85 対の枝
[]内の誤字は意図的に残しています。
周囲に潜んでいるモンスターに襲われないよう警戒しながら岩泉樹に近づいていく。その途中、岩陰に隠れていたモンスターがこちらに襲い掛かって来たので、採取する際に邪魔されないよう周辺に潜んでいるモンスターを排除することにした。
「とりあえず採取の邪魔になりそうなモンスターは解体しておきましょうか」
岩泉樹の周囲に居たモンスターを粗方解体し、安全に採取できるようになったので、改めて岩泉樹のある場所へ移動する。
地面から伸びる石柱から複数に枝分かれしている先に、表面の一部に薄っすら白みを帯びた透明な実が2つなっているのが確認できた。
「これが岩泉樹とジュエルアップルです」
[結構小さめだな]
[普通のリンゴよりだいぶ小さいなぁ]
[なっている段階ですごく綺麗ですね。]
[実を伝って水が滴っているのも艶やかで欲しくなるね]
[テニスボールサイズかな]
[置物としてはちょうどいいサイズ感かも]
ジュエルアップルのサイズはそこまで大きくはない。アップルとついているが、あくまで見た目がそれに似ているというだけなので、実際のリンゴよりもサイズは小さめだ。
「それじゃあ、さっそくジュエルアップルを採取しますね」
ある程度岩泉樹を映して、チャット欄のコメントがある程度落ち着いたのを見計らって採取に移る。
採取用の手袋を装着してジュエルアップルを優しく掴み、岩泉樹の枝とジュエルアップルが繋がっていた部分を折り採取する。それと同時に採取したジュエルアップルと繋がっていた枝がぼろぼろと崩れていった。
「これが採取したジュエルアップルです」
もぎ立てのまだ水滴が残っているジュエルアップルを視聴者に見えるようカメラの前へ持っていく。
[普通に取ったけど大丈夫なのか?]
[いいんだそれで]
[色合いが少し地味?]
[取り方雑じゃね]
[何か採取するのに特別な方法があると思ったけど]
[枝の部分が崩れていったのが気になる。そういうものなん?]
私が適当に採取したことで少し混乱しているコメントがちらほら流れていく。ただ、今まで私の配信を見てきたと思われる視聴者たちのコメントは結構冷静な感じだ。
「今結構適当に採取しましたが、ジュエルアップルは雑にもぎ取ってもこのように採取することは可能です」
さすがに普段はこの採取方法で取ったりはしないし、この取り方をするとジュエルアップルは質が悪くなるのでよく知らない人以外この採取方法を使う人は居ない。
[比較用ですね。わかります]
[魔石採取の時と同じか]
[これでどのくらいの価値なん]
「正直、この方法で採取したジュエルアップルは見た目が少し悪くなりますし、香りも弱くなってしまうためあまり良い値段は付きません。今回はあくまで比較するためにこの方法で採取しましたが、この方法で採取することはお勧めしません」
今採取したジュエルアップルに至っては、あまり人気のない色合いで元の買い取り価格も低いし、さらに質が悪いからギルド側も買い取りを渋る可能性もあるんだよね。
[そうなのか]
[今までの流れで適当に採取できる物を紹介するわけないわな]
[これは駄目な採取方法なのね]
一度、この採取方法でどの程度質が下がったのかを見せるため、今採取したものをまだなっているジュエルアップルの横に持っていく。
「元の状態と比較するとこれくらい質が悪くなるんですよね」
まだ採取していないジュエルアップルは皮の部分と中身の境目が分からない状態に対し、採取した物の中身は少し靄がかかっているような状態になっているのが分かる。
[結構違うな]
[見た目が悪くなるってどの辺がって思ったけど、中身が変わるのか]
[俺は完全に透明より中身が分かる方が好きだけど]
[見た目でわかるのね]
「比較もできたと思いますので、先に採取した物は一旦鞄の中にしまいますね」
またすぐに取り出すことになるので、すぐに取り出しやすい腰に付けている鞄にジュエルアップルをしまう。
「それじゃあ、次はちゃんとした方法で採取していきましょう。
まずは今比較に使ったジュエルアップルに少しだけ魔力を流します。これはある物を探るためなので、必要以上に魔力を流すとジュエルアップルが破裂してしまったり、採取する前から質が下がったりしてしまうので注意してください」
[でぇたぁ!]
[キレイに採取するには魔力操作必須かぁ]
[このチャンネルおなじみ?の繊細系魔力操作]
[採取系って結構技術いるんだよな]
[魔力浸かったら何が分かるん?]
「先ほど採取した際に質問していた方も居ましたが、ジュエルアップルのなっている枝って採取する際に重要な存在なんです」
最初にジュエルアップルを岩泉樹の枝からもいだ際、その実がついていた枝が崩れていったが、それがこれから見せる採取方法に関わってくる。
「実はジュエルアップルが付いている枝には対になっている枝が存在しているんです。それでジュエルアップルに魔力を流し込むと、その魔力が枝を伝って対になっている枝を見つけることが出来ます」
[はぁん。なるほど(。´・ω・)?]
[で]
[ああ、その枝に何かするのね]
[折るとか?]
[対になっている枝から魔力を流すとかかな]
魔力を流したことで対になっている枝を調べることが出来たので、その枝近くまで移動する。
岩泉樹自体そこまで大きなものではないにしても枝の長さは50センチ近くあるので、反対側にある枝を触るには少し移動する必要がある。
「この枝がジュエルアップルのなっている枝と対になっているみたいですね。コメントで答えを書いていた方も居ましたが、この対になっている枝を折ることでジュエルアップル側の枝が崩れていきます」
説明しながらその枝を枝分かれしている近くで一気に折る。
折った枝はそのまま形を維持することもなく崩れていき、それと同じようにジュエルアップルが付いている枝も崩れていく。
「っと、このように枝が崩れていくので、その中で落ちるジュエルアップルを採取する形になります」
ついていた枝が崩れそのまま重力に従い地面に向かって落ちて行こうとしているジュエルアップルを、岩泉樹の枝の下に身を潜り込ませながら強く掴まないように優しくキャッチする。
[はぇー]
[ナイスキャッチ]
[崩れ方ちょっと怖いな]
[崩壊していく感じだな]
[最初の感じからして実がついている方を折っても対側は崩れないんだな]
「これが今採取した物です。さっき採取した物に比べて透明度がはっきり違うのが分かると思います。香りもそちらに伝えることは難しいですが明らかに良くなっていますよ」
比較するために先ほどしまった質の悪いジュエルアップルを取り出す。
今回採取した物は岩泉樹についていた時の状態に極めて近い状態を保っているため、実の中も霞むことなくしっかり透明のままだ。
[確かに違うね]
[採取のひと手間は無茶苦茶大事ってことだな]
[匂いはこっちに伝わってこんからなぁ]
[新しい方は朱鳥ちゃんの顔が透過して見えるね]
[結構歪んでいるけどな]
比較も済んだので、ジュエルアップルをカバンの中にしまう。
[もうちょっと見せて―]
[終わりかな]
[後は同じようにいくつか採取する感じか]
[やっぱ魔力操作の訓練しないとなぁ]
[ワイは作業戻るのぅ(*´Д`)]
ジュエルアップルをきれいに採取したことで、そろそろ配信も終わりと判断して退席コメントを書き込んでいる視聴者もちらほら確認できたが、配信はまだ終わる予定はない。
「さてと。では、ここからが本命の採取方法になります」
[ん?]
[本命?]
[今のがちゃんとした採取方法なんだよな]
[他にも採取方法がある感じ?]
まあ、本命というか変わった採取方法って言うのが正しいかもしれないけどね。




