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3 くそども

 

 依頼の内容を聞くと疑問しか浮かばなかった。


 秋月さんから教えてもらった依頼内容は、最近悪質な行為を繰り返しているシーカーたちを現行犯で捕縛するというものだった。確保自体はギルド職員がするようだけど、まあそんな感じ。


 それで、その悪質な行為というのが人殺し動画。正確に言えばMKと呼ばれるモンスターを意図的に他人に擦り付けて殺す行為の一部始終を撮影して、それを違法動画サイトに売っているらしい。


 当然だけど、ダンジョン内でも人を殺害すれば捕まる。ダンジョン内でも法律は適応されるのだ。

 過去には無法地帯と化していた時もあったようだけど、今は違う。


 さらにその動画が投稿されているサイトを運営している側も、利用している側も犯罪にあたる。ただ、この手のサイトは運営側を摘発するのがかなり難しいらしいく、ゆえに利用している存在を捕まえていって動画や画像を投稿している使用者を減らすしか手立てがないと言われている。


「そこまでわかっているなら、そいつら普通に捕まえればいいんじゃないですか?」


 この依頼が出せるほどそいつらがやっていることが分かっているのなら普通に捕まえるなり、新規の依頼を受けないようにすればいいだけのはず。なぜそれをしないのか。


「証拠がないと難しいんです。どうしても証拠がない状態で捕まえても、証拠不十分で解放する形になってしまいますし、一度そうしてしまうと余計に捕まえるのが難しくなってしまいますから」

「ああ、そういう」


 ダンジョン内だと窃盗とかも証拠が見つけにくいから、なかなか捕まえるのが難しいっていう話はよく聞く。それと同じで、これほどの悪質な行為をしていても捕まえることができないということね。


「連続で同じようなことになっていれば依頼を受けないようにすることもできるのですが、一度そのような依頼を出してからは普通の依頼を出したりしていて、なかなか依頼を受け付けないという対応に出ることができないんです」

「なるほどねぇ」


 ダンジョン内で人が死ぬっていうのは割と起こり得ることだから、たまたま雇ったポーターが戦闘に巻き込まれて死んだとか、はぐれて気づいたら死んでいたといわれても、そいつらが殺したと断言できないわけだ。


 MKはその最たるもの。

 被害者はモンスターによって殺されているわけだから、そいつらが手を出したのか本当に戦闘に巻き込まれただけなのか、その証拠が出てくることはない。しかも最悪、被害者の亡骸も消滅してしまうこともあるので、証拠を探すことすら難しいという。

 これで荷物とかを盗んでいればそれを手掛かりに証拠を手に入れるということもできたかもしれないけれど、目的が動画撮影だからそんなこともできない。

 しかも毎回やっているわけでもないと。


 でもたぶんそいつらはギルドから自分たちが疑われていることは理解して、そういう風に行動しているのだろう。

 だから、依頼を停止させられないように何もしない期間を作っている。いや、気づかれないような別の方法でやっている……のはないか。そもそもそんな方法があったらいちいちギルドを通してはしていないよね。


「現行犯で捕まえたりはできないんです?」

「こちらとしても現場を押さえることができれば捕まえるのは容易なんですが、どうやら索敵系のスキルを持っているようで、後を着けて行くと何もしないんです。それに毎度犯行に及んでいないのもあってなかなか」


 しかも、犯行現場を見つけられないようにしていると。かなりの確信犯で悪質な人物たちのようだ。


 さらに聞けばそいつらが撮影した動画の投稿先も会員制で詳しく調べられないし、手に入れた動画もモザイクがかかっていて証拠として使うには不十分と。

 これ以上証拠がつかめない以上、やはり現場を押さえるしかないわけで。


「ああ、それで、私に羊役をやれということですか」

「まあ、はい。そうなります。朱鳥さんの能力であれば無事に終えることができると思います」


 本当に厄介な内容だ。普通にモンスターと対峙するくらいなら問題なくできると断言できるけど、そこに悪質なシーカーが絡むとなると正直やりたくない。

 ギルドから提案してくる以上、できる限り安全が確保できるようにしてくれるとは思うけど、結構危険な依頼だ。


 実は私、対モンスターの能力は高いのだけど、私が持っているスキルの関係で対人となるとほとんどザコ同然なのだ。

 だから、悪質なシーカーが同行するという対人戦の可能性がある依頼は受けたくないし、受けられない。


「私、対人無理ですが」


 まあ、対人もやろうと思えばできなくはないと思うのだけども、さすがにダンジョンの中ではやったことがないからなぁ。下手なことはできない。


「そのあたりはたぶん大丈夫です。あれらは証拠が残らないように直接手を出すことはしないので。今までやってきたことでもそのような証拠は出てきていませんから」

「最初にたぶんって言っている以上不安がぬぐえないんですが」

「すみません。今まで現場を押さえたことがなくて、どうしても絶対とは断言できなくて」


 まあ、そうだよね。今までそれができなくて捕まえることができなかったんだから。今の状態だと、確実にその人たちがやらかしているって断定ができないんだし。

 もしかしたら本当に偶然そういうことが続いているだけかもしれないからね。話を聞く限りありえないと思うけど。


 それからあれやこれや話し合って、保険としていろいろ道具を借りることで私はその依頼を受けることになったのだ。


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