36 清零鉱石
豚肉を採取してから数階、下の階層へ移動し、その道中いくつか採取しやすい植物の解説をしながらさらに桜島ダンジョンの奥に進んでいく。
[植物って正直金にならないから取らんのよね]
[モンスター倒した方が金になるからしゃーない]
[いちいち取るのが面倒]
「植物系はどうしても1つ1つ採取しないといけないし手間も多いですし、売値もそこまで高いわけじゃないから、あまり人気がないのもわかるんですよね」
普通に採取できる植物だとそこまで大きいものは少ないし、どんなに高く売れても魔石以上の値段になることは滅多にないんだよねぇ。琥珀苔みたいな特殊系なら軽く50万超えたりするけど、それは採取する技術がいるから、じゃあ自分も取ってみますね、でポンと採取できるようになるものでもない。
植物素材もポーションの材料になるからもっと人気が出てほしいんだけど、やっぱり数を取るイコール収入になりがちな植物よりも、1体倒すだけである程度の収入になるモンスターの方に流れてしまうのもわからなくはない。
中層の14。次の階層で中層も終わりのところでちょっと寄り道をする。
「このまま下に降りれば中層も最後になりますが、その前に少し採取したいものがあるので、外れ階層の方へ進みますね」
[外れルート?]
[桜島にもあるんだ]
[桜島ダンジョンは外れ結構多いよ。というか階層が少ないダンジョンほど脇層多い]
[最下層までのルートが確立されているから滅多にいかないけど、そこでしか取れないの多いからね]
[外れってことは鉱石系か]
チャット欄に流れるコメントの中に答えがあったけど、これから採取しに行くのは鉱石だ。
桜島ダンジョンは火山に隣接しているところだからなのか、森林系ダンジョンでも豊富な種類の鉱石が取れる。桜島ダンジョンに限らず火山に近いダンジョンでは鉱石が取れやすいことが多く、ダンジョンの内容はそのダンジョンがある場所の周囲の環境にある程度似ることが多い。
「そうですね。これから採取しに行くのは発熱鉱石と清零鉱石になります」
発熱鉱石はモンスターから、清零鉱石は階層内にある露出した地層から採掘できるダンジョン産の鉱石である。どちらもアイテム作成でよく使う鉱石なので、社長とトミー先輩の採取してきてほしいリストに載っているものだ。
[ははーん]
[発熱鉱石は冬によくお世話になっています。こたつポカポカ素晴らしい]
[ボルカニクスパイセン]
[クソ雑魚ボルカニクス]
[こいつも名前の割に弱いんだよなぁ。かっこいいんだけどな名前]
「鉱石ゴーレムは動きが遅い上に弱点が明確なので、倒すのが簡単ですからね。名前に関しては付けられた当初はまだ弱点はわかっていなかったと思うのでたぶん」
コメントに同意しながら14層から外れ階層、通称14.5層へ潜る。この階層は中層ではあるものの、外れと呼ばれている通りこれ以上下に潜るためのルートが存在していない行き止まりの階層だ。
こういった階層は他のダンジョンでも見つかっているのでそこまで珍しい場所ではない。
「発熱鉱石は後にして、先に清零鉱石の採掘をしてしまいますね」
[ボルカニクス先に倒した方が楽でよくない?]
[あいつら採掘始めると寄ってくるし、面倒なのは先に倒すべきかと]
[後回しにしているんだから何か理由があるんじゃろ]
[寄ってくるけどクソ遅いから問題ないんだろ]
「後回しにするのにはちゃんと理由がありますので、心配ありがとうございます。それじゃあ採掘場所へ移動します」
清零鉱石は鉱石が採掘できる地層の中でも一部、特に露出している地層断面の下の方にあることが多い。
「清零鉱石は特別な採掘方法がある鉱石ではないので、ササっと採掘していきます」
硬い地層をガンガンツルハシを使って堀り、出てきた石の中に所々水色のガラスのようなものが混じった鉱石が出てくるたびにカバンの中に入れていく。ついでに同時に出てきた小石を集めておく。
[まあ、掘るだけだからな]
[むしろどこに差を付けろと]
[逆にあったら教えてほしいわ。清零鉱石って質で買い取り額かなり変わるから]
質によって買い取り額が変わるのはモンスター素材でも同じだけど、ダンジョンの中で採掘できる鉱石って、魔石と似たような性質で採掘した瞬間から徐々に劣化が始まってしまうんだよね。
これ実は魔石より劣化速度が速い鉱石もあるから、気を付けててもいつの間にかすごく質が下がっていて、どうしてってなることは結構ある。
「清零鉱石は特に劣化が早い鉱石なので、採掘したらすぐに質を保持できるカバンにしまいましょう。もうちょっともうちょっとって掘っている間にも劣化してしまうので」
[さっきからぽいぽいカバンの中に投げ込んでいるのはそういうことね]
[ない場合は?]
[そんな早いんか]
[そもそもなんで鉱石が劣化するのか、それが分からん]
「劣化する理由はおそらく魔力保持力の影響ではないかって言われていますね」
この辺はまだわかっていないことが多い。ただ。最近はわかってきたことも多くて、鉱石の劣化速度はおそらくその鉱石の魔力保持力によって変わるようだ、ってところまではわかっている。その保持力はどうして違うのかってところはまだ解明できてないけど。
[多分それが正解なんだろうけど、確実な証拠もないっていう]
[さっきから小石集めてるけど、それも何かあるん?]
私が清零鉱石を採掘している傍ら、小石を集めていることに気づいたコメントが流れてきた。
[足元に結構あるな]
[邪魔だから集めただけでは?]
[土とか大きめの石は他の場所に移動させてるから何かあるんでしょ]
[普通の石じゃないとか?]
「これはただの石なので採取対象ではないんですが、この後使うので集めてます。うん、清零鉱石はこれ位でいいかな」
清零鉱石は言われていた数以上は集まったはずだから、こっちはもう大丈夫と。
さて、じゃあ次は視界の端まで近づいてきているボルカニクスから発熱鉱石を採取することにしようか。




