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89 耐性

 

 

 鈍い音を立ててナイフが頭部横に生えている突起にぶつかる。


「くっ」


 そのまま相手がこちらを押し込むように力を込めてきたため、すぐにナイフを引っ込め、距離を作る。


[え?]

[あれ当たってない?]

[解体神さんどうした]

[こんな時に武器を間違えるとかありえんでしょ]

[もしかして当たってないのか?]


 頭部の突起に解体用のナイフを当てたにも関わらずスキルの効果が発動しなかった。


 基本的に解体神はモンスターの体の一部に解体用の道具が接触すれば効果を発揮するものだが、今当てた部分が実はモンスターの体の一部ではなく、体に付着した鉱石だったり何か別の物だったとすれば、解体神の効果は発揮されなかったのは理解できる。

 しかしナイフがあの突起物に当たった時の感触から、あそこはモンスターの体の一部だという感覚があった。


 そうなれば可能性は絞られる。

 解体神の効果がうまく発動しない条件は、巨大なモンスターや特殊な能力を持っていることだ。そして、今戦っているモンスターは特別体のサイズが大きいわけではない。

 体長7、8メートルはあるので小さいわけではないが、少し前に戦ったズムプフロッグの親玉に比べれば小さい方で、そんなサイズのモンスター相手にスキルの効果が発動しなかったということは、おそらく特殊な能力を持った存在であるということなのだ。


「耐性持ち!」


 上層、中層、下層、さらに深層の浅いところでは特殊な例を除き確認されていないが、人間が使うスキルに対して一定の耐性を持ったモンスターというのが少なからず存在している。

 多くは深層の特に深い階層にちらほら存在しているくらいなのだが、例外的に深層より上の階層でもその存在が確認されることがある。


「そうなるとイレギュラーっぽそう」


 ジュエルアップルを採取し尽くしたことで出現したギミック系のモンスターではないかと、少しだけ淡い期待をしていたけど、そのようなことはなさそうだ。


 まあ、条件を満たすことで出現するモンスターも強いことは間違いないけど、その階層のモンスターより少し強い程度の存在で、今回みたいにかけ離れた強さを持ったモンスターが出てくることはないからね。


[やっぱイレギュラーモンスターなのか]

[ただのギミック系モンスターじゃね]

[リンゴとヘビには深い関係があるように思える]

[マジでサム君だったらやべぇぞ]

[逃げろって言いたいけど、あの突進見たら言えないわ]


 イレギュラーモンスター、正式名称は別なのだけど、この存在に狙って会うことはできない。突然、なんの前触れもなく出現するモンスターなのだから、事前に予測するようなことが出来るわけもないのだ。

 

 国内でのイレギュラーモンスターの討伐例は過去に3例。

 中層に現れそこにたまたま居合わせた上位シーカーによって討伐されたのが2例。今回のように下層に現れ、多くの犠牲を出しながらどうにか討伐した1例。この3つだけだ。


 報告が上がっているだけでも、イレギュラーモンスターの強さは深層クラスでも上位と言われているし、討伐されたモンスターを調べてもその想定で間違いないと言われている。


 こいつらについてはいろいろ考察されていて、一部ではお仕置き系のモンスターなのではないかと予想がされている。

 個人的にはそうは思わないけど、出現した際の状況を見ると可能性はないとは言えない。


 いろいろ考察してみたいところだけど、今の状況でそんなことはできない。

 とにかく、このモンスターをどうにかしなければ地上に帰ることもできないのだ。


「数回で効果が出るといいんだけど」


 スキル耐性があると言っても全く効かない存在は稀だ。

 完全耐性でなければスキルの効果は少なからず相手の体に蓄積していく。そして蓄積量が相手の許容量を超えたところでスキルの効果が発揮されるのだ。

 この許容量に関してはモンスターによって変わるので、数回で効果を発揮する場合もあれば10回以上当てなければならない可能性もある。


 このモンスターが全くスキルの効かない存在である可能性は否定できないが、今それを知る手段は戦うこと以外にないので、とにかく隙をついてナイフを当て続けるしかない。


[スキルが効かないモンスターが居ることをお前に教える]

[どこの話ですかね]

[それって深層のモンスターでしょ ここで出てくるモンスターじゃない]

[ギルドに報告してきました]

[なんでさっさと逃げないんだよ]


 一度ナイフを当てたからかあのモンスターは警戒しているようにこちらをじっと睨みつけてきている。


 何もしない時間がもどかしいが、こちらから仕掛けるのはただ相手にチャンスを与えるだけなので、相手の動き出すのを待つ。

 

 そして数瞬間が開いたのち、最初に突撃してきた時と同じ体勢を取ったため、すぐさまそれを回避するために真横に飛び退いた。


 しかし、予想とは裏腹にモンスターは横を完全に通り過ぎることはなく少し前の地面に着地し、突撃の勢いを殺しながら私の背後辺りで方向を変え、こちらに向かって再度攻撃を繰り出してきた。


「え」


 完全に誘導された。

 最初にしてきた爆速突撃の印象が強かったため、同じ姿勢を取ったら同じようなことをしてくると思いこんでいた。

 まさか突撃の勢いを調節して、私の背後に移動してくるとは想定していなかった。


 攻撃を回避するため勢いよく飛び退いたため、次の行動の出だしが遅れる。

 態と攻撃を囮にして背後を取ったモンスターがその隙を逃すはずもなく、勢いよく距離を詰めその巨体に見合った大きな口を開けて迫ってくる。

 

 幸いなのはあの突撃を使ってこなかったことか。そのおかげで短いながらも態勢を最低限整え、攻撃を受ける態勢を取ることはできた。


 眼前数メートルまでモンスターの顔が迫って来た瞬間、目の前に炎が噴き出し、それを食らったモンスターが悲鳴を出すように音を立てながら後退していく。


 一瞬、何が起きたのかわからなかったが、その炎を受けてひるんだモンスターの一瞬の隙をついて距離を取る。


 目の前に突然発生した炎の出所が腰あたりだったことから、それをしたのが誰なのか見当がついた。


「ビャクさん。助かりました」


 油断していたわけではなかったけど、まさかあのタイミングでモンスターがフェイントを入れてくるとは想定していなかった。


 攻撃を受けることが出来ても、その後どうなったのか。鍔迫り合いのような状態になってしまったら、あの尻尾によって突き刺される可能性も高かったし、おそらく力で押し込まれてじり貧という状況になっていただろう。


 本当にビャクさんが行動してくれなかったらどうなっていたか。帰ったら何かいい物をあげないとね。


 しかし、本当にこのままでは負けかねない。何度も攻撃を回避していた感じ、スキルさえ発動すれば勝てそうな相手ではある。ただ、今の攻撃を見る限り、他の攻撃がないとも言えない。

 なかなか頭もいいようだし、できればやりたくはなかったけど、出し惜しみのようなことをして、死ぬのだけは避けないと。


 帰りの道がかなり億劫になるだろうけど、ここで負けたらそんなことも言えなくなる。


 そう判断して、いつも以上に体に力を込めた。

 

 一撃でモンスターを解体できない場合がある、という話は55話目でさらっとしています。

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