35 色艶良し素晴らし肉
周囲にいたジェネラルプライドピッグを倒し切った。
「一旦、解体して出てきた素材は鞄の中にしまってしまいますね。お肉の確認はそのあとしましょう」
そのまま放置していてもいいことはないし、素早く周囲に転がっている素材とお肉を鞄の中にしまっていく。
[うーん、蹂躙]
[あんなに居たのになぁ]
[肉が飛び散って実に肉肉しい戦闘? だった]
[この肉って売り出されるんかね]
「このお肉はあとでギルドに卸しますが、その後どういう売り方になるのかはわかりません。その辺は詳しく把握していないので」
素材はギルドが市場のような立ち位置で売り出して、それを競り落とした購入者の元に行く事が多いけど、お肉とかの食材系はどういう流れで市場に出ていくのかは分からない。多分他の素材と同じように業者が競り落として、それがスーパーとかの小売店に行くんだろうけど。今回みたいな普通よりも質の高い食品がどうなるのかはあまり知らない。
ギルドの競りから直接高級料理屋とかに行くのかな。
[撮る側がその辺把握しているのも珍しいからな]
[ギルドに売ったあとは一応セリにかけられるけど、個人で購入するのはなかなか厳しい]
「回収も終わったので、確認してみましょうか」
そう言って最初に倒したジェネラルプライドピッグとスキルで解体したものを取り出す。
短剣で倒した方はまだ解体されていない状態なので、かなり存在感がある。
[でかいなぁ。将軍豚]
[店で買う時はもうステーキとか薄切りになっているからサイズ感分からんかったけど、元はこんなにでかいんだな]
[これでいくら分なんかな]
[つっても豚肉だからそこまで値段は上がらないと予想]
「この質で大体、キロ5000円くらいですかね。一頭当たりだと、こいつで400キロ前後だと思うので、200万くらいにはなるかな。豚肉としてはかなり高額ですけど、他の高級肉と比べたらまだ安い方でしょう」
ダンジョン産の肉となれば、創作でもファンタジー肉としてよく出てくるドラゴン肉が有名だ。この手のやつはギルドの競りでキロ100万を軽く超えるくらいになる高価なお肉なんだけど、ドラゴン系の肉が高価になる理由って希少だからってだけじゃなくて、食べられるように色々処理しないといけないから、その処理のせいで値段が上がっている部分がある。
まあ、この豚はそういう処理がいらないからダンジョン産の肉でも安価なのだ。
[キロ5000円は高いのか安いのか]
[地上産の豚肉よりかなり高いな。昔はキロ数百円の時代もあったらしいし]
[普段目にする将軍豚は店売り100グラム80円とかだからめっちゃ高い]
[100グラム計算500円は高級肉なんよ]
[これあくまでギルドの買い取り額だから店売りになればさらに値段上がるし、100で2000円近くするんじゃね?]
「みんなが知っている将軍豚の肉と比較するために解体しますね。このままでは普段目にしているものと比較できないので」
目の前に横たわっている巨体をサクッと解体する。どさっと落ちていく素材を一部残した上で残りを鞄の中にしまう。そして先に回収していたスキルで解体したお肉を1塊取り出した。
「こっちが今解体したスキルなしで討伐したもので、こっちがスキルで解体したものです。今回はスキルなしでもできるだけ質が高くなるよう倒したので、あまり差はありませんけど」
[確かにどっちもそんなに変わらんけど]
[後に出した方が艶がいい気がする]
[シンプルにどっちもうまそうなんだよな。脂肪の色がめっちゃよくて絶対うまいっ奴]
[俺の知ってる将軍豚じゃない]
[いつも見てるのは普通の豚肉とそう変わらないけど、こいつは明らかに色つや良くて旨いってのが見てわかる]
[どこで買えますか?]
「皆さんの言っている通りスーパーに並んでいる将軍豚のお肉に比べて、今手に入れたお肉は肉表面のテカり具合いがかなり違いますし、肉質も風味もかなり良くなっているので実際に食べてみると驚くと思います」
[そんなこと言われるとすげぇ食いたくなるんだよ]
[ギルド売りだと、どこに行くのかわからんのがね]
[ギルドのセリって一応一般人も参加できるけど、購入単位が最低10キロとかなんだよな]
[買えるんだと思ったら、そんなに買っても食いきれねぇw]
[周りに配っても余る量で草]
ギルドは基本的に企業相手に販売しているから、そういう単位になっちゃうんだよね。素材も特殊なものを除けば1個単位では売らないのが普通だし。
「うーん。確かに、こうやって解説したなら、視聴者の方にも食べてもらいたいですね」
とはいえ、ギルドに卸す以上、その後の扱いはギルドの裁量による。ギルドという組織である以上、より高くまとめて売れる場所へものを売るのは別におかしなことではないから、多少高く売れたとしても少量しか売れないような個人へギルド側が売り出すとはあまり考えられない。
[メフィクスで売りに出せたりしない?]
[個人売りとか]
[ダンジョン産とは言え、食品は個人どころか企業でも許可なく販売できないんじゃなかったっけ]
[肉となれば許可は必須だねぇ]
[【ダンジョン管理ギルド_公式✪】 ギルドの直売所に卸せば個人への販売は可能です。ただし、売り上げはすぐ手元に入りませんが]
「ん、あ。そういえばそんなのもありましたね。じゃあいくつかは直売所に卸しましょうか」
本当に使わないから存在を忘れていたけど、ギルド直営の販売所があるんだよね。直売所って言ってるけどギルドに併設されている実店舗じゃなくてインターネット上の販売サイトである。
[直売所か]
[そういえばあったなそういうの]
[常に在庫ない直売所]
[というかギルド公式また見てんのか]
[ギルド在庫補充しろ]
[マジで買いたいから売ってくれ!]
[あそこの在庫転売ヤーに蹂躙され過ぎなんだよ]
視聴者も存在を忘れかけるくらいギルドの直売所って売り物がないんだよね。まあ、正確に言うと、在庫が補充されても即座に完売しちゃって無いように見えるだけなんだけど。
それに、ギルド公式の注意書きにもあるけど、すぐに売り上げが売主に入ってこないから、素材を取ってきて直売所で売るって人があまりいないってのもある。一応、1素材あたりの売値はギルドに卸すよりもお得なんだけど、どうしても大量に売りに出せるわけでもないから、狩りに慣れてくると使わなくなっちゃうんだよね。いちいち少量をそっちに流すくらいなら大量にギルドに卸しちゃった方が楽だし。
「今回の依頼が終わった後に直売所に卸しておきますね。それじゃあ先に進みましょうか」
[助かる]
[これ競争になるのでは?]
[数自体はあるだろうし、そこまで競争にはならないかと]
[さすがに転売ヤーでも肉にまで手を出してこないだろうし買えるよな?]
実際、購入する人はそこまでいないだろうし、現在の視聴者数800人くらい×1キロくらい卸しておけば売り切れるってことはないはず。大量に卸して売り切れなかったら面倒だし、これで大丈夫だよね?