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11 受けのいい配信ってどんなの?

 

 私のノートパソコンにいくつかアプリを入れている間、これからどういう配信をするかの話をすることになった。


「それでどんな配信内容にするかって話だけど、朱鳥ちゃんはどんな感じがする予定なのかな」

「えーっと」


 正直配信すると言ってもどういう感じで配信していいかわからないんだよね。そもそもここに来たのはそれの相談をするためだったし。とりあえずコレクターの良さが伝わればいいかなってくらいしか考えていない。


「コレクターの良いところを配信で伝えたいってことだけど、どんな内容を伝えるつもりなの?」

「配信するってなったのが昨日だったからあんまり考えてない。ダンジョンの配信も今まで見たことなかったし、どんな配信をすればいいかなんてわからないよ」


 ニーチューブの動画に限らず、動画投稿サイトに投稿されているものって今まで全く興味が湧かなくて自分から見たことがなかったんだよね。友達に面白い動画を紹介してもらったことはあったけど、それを見たのもその時だけだったし。

 だからどういう配信内容が受けやすいとか、興味を持ってもらえるとかわからないんだよね。


「朱鳥ちゃん、配信とか興味なかったものね」

「うん。見る時間があったらダンジョンの中に入って素材を採取していた方が楽しいし」

「ダンジョンの中に入れるようになってからずっとそうだったものね」


 ダンジョンって場所によって危険度が設定されていて、一番危険度が低い場所は高校生から潜ることができるんだよね。当然、未成年だから好き勝手に入ることはできないけど、補助できるシーカーが一緒であれば潜ることができる。

 今通っている大学はダンジョン関係のところだけど、高校もダンジョン専攻があるところだったから、授業の一環としてダンジョンに潜ったこともあった。この時は勝手に行動できなかったからあまり楽しくなかったけど。


「基本的にそういう配信でもいいと思うわよ」

「え?」


 ただダンジョンの中で採取しているだけの配信とか、見ている側は面白いって思わないんじゃないかな。


「結局、配信している人が楽しそうじゃないと配信って面白くないのよね。動画を見に来るリスナーって面白い配信が見たいってのもあるけど、配信者と一緒になって楽しみたいっていうのもあるから。受けがよさそうだからって嫌々やっていると、その時の気持ちってリスナーには伝わっちゃうのよ」

「そんなもの?」

「絶対ではないけどね。でも、私が何となく配信しているときに結構言われたから、リスナーってそういうのに結構敏感よ」


 あー、ドラマに出演している人達の中でも生き生き演技している人とか、やる気ないなって感じの演技をする人って見ててわかる時あるから、それと一緒なのかも。


「まあ、楽しそうにしていてもリスナーそっちのけでずっと採取しつづけてたら駄目だけどね。朱鳥ちゃんの場合は素材の知識も豊富だし、採取している素材の解説とかをしながら配信するのがいいんじゃないかしら。たまにスキルを使って豪快にモンスターを倒したりするのもいいでしょうね」

「それじゃあ、いつも通りにしつつ配信を見ている人たちに解説しながらやればいいってこと? 採取しながら別の人に解説するって結構難しいんだけど」


 作業をしながら配信を見ている人達に話しかけるって、友達と一緒に作業をしながら話すのとはやっぱり違うよね?


「最初は仕方ないわよ。ああいうのって慣れが必要だし、配信中に来たコメントを追いながら良さそうなものを拾うっていうのも最初からできるものじゃないからね」

「だよね」

「ま、それに朱鳥ちゃんの場合、最初の配信でそういうのは求められてないから大丈夫でしょ」

「あ、そっか」

 

 あの配信の説明とか私について知りたいって人が見に来るはずだから、配信をしながら逐一コメントを拾わなくても大丈夫かも。もたもたしてたら怒られそうだけど。


「事前に質問を募集しておけば楽なんだろうけど、今から募集を出したところで気づいてもらえるかどうか。それに下手なことをすれば荒らされるだけだろうし、いっそ最初から答える内容をいくつか決めておいて、それ以外は配信中に募集する形にした方がいいかしら」

「それがいいかも。それなら話す内容も決めやすいし」

「ならそうしましょうか」


 とりあえず最初の配信の方針が決まったところでノートパソコンのダウンロードが終わり、そこからあの動画の編集を始めることになった。




「何か映したくないものはあった?」


 あの動画の確認が終わったのに気づいたらしく社長が声をかけてきた。


「最後にちょろっとヨルさんの尻尾が映っちゃっている以外は大丈夫そうかな」


 自分の映っている動画を見るっていう行為に少しむず痒さを感じながら確認をしていたら、最後の一瞬だけヨルさんの尻尾が映ってしまっていることに気づいた。最後の最後だったし、ほんのちょっとだけしか映っていなかったから放置しても気づかれないかもしれないけど、何かあったら嫌だしね。


「なるほどね。他に消したいところがないのなら、適当にタイムテーブルを設定して、その部分にこの画像を貼って隠しちゃいましょうか」

「画像?」

 

 タイムテーブル設定は動画編集アプリを使えば簡単にできるらしいのでいいとして、画像って何?


「さっきいつ配信するか決めたでしょ。それを最後のお知らせとして配信予定の日程と時間を告知画像としてわかりやすいように貼りつけるのよ」

「それ、見てくれるの?」

「一番見られる場所だろうからここまで見る人は多いと思うわ。ニーチューブのアカウントページでも配信枠を立てる予定だけど、動画に直接移動してくる人もいるだろうから、少しでも多くの人に見つけてもらえるようにしないとね」

「なるほど。わかった」


 そうして動画を編集して全体を確認した後、動画を公開状態にした。


「これで動画の方はいいとして、配信の枠の立て方は問題ないわよね? あの配信の時と同じように設定すればいいだけだから大丈夫だと思うけど」

「えっと、大丈夫だと思うけどあの時みたいに失敗したくないし、確認だけしてもらえたら」

「ええ」


 そうして配信予定もしっかり立てて、設定のミスがないかの確認もしてノートパソコンの電源を落とした。


「ふぅ」


 ずっと集中して作業していたから精神的に疲れた。肉体的には問題ないけど、精神的なものって単純な疲労よりもずっしり来るんだよね。


「そうだ。さっき言い忘れていたんだけど」

「うん?」


 何か話し合っていないことってあったかな。


「配信の内容ね。話し合った通りで大丈夫だと思うけど、素材の解説をするときそれの値段とか出した方が受けはいいと思うわよ」

「そうなの?」

「ぶっちゃけ、素材の説明をするよりもそっちの方が見てくれるリスナーは増えるかもね」

「うーん」

「朱鳥ちゃんには理解しにくいかもしれないけど、リスナーって現金なところがあるから、自分でもできそうとか稼げそうって思えれば、参考にしようと配信を見ようとするものよ」


 そういうものなのかな。でも、コレクターが不人気の理由って他の職に比べて魅力がないからだし、他よりもお金が稼げるってわかれば少しは人気が出るかも?


「じゃあ解説ついでに出せたら言ってみようと思う」


 そんな感じで話し合いを終えて、私は配信の準備をするために帰路についた。

 

 ダンジョンの危険度

 基本的に階層の深さ、出てくるモンスターの強さなどを基準に決定されている。

 一番危険度が低いダンジョンは階層が深くても10層まで。モンスターの強さも初心者でも倒せる程度ので危険度は低い。当たり前だが、危険度が低いと言っても気を抜いたりすれば命の危険はある。 


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