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22 目的のブツ

 

 下層の25に到着し、さっそく琥珀苔と白磁竹を探す。

 どちらも目立つ見た目をしている植物ではあるけど、広い階層に広がる鬱蒼とした森の中でほんの少ししか生えていない植物なので、探すのは結構骨が折れる。


「見つけたと思ったんだけど、これはダメだね」


 探し始めて早々白磁竹を見つけることができたけど、モンスターに荒らされてしまったのか、所々枝や幹が折れてしまっていてきれいな状態ではなかった。さすがにこれを採取して依頼主に渡すわけにはいかないので別の物を探ことにした。


 最初に白磁竹を見つけてから少し。ようやく目的の1つである琥珀苔を見つけた。


「あった。サイズも最大級。艶も良し。これなら問題なし。すぐに採取して、白磁竹を探しに…うわ、魔鉱石付きの個体だこれ」


 サイズにして私の手のひらと同じくらいの直径15センチクラス。自生しているものの中では最大級の物で艶も申し分なしの琥珀苔を見つけた。

 これなら納品しても問題ないだろうと早速採取しようとしたところで、それが魔鉱石の上に生えていることに気づいた。


 琥珀苔が生えやすい場所は、ダンジョンの中でも魔力が濃い場合が多い。今見つけたものも周囲よりも少し低くなっている窪みの中落ちていた魔鉱石の上に自生したものだった。

 こういう窪みは魔力が溜まりやすいらしく、時々変質したモンスターが現れたり、通常とは異なる植物が生えたりすることがある。少し危ない場所ではあるんだけど、レアな植物や鉱石があることが多いからコレクターにとっては、宝の宝庫だったりする。


「琥珀苔としてはかなりいいものなんだけど、どうしよう」


 普段だったら特に何も考えず喜んで採取する個体ではあるんだけど、時間がない中で採取するとなるとちょっと時間がかかるから避けたい個体でもあるんだよね。


「いや、次に見つかるのがいつになるかわからないし、これにしておこう」


 新しく琥珀苔を探す時間より、この個体を採取した方が早いと判断して魔鉱石の上に自生している琥珀苔の採取を始める。


 琥珀苔の採取方法は、生えていた場所の魔力濃度を維持しながら、土台となっている土ごと採取すること。

 これだけ言うと簡単そうに聞こえるけど、少しでも魔力濃度が下がると速攻で琥珀色の葉の色がくすんでしまい、そこからさらに魔力濃度が下がると全体が灰のようになって枯れてしまい、形すら保てなくなってしまう。

 そのため、この苔を採取するときは細心の注意を払いながら魔力濃度を維持し、専用に拵えたケースに入れなければならない。


 それで、今回見つけた個体は魔鉱石の上に自生しているわけなんだけど、これがさらに厄介なものなんだ。


 魔鉱石はダンジョン内で生成される特殊な金属などを含む石の総称なんだけど、その全てが特殊な性質を持っている。

 その多くが周囲の魔力を集めて吸収し、その魔力を帯びた状態になるって性質。加工すればこの性質を抑えることができるんだけど、未加工の状態だとずっと魔力を吸収し続けるから結構面倒な存在なんだ。


 今回の琥珀苔はそんな鉱石の上に自生しているわけで、厄介というのはこの琥珀苔、魔鉱石の魔力を餌にして成長した個体ってことになる。

 魔鉱石の表面はすごい濃い濃度の魔力をまとっているんだけど、本当にまとっているだけで、そこから少しでも離れると急激に魔力濃度が下がってしまう。そうなれば琥珀苔はすぐに枯れてしまうので、地面の上に自生している琥珀苔よりも数段魔力濃度の維持が大変なのだ。


 じゃあ、魔鉱石についた状態で採取すればいいと思うかもしれないけど、今度は魔鉱石をその場から動かしたことで、魔鉱石が今まで吸収していた魔力量が変化して、その上に自生していた琥珀苔の魔力を吸収し始めてしまうんだよね。その結果、琥珀苔は自分の魔力が足りなくなってすぐに枯れてしまうわけだ。


 魔鉱石付の状態でも採取できないわけじゃないんだけど、地上に戻るまで琥珀苔を枯らさないようにし続けるほどの準備をしていないので、今回は魔鉱石から剥がして琥珀苔を採取しなければならない。


 それと、魔鉱石に限らず岩の上に自生している琥珀苔は土台となる土が薄いことが多いので、形を維持したままきれいに採取するのが難しいのだ。まあ、これは他の苔にも言えることなんだけど。


「さて、サクッと採取して白磁竹の方も探さないとね」


 魔鉱石から琥珀苔をきれいに剥がすために腰のポーチに入れていた道具を取り出し、少しずつ剥がしていく。

 いつもより早く正確に苔を剥がしていくのが、タイムアタックをしているようでなんだか少し楽しい。


 魔力濃度に注意しながら慎重に琥珀苔を剥がし終え、専用に拵え持ってきたケースを拡張カバンから取り出し、その中にセットしてある魔石を加工して作った台座の上に琥珀苔を載せる。


 琥珀苔の状態を確認して、問題ないと判断したところでケースの蓋を閉め、内部の魔力をそのまま維持するようにケースに備え付けられている装置を起動させた。

 ここまでやれば後はケースが破損しない限り大丈夫なので緊張から解放された。


「ふぅ、これで良し。思った以上に魔力濃度が高くて結構魔力を消費しちゃったな」

 

 想定よりも魔鉱石のまとっていた魔力濃度が濃く、いつもより魔力を消費してしまったことで少し気怠さを覚えた。


「採取してた時は楽しかったけど、必要以上に疲れたのがちょっとむかつくからこの魔鉱石も回収しておくか」

 

 いつもなら一休みするところだけど急いでいるので軽く休憩した後、琥珀苔が自生していた魔鉱石を回収して、すぐに残りの白磁竹を探すために周辺の探索を開始した。

 


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