすがに探す時間が長くなると見ている人は飽きちゃうだろうし。


[なぜシャベル?]

[トレントと同じように斧で採取というか伐採していく感じだと思っていたんだけど]

[スコップでは?]

[適当に斧で採取しようとすると翠散水樹はごみになるんだよね。まあ、これはどの宝石樹にも言えることなんだけど]

[この点が宝石樹のめんどくさいところ]


 私が採取すると言って取り出したのがシャベルだったことに驚いている視聴者のコメントがチャット欄に流れていく。中にはその理由を知っている人もいるようだけど、圧倒的に疑問符を浮かべているコメントが目立つ。


「翠散水樹は普通に採取することのできない特殊な樹のなので、ちゃんと採取できるように一回根っこの一部を掘り起こす必要があるんです」


 ザクザクと翠散水樹の根を掘り起こすために土を掘っていく。地上では樹の近くの土は硬いことが多いけど、ダンジョンの土はそこまで固くないので結構掘りやすい。ただ、この場所は近くに水辺があるので土の湿り具合は高めなので結構シャベルで掘り出している土が重い。


[ざっざって何か環境音のASMR聞いている気分。周りの木の葉もいい感じの音出しているし]

[思っていたよりも掘るの早いし、結構深く掘るんだな]

[木の根は樹高と同じくらい深くなっているらしいから相当掘らないかんのでは?]


「全部は掘る必要ないのでそこまで深く掘りませんが、これは最低でも1メートルくらいは掘らないと駄目そうかな」


 翠散水樹をきれいな状態で採取するには根の中にある核、モンスターで言うと魔石に当たるものを見つけ出す必要がある。

 これは樹によって場所がまちまちなので、ものによっては結構浅いところにあって少し掘っただけで見つかることがあるんだけど、今採取しようとしているものは結構深いところにあるのか中々見つからない。


[ドローン君がんば]

[ちょっと穴が深くなってきたせいでドローン君がうまく撮影できてないな]

[ドローンはどうしても狭い穴とかに入るの不得意だからしゃーない]

[手間かかるんやなぁ]

[簡単に採取出来たら高値にはならんのよ]


「うーんどこだぁ?」


 なかなか見つからないので根の間も慎重に掘り進めて核を探していく。 根の間が暗くよく見えなくなっているので手元にライトを取り出し、その光で根の間を照らして見逃しがないか見ていく。


 適当に掘り進めて根や核を傷つけてしまうと採取した後の質に影響が出てしまう。絵面が地味だし一気に掘り進めないのが少しもどかしいけど必要なことなので、焦らないように気持ちを落ち着かせながら掘り進める。


[何か発掘しているみたいだな]

[少し根っこの中に入って行ってるから腰あたりがよく見える]

[さっきから変態いねぇ?]

[こういうところだと小柄なのは利点だよな]

[服泥だらけだけどいいんかな]

[ちょこちょこ入る声が……]


 スマホで表示しているチャットの確認ができないけど大丈夫だろうか。動きが少なすぎて見ている人達をイラつかせていないといいんだけど。


「お、あった」


 なかなか見つからない核を探しながらそんなことを考えていると、ようやく太い根の間、そこに翠散水樹の核を発見した。

 

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