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31 配信開始


 配信開始ボタンを押した後、スマホに映る映像を確認してしっかり配信出来ているかを確認する。


「大丈夫そう…かな」


 スマホの画面にしっかり自分の姿が映っていることを確認して、スマホにチャット欄を表示する。


[始まった]

[平日の昼過ぎに配信始めるとかさぁ見るけど]

[突然過ぎて最後まで見れそうにないんだが、今日のやつアーカイブ残る?]


 昨日なんの前触れもなく配信予定を立てたののに、1000人以上の人がすでに待機して待っていてくれた。移動に時間がかかってちょっと予定時間過ぎていたんだけどそれでもこれだけ待っていてくれるのはありがたい。

 前の配信に比べれば少ない人数ではあるけど、平日の午後と考えればまあまあな人数ではないだろうか。


「しっかりコメントも表示されていますね。今日の配信も前回と同じようにアーカイブに残ると思うので見れない人は後でも大丈夫ですよ」


 まあ、何かがあって残せない可能性はあるけどね。


「さて、配信もちゃんとできているようなので、皆さんこんにちは。配信の告知が直前になってしまってごめんなさい。朱鳥です」


 今更だけど、配信を始めるときの口上を何か考えておくべきだったかな。これだとシンプル過ぎるし、何かしら考えておいた方がいいよね。


[こんちゃー]

[こんこん]

[今どこにおるん?]

[配信予定に何するか何も書いてなかったけど]

[樹海ダンジョンの話、実際どうなのさ。やらせ?]

[他のニーチューバーの配信に出てきて驚いわ]


 樹海ダンジョンの話に触れてくるコメントかちらほら確認できるけど、今回は説明会ではないので極力触れない方向でいく予定だ。


「今回はですね。とある方から依頼を受けたので、それの採取に向かう予定です」


[依頼ってコレクターの?]

[そういうの受けたりするんだ?]

[インターン生やってるならそういうのしちゃいけないと思うんだけど]

[副業って大丈夫なの? メフィクスに連絡する?]


「依頼に関しては社長から許可を取っているので大丈夫です。それについでに会社で必要な素材も採取してくるように言われているので、会社の業務の一部として扱ってもらってます」


 毎回こうやって依頼とかでダンジョンに来る際には社長から取ってきてほしい素材のリストを渡されるし、今回もそれに漏れずリストを貰っている。さらに今回はトミー先輩からも見つけたら取ってきてほしい素材の注文を受けている。

 

[なるほ。会社側から見て会社に卸す素材を採取しに行く次いでに依頼を受けている形にしているのか。本当は逆なんだろうけど]

[もしかして樹海ダンジョンにいたのもそれ?]

[依頼ってそんなポンポン来るもんなのか? あまりそんなイメージないが]


「依頼が来る来ないは個人によると思います。腕の立つコレクターでも会社に所属している人にはほとんど依頼は来ませんね。私に依頼が来るのはギルドと提携して依頼を受け付けてもらっているからになります」


 普通、会社に就職すればその会社が必要な素材を集めてくるのがコレクターの役目だ。でも、メフィクスみたいにまだ規模の小さな会社で専属のコレクターをやるとどうしても暇な時間が出ちゃうんだよね。

 それを埋めるためにギルドから依頼を流してもらい始めたのが、今まで続いている形だ。ただ、メフィクスも私がインターンに来た当初よりも成長しているし、近いうちにギルドからの依頼は受けられなくなるとは思うけどね。


[就職したら専属扱いになるはずだし、依頼は来ないのが普通なんだよな]

[メフィクスじゃなくて他の会社に入れば給料も多いだろうし、他の依頼を受けなくて済むんじゃない?]

[↑お金のためにやってるわけじゃないだろ]

[一回の探索で数千万稼げるような子がわざわざ依頼を受ける必要ないしな。てか、会社に所属する必要もないけど]


 私が依頼を受けているのはほぼ趣味だからなぁ。これを仕事の一環として認めてくれている社長には本当に感謝している。

 ただちょっと変な方向に話が逸れていきそうな気がするので、さっさと話を進めていった方がよさそうだ。


「それじゃあ、依頼の物を採取できる場所まで移動しますね」


[おー?]

[いや、今どこにいるんや]

[なんかすっ飛ばしたな]


「あ、ごめんなさい。今いるのは桜島ダンジョンの上層の1になります」


 チャットに流れてくるコメントを追い過ぎて、現在の状況を説明することを忘れてしまった。さっきコメントにもあったし、先にこれを説明しないといけないやつだったな。失敗した。


[上層の1?]

[そこって入り口じゃん]

[桜島ダンジョンって鹿児島の?]

[桜島って言うとトレント系の素材かな]


「鹿児島にあるダンジョンですね。今回の依頼はモンスター素材ではないです。似たようなものですけど」


 今回の採取依頼のあった品は桜島ダンジョンにしか生えていない樹になる。この桜島ダンジョンは国内でも有数なダンジョン産木材の産地なのだ。

 一番有名なのはコメントでも出ていたトレントから手に入るトレント木材。地上ではもうほとんど手に入れることができなくなった黒檀に近い質感と見た目の木材で、高級感のある木材のため非常に人気が高い。


[トレントじゃなくてそれに近いのってなると木材系?]

[というか入り口から配信始めたってことはこれから下層に向けて潜って行くってことか?]

[ここって結構モンスター出るダンジョンだったと思うんだけど、大丈夫か?]

[今の時間から取りに行くってそもそも日中、いや今日中に戻ってこれるのかね]


「急げば間に合うと思いますけど、今回は解説も兼ねてちょっとゆっくり潜って行こうと思っているので、今日のうちに戻ってくるのは難しいと思います。なので先ほどアーカイブで見ると言ってくれた方もどこかのタイミングで配信を見ることはできると思います」


 ダンジョン内の移動は下層に潜るほど時間がかかるものなので、朝一で潜らないとその日のうちに地上に戻ってこれないことも多い。

 今日はすでに3時に迫る時間になってしまっているので、今日のうちに帰ってくることはできないだろう。


[まあ時間的にしそうよな]

[いくら速攻でモンスター倒せたとしても、移動距離があれば難しいわ]

[移動中、モンスター出てきたらどうなるのかめっちゃ気になる]

[モンスターバラバラ素材化行進]


「それでは、今から目的の場所である下層の18まで潜って行こうと思います。移動中もコメントを追うようにしますがまだ慣れていないので、うまく反応できなくても不快に思わないでいただけると助かります」


[りょ]

[まだ配信始めてそんなに経ってないからぎこちなさがあるし、うまくなくてもしょうがないね]

[コメ見るよりも周囲を気にしてくれ。事故とか見たくねぇしな]

[気にせんからいいよ]

 

 思ったよりも批判的なコメントが少なくて安心する。これでちゃんと反応位しろとか言われたらどうしようかと。

 それに意外と心配してくれているコメントもあってなんだかちょっと嬉しくなった。


「うん。それじゃあ行きましょうか」


 そう言って私は桜島ダンジョンの中を進み始めた。



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