34 お肉がおいしいモンスター
私の先ほどの発言でまだわいわいコメント欄がはしゃいでいる横で、中層へ進む。
中層に入ると、上層では荒野だった地形が所々緑が増え、草原が現れちらほら林のように木々が生えている地形に変わった。
「それじゃあ、先に進みますね。解説できそうだったらその都度解説しながら進んでいこういと思います」
[解説ってどんな感じになるん?]
[ウィ]
[素材の解説なのか撮り方の解説なのか]
[乞うご期待?]
「一応、採取する時のポイントと販売価格ですね。素材の解説は必要なものだけの予定です」
多分視聴者が一番聞きたいのは値段だと思う。次に採取の仕方と、うまく採取するときのコツ。素材の説明は興味がある人くらいしか必要としていないだろうから軽くに抑えるつもりだ。個人的にはこっちを優先したいけど、今はまだキャッチーな内容を優先した方がいいはず。
素材の解説はもう少し視聴者の反応を見てから、タイミングを探りつつしていくつもりだ。
中層に入ったとはいえまだ上層に近い階層では解説するほどのモンスターや採取物はあまりないから、しばらくは階層移動を優先する。
中層の6に到達し、解説できそうなモンスターが目の前に飛び出してきたので、流れで解体せず一度足を止める。
「ジェネラルプライドピッグですね。有名なので知っている人も多いと思いますが、一応解説します」
[将軍ぶた]
[肉で有名やね]
[安くてうまい肉って印象]
[うまいはうまいが特段いい肉って印象はない]
[庶民の味方の将軍。なお敗軍の将]
[まあ、食われてっかんな]
目の前に現れた大型の豚型モンスターの攻撃を躱す。まだ解説が終わっていないので攻撃はしない。
「この豚ジェネラルって名前についていますが、別に軍隊のように多数で攻めてくるようなモンスターではなく、基本一対一の戦いを好みます。他に同種のモンスターが現れても、先に戦っているジェネラルプライドピッグの戦いを静観し、その戦いが終わると次のジェネラルプライドピッグが戦いを挑んでくるという、かなり変わった特性を持つモンスターです」
ただし、シーカー側が複数で挑んだ場合、ジェネラルプライドピッグも複数で挑んでくるので注意しないといけなかったりする。
[どうして1体ずつ挑んでくるのか謎]
[いまだに解明できていないらしいね]
[なんかめんどくさいモンスやね]
複数と遭遇したら連戦させられる面倒臭さはあるものの、複数同時に戦う必要がないという部分はやり易いモンスターではある。
なお、モンスターとしての強さはそこまで高くない。ジェネラルって名前はただその見た目、特に顔がいかつかったことでつけられただけである。
[名前負けなんよなぁ。こいつ別に強くねぇし]
[将軍なら将軍と呼ばれるくらいの強さを見せろ]
[言ってやるなよ。この名前つけたのは人間なんやぞ]
「それで、このモンスターはみんなも知っている通り、今ではダンジョン産のお肉といえばこいつってくらい有名になってますけど、味はダンジョン産のお肉ではそれなりに美味しいくらいの認識だと思います」
こいつの肉は他のモンスターの肉よりも結構高めに買い取ってくれるので駆け出しから、中級者になりかけのシーカーが結構な数をギルドに納品している。
それでこれ、何が言いたいかといえば、このお肉を採取しているのはあまり腕のいいシーカーじゃないってこと。
活動資金を貯めるために、雑にかつ大量に討伐したジェネラルプライドピッグのお肉でもまあまあ美味しいレベルになるのだから、腕の立つシーカーなんかが討伐したときに取れるお肉はもっと質が高いのは当然だよね?
[ここで解説するってことは何かあるんか?]
[特殊な素材落とすとか……はないか。そんな話聞いたことないし]
[うまうま?]
[その言い方からしてもっと美味くなるってことぉ!?]
「まあ、そう言うことです。市場に出ているものは平均的な質なものが多いので、最高品質品となればかなりのお味になります。とりあえず、解体スキルを使わずに倒してみますね」
少し前に倒したスナイパースケイルリザードまで行くとちょっと面倒だけど、このクラスのモンスターなら倒すのは割と余裕で可能。
[まーたスキルなし]
[まあのトカゲ倒せるならできるわな]
[倒し方実演]
[なお戦闘スキルなしなので、参考になるかは微妙]
[寧ろ戦闘スキルあればもっと簡単にできるってことだろ?]
「それじゃあ行きますね。短剣を使って倒すので、グロ注意です」
回避し続けるのをやめ、突進してくるジェネラルプライドピッグに合わせて短剣で首元を切り付ける。
体長3メートル以上にもなるサイズのモンスターかつスキルなしで切り付けているので、首を完全に切り落とすことはできないけど、これでも倒すことはできるので問題はない。
[即殺]
[呆気ない終わりやな]
[まあ、こんなもんよこいつは]
[倒し方普通だけど、何が違うん?]
「これで討伐は成功ですが、質のいいお肉を手に入れるためにはここから時間との勝負になります」
そう言いながらジェネラルプライドピッグの胸元から腹にかけて一気に切り裂き、中にある臓物もどきを抜き取り、その中からさらに魔石を綺麗に外し取る。
[うわああぁぁぁァアアァ!!]
[グロ注意ってガチの注意じゃん!]
[豚の屠殺を見ているようだ]
[肉とか血ならともかく臓器はきつい]
「見た目は良くないですが、こうやってすぐに魔石を取り出さないと徐々に肉質が劣化していってしまうので、できる限り早く取り出した方がいいです。こうすれば多少雑に倒したとしても、ある程度肉の質が上がるので、買取価格もアップします。っと」
敵対していたやつを倒したことで次のジェネラルプライドピッグが襲いかかってきた。解説用のやつは倒したので、あとはスキルを使って解体してしまおう。
「肉質の確認はこいつらを排除してからですね。ちょっと待っててください」
次に襲いかかってきたやつを解体し、それから次々と襲いかかってくるジェネラルプライドピッグを倒して行った。




