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20 依頼の素材を取りに行こう

 

 依頼の連絡を受けてから普段使っているギルドに向かい依頼の内容を聞いた後、すぐに樹海ダンジョンの入り口がある場所へ向かった。


 今回の依頼の内容は樹海ダンジョンの下層に生えている琥珀苔と白磁竹を指定の量採取してくるというもの。どちらも樹海ダンジョンにしか自生していない珍しい植物だ。


 琥珀苔は名前の通り琥珀のような色で透明感のある葉を持つ苔のことで、白磁竹は白い磁器のような艶のある表皮を持っているやや細身で背の低い竹だ。

 どちらも普通に採取したら使い物にならないどころかすぐに駄目になってしまうので、採取難度はそこそこ高いものになっている。


 どちらも珍しくて面白い植物なんだけどこの2つ、完全に観賞用の植物なんだよね。

 最初に見つかったときは研究者の人たちがこぞって欲しがった素材だったんだけど、いろいろ研究していく中で一切薬効成分が含まれていないことが分かって、他にも何かに使えないかって模索されていたんだけど、結局使い道がなかったからそれ以降、手に入れようとする人はほとんどいなくなった。


 一応白磁竹は他の竹と同じようにコップとして使うことはできるんだけど、とにかく割れやすくて完全に実用品としての耐久力ないんだ。


 そんな感じで人気のない琥珀苔と白磁竹なんだけど、実はこの樹海ダンジョンに自生している植物の大半が似たような感じなのだ。

 生息しているモンスターや採掘できる鉱石はまだましだけど、そのモンスターは他のダンジョンにもいるし鉱石だって同じ。わざわざ樹海ダンジョンに来る必要もないっていうね。


 でも、見た目は本当にきれいな植物だから手に入れたいっていう人は一定数いるんだよね。今回依頼をしてきた人もそのうちの一人だと思う。


「琥珀苔、取るのはいいんだけど、維持できる見込みあるのかなぁ」


 琥珀苔って採取も面倒なんだけど、その後の維持も大変なんだよね。

 ずっと琥珀苔の周辺を高濃度の魔力で満たし続けないと速攻で枯れちゃうくらいに繊細な苔だ。ぶっちゃけ言えば枯らさないように毎日魔力バッテリーを消費し続ける必要があるから、見た目はすごくいいんだけど無茶苦茶金食い虫なんだよね。


 私も育ててるんだけど、おっきく育つとすごく綺麗で満足感もいい代わりに、本当に維持費がすごいんだよね。まあ、私の場合は他にも同じような環境でしか育たない植物も一緒に育成しているから、これ1つ維持するよりももっとお金はかかっているけど。


 そんなことを考えながら樹海ダンジョンの入り口を管理しているギルドに到着した。

 

「お久しぶりです」

「あら、瀬良さんじゃないですか。ここに来るのは久しぶりですね」


 前々回樹海ダンジョンに来た時、お世話になったギルド職員のお姉さんが受付にいたので声をかけると、私のことを覚えていたのかそう反応が返ってきた。

 

「依頼でこちらに来られたんですよね。こちらにも連絡が来ていますよ」

「あれ、そうなんですか。それはよかった」


 ダンジョンの中に入る時、一応潜る理由を書いて申請しないといけないんだけど、先に入る理由を知ってもらっていると申請書に書き込む必要がなくなるからちょっと楽になるんだよね。


「申請書の方は必要ないので、免許証の提示をお願いします」

「はい」


 免許証をお姉さんに渡し、ギルドの中を見渡す。前に来た時もそうだったけど、本当に人の少ない場所だ。

 これが奥多摩ダンジョンのギルドだったらもっと人がいて騒がしいものなんだけど、樹海ダンジョンのギルドは職員の数も少なくてすごい静かなんだよね。


「免許証の確認が終わりました。お返ししますね」

「ありがとうございます」

「本日、このダンジョンに潜っている方は13名になります。何かお気づきの点がありましたら連絡をよろしくお願いします」

「じゅ、13人!? いつにもまして少なくないですか?」

「ここ最近はこんなものなんですよ」

「そうなんですか?」


 不人気ダンジョンとはいえ、さすがにこの人数は少なすぎるような。前回潜ったときは50人以上同時に潜っていたのに、どうしてこんなに少なくなったのか。いや、前の段階でだいぶ数は少なかったけども。


「ええ、どうやら潜ってもあまり稼げなかったり、危険度に見合わないとかそんな噂が出ているらしくて。前者は事実なんですけど後者は無謀なことをしない限りそんなことはないんですけどねぇ」


 樹海ダンジョンに出てくるモンスターは受付のお姉さんが言ったように、下手に実力以上の階層に挑まなければむしろ生息している数が少ないので、他のダンジョンに比べて危険度は低い方なんだよね。


 多分無謀な探索をした人がそういう風にネット上で言いふらしたとかそんな感じなのかな。


「まあ、人が少なくなるのは少し寂しいですがその分、私たちは楽ができるからいいんですけどね」


 そう言って軽く笑ったお姉さんは、その言葉とは裏腹に少し悲しそうな表情をしていた。


 自分が担当しているダンジョンにどんどん人が来なくなるのを実感していると、やっぱり思うところがあるんだろうな。

 このギルドができたころからここの受付を担当をしているって話していたし、できた当初の沢山のダンジョン関係者がいたころを知っていると、余計に寂しく感じてしまうのかもしれない。

 


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