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27 新規素材の価値

 

 女性の元へ戻ると、彼女はこちらの様子を窺うように倒木の陰から顔を出していた。そしてその片手にはスマホが握られ、そのカメラがこちらに向いているのが見えた。


 そういえば配信をしているって言ってたな。ギリギリの状況でも配信を止めていなかったみたいだし、まだ配信を続けているのかもしれない。


「大丈夫ですか?」

 

 こちらの様子を窺っていたので近づきながら状態を確認するために声をかけると、彼女はビクッと体を震わせ手に持っていたスマホを私から見えないように倒木の陰に入れた。


「ま、まあ、さっきよりはましになったかな」


 そう言って彼女は自分の脚に視線を送る。ずっとこっちの様子を窺っていたと思ってたけど、しっかり自分の状態は確認していたようだ。


 彼女の言葉を聞いて傍まで行って脚の状態を見てみたけど、確かにさっきの青黒さが少し薄くなっていた。ただ、足先から足首付近にかけてはまだ青黒いままで、多分完全に元の状態には戻らなそうな気がした。

 治るかどうかはわからないけど、これは早めに地上へ戻ったほうがよさそうだ。

 

「とりあえず周囲の安全は確保したので、地上に戻ろうと思うのですが大丈夫ですか?」


 一応周囲のモンスターは倒したけど、いつまで安全なままなのかはわからない。

 そもそもダンジョンの中にいるモンスターは倒しても一定時間で復活する。その復活スパンはダンジョンによって異なるので、今の樹海ダンジョンがどの程度のスパンでモンスターが復活するのか全くわからない。

 なので、いつまで安全を維持できるかわからないため、できるだけ早くこの場から脱出する必要がある。


「あー、ちょっとまだ立ち上がるとかは難しそう」


 女性は倒木に手をついて腕の力で立ち上がろうとしているけど、どうにも怪我をしている方の足に一切力が入らないようで、うまく立ち上がれそうにないかった。


 色の薄まり具合からして多少回復してきているようだけど脚の怪我だし、ここで無理して立ち上がれたとしても自力で歩いて帰るのは無理だよね。

 ならう-ん、そうだなぁ。


 まあ、他にやりようがないし私が担いでいくしかないか。荷物があるから少し担ぎにくいし、相手も辛いと思うけど他に運ぶ方法ないんだよね。

 私の身長がもう少しあれば他の運び方ができたと思うけど、仕方なし。体が小さい方がモンスターの攻撃をよけやすかったり、物陰に隠れやすかったりするんだけど、やっぱり大きい方がいろいろ便利なんだよね。本当に。


「そういえば、スマホずっとガサガサ音鳴ってますけど大丈夫です?」

「え、あ」


 どこかから変な音が鳴っているなとは思っていたんだけど、近づいてその音がスマホから出ていることに気づいた。どうしてそんな音が鳴っているのかはわからないけど、さっき落ちた時に何かしらの不具合でも出たのかな?


「ごめんなさい。あの、配信してて」

「あー、やっぱりまだ配信してるんですね」

「え!? 何で知って……」


 配信していることに気づいてないと思っていたのか、女性はすごく驚いた表情で私を見てきた。

 この状況で配信を続けている心境は理解できないけど、状況が状況だから配信を止めるって考えに至っていないだけかも。


「ここに来る前、ギルドに救助へ向かうことを伝えた時に情報として受け取ったので」

「そ、そうだったんだ。ごめん。こんな時でも配信続けてるし、あなたのことも勝手に映しちゃってて」


 許可を取らずに知らない相手を配信に載せるのはよくないけど、今回は特殊な状況だから何とも言えない。それに、勝手に撮られても困るようなことはないから、変なことに使われない限り別に構わないんだよね。

 

「別にそれはいいです。今はしてないですけど私も配信していますし、いきなり出てきた人を映さないようにするのは難しいでしょうから」

「そう言ってくれるとありがたいけど、いいの?」

「見られて困ることはしてないし、変なことに使わなければどうでもいいです」


 ま、本当に変なことをしてきたら、相応の対応はするけどね。


 さて、それじゃあ上に戻ろう。っと、その前にギルドへ報告しておこう。多分ギルドでも彼女の配信を見て状況は確認していると思うけど、今から戻ることを伝えておけば、上に着いた後の対応がスムーズになるだろうからね。



 ギルドに戻る連絡を入れてから女性を担いで地上へ向かう。

 最初ひょいって持ち上げた時すごく驚かれたけど、習得している補助スキルの効果だし、そもそもこれくらいできないとダンジョンの中でうまく動けないからね。


 そんなこんなで担いだ女性が不安定なこともあって深層に向かった時よりだいぶ移動速度が落ちてしまっていたが、順調に下層まで戻ってきた。


「本当にありがとう。今日は本当に人がいなくて、信号出しても誰も来ないだろうなって思ってたから」


 深層から脱出したことで安心したのか、今まで黙って運ばれていた女性がそう言葉を発した。


「そうですねぇ。私が潜る時にも10人ちょっとしかいないって言われて驚きました。前はこんなに少なくなかったと記憶していたんだけど」


 ダンジョンに潜っている人がここまで少なくなっているところに遭遇したことなかったから本当に驚いた。何があってこうなったのかは受付のお姉さんに聞いたけど、きっとあれだけが理由じゃないはず。


「最近ちょっとあってね。ここ数か月は今日と同じ感じ」

「そうなんですか。うーんまあ、しばらくの間はかなり人が増えるだろうけど」

「どうしてそう思うの」


 ダンジョンに異変があったんだからそれを調査するために人は確実に集まる。それにダンジョンの中に新しく発生したモンスターや植物は今までなかったものの可能性が高いから、当分はそれを求めてやってくる人も多いだろうね。私も近いうちに今回採取できなかったものを取りに来たいし。


「さっきあなたを殺そうとしていたモンスターは毒持ちだったじゃないですか。素材としてもその毒をドロップしたし、毒って薬になることがあるんですよ。それにここに来るまで他にも見たことのない植物やモンスターを見かけたので、メイカーに限らず研究者はそれらを目的に来ます。それにメイカーたちが来れば、その護衛のシーカーも来るでしょうし、素材を採取するためにコレクターも来るはずだから、しばらくは賑やかになるんじゃないかな」

「そうかぁ」


 まあ、それで新しく採取できるようになった素材に価値がないってなると、また今の状態に戻っちゃうかもだけど。


 でも、少なくとも毒素材は新しく手に入るようになったし、何かしらの薬には使えるかもしれない。

 これで本当にいい薬になるのなら定期的にそれを採取するコレクターが来るようになるし、ダンジョンとしての価値も上がるだろうから今回の変化でどうなるかは結構注目されると思うんだよね。

 

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