84 鉱山ダンジョンの果実
フィア鉱石を採掘し終え時間の確認をする。
「配信を始めて1時間……も経っていないですね」
これで陽彩の刀を作るための素材は揃ったのだけど、何事もなく順調に採掘が出来たため予定よりも早く終わってしまった。目的は達成したのでこのまま配信を終えて地上に戻ってもいいんだけど、このままだと大していい情報がないまま終わることになってしまう。
最初の配信でお得情報を発信すると言った手前、この状態で終わらせるのは何か申し訳なさがある。
[ダンジョンの配信で時間1時間は短めかな]
[最初に言ってたの手に入れたから終わり?]
[モンスターも出てこんからさっくり終わったなぁ]
[今までで最短配信やな]
[他のところ行くのかな]
どうしようか。
配信を開始したのがお昼過ぎ。平日の昼に見に来てくれる人ってそんなに多くはないんだよね。どうしても日中は仕事をしている人が多いから、当然と言えばそうなんだけども。
早い時間から見に来てくれたのにここで今日はここまでって、あっさり終わらせるのはなぁ。
「何か他の素材も採取しに行った方がいいのかな。正直、今回採取した鉱石って微妙な感じの物だったし」
[そんなことはないと思うけど]
[こういう日があってもいいんじゃない?]
[これで終わりだとちょっと物足りない感はあるなぁ]
[今までが長かっただけで、1時間は割と普通じゃね]
[無理に引き延ばす必要もないと思うけどな]
[口調ちょっと砕けてきてますよ]
このダンジョンで良さそうなのって何かあったかな。
鉱山系のダンジョンって採掘できる金属に差はあっても、それ以外はどこも似たような感じだから、このダンジョンじゃないと手に入らない物ってほぼないんだよね。まあ、配信する関係で態と特殊な鉱石が少ないあまり人気のないダンジョンを選んだからなんだけどさ。
「うーん、うん?」
いや待てよ? 1ついいのがあるな。
[お?何か思いついた?]
[別に無理しなくてもいいんよ]
[教えてくれるならうれしいけど無理やり引き出さんでもええやで]
[(;´Д`)ムリスンナ]
うん。あれなら紹介しても問題よね。鉱石ではないけど鉱山系ダンジョン特有の物だし、採取方法も少し変わっていて見た目もいいからちょうどいいはず。
「1つ良さそうな物を思い出したので、これからそれの採取に向かおうと思います」
今思い出したものは今いる階層よりも下層で採取できる物なので、その階層まで移動することにしよう。
フィア鉱石を採掘した階層から4つ層を降り目的の階層に到着した。
この階層はこれまでいた階層とは少し異なり、広めの鍾乳洞のような空間になっていて、空間内のいろいろな場所から水がしみ出していて湿度が高めの層になっている。
今から採取する予定の物も、この階層の特徴に関係するものとなっている。
この階層までの移動中、チャット欄で何を採取しに行くかの予想が行われていたので、答え合わせをしておく。
「コメントの予想の中にありましたが、今から採取しに行くものはジュエルアップルです。ここ以外でも鉱山系ダンジョンなら採取できるところがあるので、採取方法の参考になればと思いまして」
[予想が当たった\( ‘ω’)/ワーイ]
[ジュエルアップルって食える宝石とかいう奴だっけ?]
[宝石リンゴ了解]
[こいつもあまり高いイメージないけど]
[ジュエルアップルはそこまで安くないぞ]
ジュエルアップルは鉱山系ダンジョンの下層以下に存在する、鍾乳洞系の湧き水フィールドに発生する岩泉樹と呼ばれている物になる実だ。
この岩泉樹は所謂鍾乳石と似たようなもので、ダンジョンの地中から湧き出る水に含まれる成分などにより形成されており、高さが1メートルを超えたあたりで普通の木のように複数方向に枝分かれし、その先でジュエルアップルと言われる実が付く。
「先ほどチャットのコメントにも書かれていましたが、ジュエルアップルは宝石のような見た目ながら食べることが出来ます」
目線よりも高い岩が転がりいくつも鍾乳石が存在している中、目的の岩泉樹を探しながらジュエルアップルの解説をしていく。
[そもそもなぜ岩の木になった実が食えるのか]
[それな]
[見た目は食えそうにないんだよな]
[そもそも実がつくこと自体意味不]
ガラスとか宝石を果実っぽく加工したような見た目をしているから、食べられそうにないというのはそうなんだよね。
私だってあれが食べることが出来るって知らなかったら絶対に食べようとは思わないし、最初にジュエルアップルを口にした人はどうして食べようと思ったのかよくわからないよね。
「なんで食べることが出来るのか、それは私にはわかりません。まあ、ダンジョンで採取される物は不思議なものが多いので、そういう物だからとしか言えない…ですね」
[認識が雑いwww]
[そういうものって確かにそうとしか言えんけども]
[マジで謎食物で草]
[ダンジョンってマジで意味不明な物あったりするよな]
実際そういう物だからそうとしか言えないんだよね。
今までジュエルアップルの実が再生していく過程を観察し研究している人たちもいるみたいだけど、結局どうして実のようなものが付くのか、どうして食べることが出来るのかはよくわからないまま今に至っている。
[実際味ってどんな感じなん?]
[うまいのかね]
[おいしくなさそう]
[エグ味が酷そう]
「味は、まあ正直おいしくはないです。不味いってわけではないんですが、ほとんど味がないのでちょっとリンゴのようないい香りがする水っぽい果実といった感じですね。そもそもあくまで食べられるというだけで、ジュエルアップルを食物として見ている人はほぼいないと思います」
名前の由来にもなった皮に当たる宝石っぽい部分は、パリパリというかバリバリした触感は面白いんだけど、全体的に無味だから食べ物として取引されることはほとんどない。
[可食(食べられるというだけ)]
[おいしくないのかー]
[まあ、おいしかったらもう少し取引されているよな]
[まずくないなら少し食ってみたい気もする]
「ジュエルアップルはコアなファンが付いているくらいには人気のある物なので、そこそこな金額で取引されています」
ジュエルアップルがそれなりに取引されている理由として、おしゃれな置物として使えるくらい見た目が良く、しっかり手入れをしていれば劣化もせず、しかも永続的に香りが続くからだ。
さらにジュエルアップルは採取したダンジョンによって色合いが異なるため、その異なる色合いのジュエルアップルをコレクションしている人も存在している。
[買い取り額が高いのは大体そういう人たちがいること多いよね]
[いくらくらい何?]
[そこそこって朱鳥ちゃんの感覚だから、実際はかなり高価なんじゃ……]
[おいくら万円?]
「値段はそうですねっと、お。ありましたね。あれが岩泉樹です」
視聴者の質問に答えようとしたところで、少し遠目に目的の岩泉樹を見つけた。そしてさらにその岩泉樹の枝先に実がなっているのが確認できた。




