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8 相談しに行こう

本日の更新から1日1話 朝の更新になります。

よろしくお願いします。

 

 会社で契約している駐車場に車を止め、メフィクスと看板がついた建物の中に入る。


 看板に書かれていたメフィクスとは私が所属している会社の社名であり、私の叔母が作った会社である。

 この会社は設立してからそれほど経過していない比較的新しい会社の割に3階建て且つ、地下室在りというかなりいい建物を一棟所有している。これは叔母が株で一山当てたことで手に入れたものだ。


 社員の数はまだ少ないけれど、少数精鋭みたいな感じで割と各分野で活躍が見込まれていたり、すでに結果を出している人たちが集まっている。


「あれ、トミー先輩。久しぶりですね」


 オフィスの中に入ると熊のような体格の男性がいた。


 この人はこの会社の先輩ではなく大学の先輩にあたる人で、同じようにこの会社にインターンの学生として所属している存在だ。本名は豊橋(とよはし) (みつる)でトミーはあくまであだ名だ。

 このあだ名をつけたのは叔母である社長だけど、本人も結構気に入っているらしく本名よりもこっちで呼んでくれと言われている。

 あと一応、この会社に来たのは私の方が先ではある。


「瀬良じゃねか。今日はここに来る日だったんか」

「そういうわけじゃなかったんですけど、今日もここにいるんですね。家帰ってます? 大学でも見かけませんけど」


 私とこの先輩が通っている大学はダンジョン系を専門とする学部があるところで、同じくその学部に所属している。

 この学部は世界的にもまだできてそれほど時間が経っていないため、学問特に座学は少なめでフィールドワークが多い。


 だから、大学の中で見かけなくてもおかしくはないんだけど、それにしても長期間見かけなかったからどうしたんだろうなって気になっていたんだよね。この先輩に関しては体調不良で休んでいるわけでもないだろうし。


「大学はもう単位取り終わっているから行かなくていいんだな」

「そうでしたか」


 この先輩、所持しているスキルの影響で普通の男の人と比べてとても大きな体をしている。身長は2メートルを軽く超えているし、足も腕もかなり太い。

 ぶっちゃけ言っちゃえば、手先は不器用そうだし、なんか動きが遅そうな見た目だ。

 でも実際はそんなことはなく、大学の中でも一二を争うほど手先が器用であり、アイテム作成においてはダンジョン関係者の中でも期待の新星といった感じだ。採集しか能のない私とは真逆ですごく有名な人なのだ。


 就職先もいろんなところからオファーが来ていたと聞いていたけど、インターンで来たこの会社の居心地がよかったのか、このままここに就職することに決まっている。


「今日ここに来る予定でなかったんなら、どしてここに来ただ?」

「……先輩はネットの動画とか見ます?」

「いんや?」


 どうやらトミー先輩は私がやらかしたあの配信やその切り抜きは見ていないようだ。

 まあ、いくつかの切り抜き動画を見たけどPVは数万くらいだったし、すごく有名な動画ってわけじゃないから、見ていない人がいてもおかしくはないよね。


「ならいいんですけど」

「…何かやらかしたんか?」

「いやまぁ、なんといいますか」


 配信の設定をミスったことは否定できないけど、やらかしたと言われるのは何となく嫌だ。はたから見たらやらかしたと言われても否定できないけど。


「ま、今回もほどほどにな」

「いえ、今回はそういうのじゃなくてですね」


 昔からちょこちょこ騒動を起こしていたから似たようなことをしたのだと思われているっぽい。間違っていないけど。

 

「よくわかんねが、そんで今日、社長に会いに来たてことだろ?」

「いや、ま……まあ、そうなんですけど」


 私がいろいろやる度に社長に相談しているから、先輩にも察せられているのがなんか哀しい。


「社長ならさっき社長室さ入っていったぞ」

「あ、ありがとうございます」


 先輩はもう興味が失せたのか、そう言うと私の返事を聞くよりも先に地下にある研究室へ続く階段へ吸い込まれていった。


 トミー先輩の慣れた対応に涙が出そうになる。まあ、精神的なもので実際は出そうにもないのだけど。


 今回みたいに気にかけてくれる優しい先輩ではあるけど、他者への興味が薄い人なのである。

 いつも次に何を作ろうか、今作っているものをより良くするにはどうしたらいいかを考えているような人なのだ。多分今も私と話をしている間も今作ろうと研究しているアイテムのことを考えていたのだろう。

 そういえば聞き忘れていたけど、今日で何徹目だったのだろうか。


 先輩が進んでいった階段を横目にそんなことを考えながら、私はオフィスの奥にある社長室へ向かった。

 


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