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23 新種モンスター


 琥珀苔を採取してから、白磁竹を採取するために森の中を進む。


 あれから何度か白磁竹を見つけることができたんだけど、最初に見つけたものと同じように、モンスターに荒らされた後だったらしくきれいな状態の白磁竹を見つけることができていない。


「前に来たときはこんなことなかったんだけどなぁ」


 前回白磁竹を採取しに来た時はこんなに荒らされていた記憶はない。もともと壊れやすい白磁竹ではあるんだけど、これを餌にしているモンスターはいないし、そもそもダンジョンに生息しているモンスターは基本的に食事をしない。

 だから必要なければダンジョンに存在しているものをモンスターは荒らすことはないはずなんだけど。


 もしかしたら現在起きているダンジョン内の変化の一つなのかもしれない。こういう時は何が起きてもおかしくないし、そういうことをするモンスターが偶然発生したりするからね。


 それにこれまで見たことのなかった植物もいくつか見つけたし、本格的にこのダンジョンは変化しているということだろう。一応新しく見つけた物の中で採取できたの物はギルドに提出するためにいくつか確保しておいた。


「ようやく見つけた」


 しばらく歩き回ってようやく壊されていない綺麗な状態の白磁竹を見つけることができた。

 同じ場所に生えている本数は少ないけど、これで依頼を終えることができる。


「それじゃあさっそく採取を……ん!?」


 白磁竹を採取しようと道具を取り出そうとしたところで後ろから大きな羽音が聞こえたので振り返ると、今まで見たことのない大型の蛾のような虫型モンスターがこちらにむかって突進してくるところだった。


「危なっ!」


 突進を回避するためにとっさに横に飛びのく。その際、その蛾型モンスターが白磁竹を持っているのが視界の端にとらえた。


「こいつが原因か」


 こいつがどうして白磁竹を持っているのかわからないけど、とりあえずこいつがこの階層に生えている白磁竹を壊して回っているのはほぼ確定でいいだろう。

 今も私を狙ったのか白磁竹を狙ったのかわからないけど、このままだと私も白磁竹も危ないので、さっさと対処しておかないと。


 また同じようにこちらにむかって突進してきた蛾型のモンスターをスキルを使って解体する。

 スキルによって解体された蛾の素材が周囲に散らばる。


「このモンスターも見たことない奴だったな。他のダンジョンに出てくるかもしれないけど、このモンスターについても報告しておかないと。少なくともここで遭遇したことはないし、って1体だけじゃないのか」


 散らばった素材を拾ったところでさらに2体、蛾型のモンスターがこちらに向かってきているのが見えた。


「こいつらがいたから白磁竹がたくさん壊されていたわけね」


 後から来たうちの片方が最初に遭遇したやつと同じように白磁竹のかけらを持っていたので、白磁竹を壊していたのはこいつらで確定していいだろう。


 2体とも同じように攻撃をかわしつつ解体して素材を回収した。また同じようにお変わりが来る可能性を考えて、少し様子を見ていたんだけどさすがに次はなかったのか、4体目は出てくることはなかった。


「それじゃあ、白磁竹の採取を始めよう」


 周囲を気にしながら、白磁竹の採取を始める。

 白磁竹が生えている周囲の土を根に触れないように掘り返していく。白磁竹の採取は、とにかく壊れやすい白磁竹を傷つけないように採取するのが重要。

 少しでも傷がつくと、採取した後の時間経過による劣化でそこから割れてしまうことがあるので、とにかく丁寧に採取しなければならない。


 白磁竹の根の周りの土を取り除き、持ち帰ることのできるサイズにしないといけないので、地下茎をうっすら存在している節に沿って切り取る。これも節以外のところから切り取ると白磁竹全体がだめになってしまうので、慎重に作業する。


 一番いい状態の白磁竹が生えている株を慎重に土の中から取り出し、琥珀苔と同じように専用に作られた縦長のケースの中に収めた。


「これで良し。さて、じゃあ帰ろうか」


 白磁竹を入れたケースを拡張カバンの中にしまい、出しっぱなしになっている採取用の道具をポーチの中にしまって、地上に帰るための準備を始めた。



「ん?」


 帰りの道中。急いで地上に戻ろうと上の階へ移動する通路に向かっているところでスマホ、ではなく腰のポーチに付けていたギルドから配布されている緊急信号を発信する機械が震えだした。


「あー……、ギルドからの通達、間に合わなかったのか」


 この緊急信号を発信する機械は、その持ち主が自力で動けなくなったなどの緊急事態が発生した場合に、周囲にいるシーカーなどに助けを求めるために使う物で、おおよそではあるけどその緊急信号を発した人がいる方向も示してくれる。

 そしてこの機械が震えるということは近くに要救助者がいることを示しているわけだ。


「うーん、方向的にここより下の階にいる人っぽい。助けに行けなくはないけど、深層にいる人だったらちょっと難しいな。一回ギルドに連絡を入れて判断を仰ぐか」


 特殊な状況を除けば、シーカーの資格を持っていない私は深層へ潜る許可は得ていない。状況に応じて許可を得ることはあってもそれは一時的なもので、事前に許可を得ず深層に入ってしまうと最悪免許をはく奪されてしまう。

 

「助けられるなら助けたいけど、これ、間に合うかな」


 そう独り言ちながら私はギルドへ連絡するために腰のポーチからスマホを取り出した。

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