25 間に合った?
ギルドに連絡を入れて、緊急信号を受信したことを報告した。
『本日、深層へ向かうと報告された方はいませんので、瀬良様が現在おられる階層より下の下層から信号は発信されていると思われます』
「本当ですか?」
緊急信号を受信した場合、その信号を発した場所までのおよその距離と方向が分かるようになるんだけど、今私の緊急信号発信機に示されているものは、少なくとも今の階層より10層近く離れていることを示していた。
そのことを伝えると連絡を受けたギルド職員の人は確認を取ると言って、少しの間電話から離れた。多分、今潜っている人たちの情報を詳しく確認するためだろう。
『お待たせしました。今確認したところ、今樹海ダンジョンに潜っているシーカーの中で深層へ潜る許可が出ている方は1人います。しかし、先ほど言った通り今日は深層に向かう予定とは書かれて、……はい?』
「ん?」
さっきと同じく下層からの要請だろうと言われかけたところで、職員の人が電話の向こうで別の人と話し始めた。何かギルド側であったのかもしれない。
『申し訳ありません。どうやらその方、今深層まで潜り配信を行っているらしく、深層まで潜っていることが確認できました。そして現在、未確認のモンスターに襲われ、現在安全な場所で待機しているようです。しかし、最初に遭遇した際に攻撃を受けているようで、その攻撃影響で自力での脱出が困難な状態です』
「それは本当ですか!?」
緊急信号を出すくらいだから危ない状況にあるのはわかっていたけど、脱出困難ということはかなり状況が悪いってことだよね。これは本当に急がないとまずい状況なのは間違いない。
『そのため、可能であれば救助に向かっていただければ。救助に向かっていただける場合、深層へ潜る許可を出します』
「わかりました。それではその方の救助に向かいます」
『了解です。先ほども出ましたが未確認のモンスターも現れているようです。ダンジョン内の環境が大きく変わっている可能性があるので、難しいと判断された場合は無理せず、自身の安全を最優先してください』
「はい」
ギルドからの許可を得たので通話を切り深層へ潜る準備を調える。
何が起こるかわからない状況。私が遭遇した蛾型のモンスターの他にも知らないモンスターも出現しているようだし、少しでもできることをしてから深層へ向かうべきだ。
準備を調えたところで急いで深層に向かう。
救難信号を受けてからすでに5分以上が経過している。ダンジョン内では少しの時間で状況ががらりと変わってしまうため、少しでも早く救難信号があった場所までたどり着く必要がある。
「急がないと」
ギルド職員の話が本当であれば、状況はかなり緊迫している。安全な場所にいると言ってはいたけど、そこから動けない状態みたいだし、見たことのないモンスターが湧いている状況で、そこがずっと安全であり続けるかはわからない。
配信をしていると言っていたから、その配信を確認してその人のいる場所と状況を確認することも考えたけど、それは近くまで行って見つからなかったときに確認することにしよう。
下層の25から一気に深層に入り、いくらか以前と異なる光景を横目に発信機の反応を頼りにさらに下の階層へ降りていく。
「深層の5まで来たけど、反応からしてこの階層っぽい。後はどこにいるかだけど」
安全な場所にいるということだけど、多分それはモンスターに見つからない場所に隠れているってことだろうから、そこを見つけて助け出さないといけない。
ここに来る途中で遭遇したモンスターは帰る際に邪魔にならないように排除しておいたので倒せるのは確認済みだ。
緊急信号を発信した人を襲ったモンスターがここに来るまでに遭遇しているのかはわからないけど、少なくてもこの階層で遭遇したモンスターは問題なく解体できるのは確認している。
そして救難信号が発せられている場所の近くまで来ると、見知らぬモンスターが群がっている場所を見つけた。
「あそこにモンスターが群がっているってことは、あの大きな樹の上にいるってことなのかな。方向としては間違ってなさそうだけど」
数が多いためすぐに近づくのは危険と判断して様子を窺おうとしたところで、そのモンスター群がっていた場所に生えていた大きな樹が大きく揺れ、メキメキと大きな音を立てて倒れていくのが見えた。そしてその樹の上から人と思われる影が落ちていくのも確認できた。
「まずい、急がないと!」
安全地帯にいると報告は貰っていたけど、今の状況を見たら多分それは樹の上のことだったはず。しかも倒れた樹の近くには先ほど見た時以上の数のモンスターが群がって行っているのが見えた。
どうやらその大きな樹の周囲は水辺だったらしく、次々と同じモンスターが水の中から現れ、その樹の元へ向かっていく。
「これは厄介な場所だね」
あの木の周囲が水辺になっているとしたら本当に危ない。水自体がかなり茶色く濁っていて中にいるモンスターの存在に気づきにくいし、泥に足が取られる可能性もある。
泥水に気を付けながらぬかるむ足場を慎重にかつできるだけ急いでその場に向かい、周囲に群がっていた巨大なサンショウウオ型のモンスターたちを解体する。最低限処理したところで倒れた木の陰、人影が落ちた場所へ向かう。
倒れている樹を乗り越えたところで、緊急信号を発信したと思われる女性が目をつむった状態で力なく倒れており、そこへ襲い掛かろうとしているモンスターが見えたのでそのモンスターをすぐに解体した。
そしてすぐにモンスターが襲い掛かってこないことを確認した後、動く様子のない女性へ恐る恐る声をかけた。




