表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
108/110

88 想定外

 

 何が起きてもいいように解体ナイフをしっかり構える。


 ヨルさんは遠くに逃がしているけれど、腰につけてあるポーチに居るビャクさんは逃がすのが難しい。ヨルさんに運んでもらえればよかったんだけど、ヨルさん自体そこまで力があるわけでもないし、ビャクさんは掴むという事自体あまり得意じゃないみたいなんだよね。最悪ヨルさんに何かがあったときにビャクさんまで巻き込まれかねない。

 だから多分ポーチの中に居たほうが安全なはず。


 爆発した周囲に立ち込めていた煙が徐々に薄くなっていき、その中にあったものが少しだけ確認できた。


「何かあるな。あそこにはさっきまでは何もなかったはずだけど」


 爆発の影響で何かが隆起してきたと考えるのが普通かな。動きらしい動きも見えないし、心配は杞憂だった可能性もありそう。

 とはいえ、まだ何か起きる可能性があるため、警戒を怠るようなことはしない。


[映像遠いな]

[何かあるっぽい?]

[朱鳥ちゃんの声がはっきり聞こえるのはピンマイクか何か使ってたのか?]

[何事もないといいが]

[言葉使い変わってて草]


 何が出てくるか。何もないのが一番いいけど、ダンジョンの中ではそんな考えをしていると下手な被害に遭うことも多いので、最悪を予想して行動するのが一番いい。


 さらに煙が薄くなりその中にあった、いや、居た存在を確認することが出来た。


「最悪のパターンかもしれない」


 煙の中から現れたのは私が把握している限り、このダンジョンには生息していないモンスターだった。

 今まで見つかっていなかったモンスターが稀に見つかることもあるが、樹海ダンジョンの件を除けば今ではそう起きるものでもない。

 このダンジョンは最近見るかったものでもないし、最下層まで確認が終わっているところでもある。


「下手に逃げなくて正解だったかもしれない」


 完全に煙が無くなり、その中に居たモンスターはヘビ型だった。

 ヘビ型のモンスターは地上に居るヘビと同じように目があまりよくない。その代わり、周囲から発生する魔力や振動に敏感で、すぐに動いていたらその際に発生した振動を感知されて奇襲されていた可能性があった。


「さてどうしようか」


 このままあのモンスターを倒してしまえばそれで終わりではある。ただ、この出現方法で出てきたモンスターが果たして普通に倒せるのだろうか。


 ヘビ型のモンスターがきょろきょろと周囲を見渡す。おそらく今発した私の声に反応して、その出所を探っているのだろう。

 

[普通に倒せそうだな]

[モンスターだったか]

[この出現方法に嫌な予感がしているんだが]

[対して大きくないし、解体神で一撃でしょ]

[ちょっと遠くてはっきり見えないけどヘビっぽい?]


 そしてヘビ型モンスターが見まわすのを止め、すっとこちらを向いた。


「やばい」


 あの動きから完全に私が居る場所が特定されたことが分かった。後に起こることはおよそ見当が付く。

 そいつは頭を低く構え、体の向きをこちらに合わせると想定していなかった速度でこちらに向かって飛び掛かって来た。


「っ!」


 身構えていたことが功を奏し、ギリギリのところでその攻撃を躱すことが出来た。自分の横をミサイルのように高速で通り抜けていったモンスターに冷や汗が出る。


「食らったら死ぬね、あれは」


 あのモンスターが着地の際、勢いを殺しながら地面を抉っていく鈍い音がフィールドに響く。

 着弾した地面を見れば先ほどの爆発は、おそらくこいつが地面の中から飛び出して来たのが原因であることは容易に想像がついた。


[えっぎぃいいい!?]

[ちょちょtytyと]

[下層に居るモンスターも強いが、このレベルはいないだろ!?]

[はっっっっっっや何あれ]

[おいおいおいおいおいよく躱したなあれ!?俯瞰映像になっているからこっちはよく見えたけどよく躱せたな!?]


 ヘビの飛び掛かり攻撃にしては明らかにおかしい速度だったけど、何か尻尾辺りに変な模様のようなものがあったのを確認した。

 もしかしたら見た目がヘビなだけのモンスターなのかもしれない。


 今の攻撃を何度もされたらどうすることもできない。

 とはいえ何かをしなければ状況がよくならないのも事実。どうにか攻撃を躱してその際にナイフを相手に当てないといけないのだが、あの速度で突っ込んでくる相手にナイフを当てるのは至難の業だ。

 できないとは言わないけれど、失敗した時のリスクが高すぎる。


 またあの攻撃が来ても躱せるように身構えていると、煙の中から高速であのモンスターが突進してきた。

 先ほどの攻撃をするのではなく、普通に突進してくるところからして、あの攻撃は連続で使えないのかもしれない。

 さらによく見れば、尻尾のあたりから湯気のようなものが立ち上っているのが確認できた。


 あの攻撃よりも遅いとはいえ、それでもかなり早い突進を回避し、相手の様子をうかがう。


 今のタイミングでナイフを当てても良かったのだが、変に隙が大きいことが気になった。そこに違和感を覚え、嫌な予感からすぐそいつから距離を取るように飛び退く。

 すると、少し遅れて今さっきまで私が居た場所にモンスターの尻尾が突き刺さった。


「あっぶな」


 何の抵抗も無いようにざっくりと地面に刺さった尻尾を見て肝が冷える。あそこで下手にナイフを振るっていたらこの攻撃を受けたかもしれない。

 そしてようやく近い場所でモンスターの全容を確認することが出来た。


 体長はおそらく7、8メートルくらい。頭の両側に牙のような突起が生え、体の鱗も重厚感のある鈍色。色合いからして金属系の鱗の可能性が高そうだ。

 そして尻尾の近くには噴射孔のようなものが存在しており、そこから湯気のようなものが立ち上っている。先ほどの高速突進は尻尾のそれを使ってしたのかもしれない。

 似たような特徴を持つジェットスネークというモンスターが居るので、おそらく間違ってはいないだろう。


 まあこのジェットスネークは中層に出てくる体長50センチほどのモンスターで、盾でそのジェット突撃を防げば勝手に自滅してくれるようなかわいい存在なんだけどね。


 とにかくこのモンスターには明らかに普通のヘビではない特徴がこいつには備わっているらしい。


 しかしそれ以上に出現の仕方やこれまでの攻撃や不意を突くような行動を見て不自然な点が多い。


「下層のモンスターにしては強すぎる」


 ここのところ下層に出現するモンスターでここまで危険と感じた存在は居ない。普通にやればそこまで苦労することなく解体できるモンスターがほとんどだ。中には面倒なモンスターもいるが、それはあくまで面倒なだけであって危険を感じるほどの相手ではない。

 

[何かやたら強くねこのヘビ]

[よく見たら顔面めちゃくちゃ怖いやん]

[顔の突起とかギリ回避したら食らう構造なの凶悪では?]

[尻尾の特徴だけ見ればジェットスネークだけど、あいつらは別に雑魚だしなぁ]

[本当に下層のモンスターなのか? まさかだけどイレギュラー?]


 こいつの強さについて考えられる可能性が1つだけある。

 国内でも発見例が10もない稀な例であるが、その階層に見合わない強さを持ったモンスターが確認されたことがあるのだ。


 ダンジョンの中に存在しているモンスターは生きている状態で階層を跨いで移動できない。無理やり階層を移動させようとするとなぜかそのモンスターは姿を消してしまうのだ。

 しかし、例外的に階層を移動することが出来るモンスターが存在している。


 階層に見合わない強さを持ったモンスターはおおよそこれに当たり、遭遇するのは事故のようなものだ。予測してどうにかなるような存在ではないし、出会ってしまったら自力でどうにかするしかない。


 近い位置に居ることで噛みつきなどの攻撃が主になっているが、一撃一撃どの攻撃も速く躱すのに苦労する。反撃できればいいのだけど、回避に専念しないと完全に攻撃を躱し切れそうにない。

 

「本当に嫌な予感がする」


 1発でもナイフを当てることが出来ればいいんだけど、相手も先ほどの突進以降、こちらの攻撃をかなり警戒しているようでなかなか攻撃できるタイミングがつかめずにいる。


 とにかく攻撃を回避しつつ、隙をうかがうしかなさそうだ。


 そこから何度も攻撃を回避し続けてどうにかその一瞬を見つけ、ナイフをモンスターの頭部目掛けて突き出した。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
巳年は去年だw
まさか! 林檎ではなく蛇苺だった?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ