表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/76

1 モンスターよりも危険な存在

新作ではありますが、すでにカクヨムの方で公開している作品になります。

 

 目の前に迫り来るモンスター。


 本来なら私の前にいるはずの男たちはゲラゲラ笑いながら私のはるか後方でことの顛末を嬉々として眺めている。


 この状況は別に偶然起きたことではない。これは意図して作られた状況だった。




 ダンジョンの中で特に警戒しなければならないのは何か。

 普通であればモンスターと答えるだろう。中にはダンジョントラップと答える人もいるかもしれない。

 だが、ダンジョンに長く潜り続けている探究者ならもう1つの返答が返ってくるだろう。


 その答えは、人だ。


 ダンジョンに生息しているモンスターは、ダンジョンに入ってきた者を排除するために襲いかかってくるのは当たり前のことだ。気をつけて当たり前、これはトラップにも言えること。

 

 ダンジョンとはそういうものだ。危険なのが当たり前。

 そもそも、モンスターであれば直情的に人に襲い掛かってくるものがほとんどだ。ある意味一番わかりやすい。トラップもしっかり知識があれば見極められるものが多い。


 要するにモンスターやトラップは予測できる危険なのだ。


 モンスターと違って何をしてくるかわからないのが人間だ。

 意図せず自身の攻撃で周囲を巻き込んでしまう、想定外のことに遭遇してパニックになって、周囲に被害を広げてしまう人もいる。

 こういったものは想定するのが難しい問題だ。


 このような理由もあり、ダンジョンの中で一番危険なのは人間といわれているのだ。


 しかし、すでに挙げた理由以上に人を警戒しなければならないという最たる理由は別にある。



「いい感じに死んでくれよ~!」

「必死に耐えてくれるだけで動画は高く売れるからさ! 特に君みたいな女の子だとさ!」

「マジでラッキーだったわ。こんな子が来るなんて思ってなかったからさぁ。一攫千金っていう感じでダンジョンにしがみついているおっさんが無様に死ぬのも悪くないけど、やっぱ女の子の方が需要あるからさぁ」

「態度に出ないようにしていたんだけど、よかったよ気付かれないで! 逃げられたらマジでショック受けそうだったんだよな!」

「恨まないでくれよー。こうなったのは君がポーターの仕事をしているのが悪いんだからさ!」


 一緒にダンジョンの中に潜ってきた男3人はモンスターが迫り来る中、何もしない私に向かってそう嘲るように言葉を投げかけながらゲラゲラ笑っている。


 こういう輩に遭遇してしまうのが想定しうる中で最悪のパターンだ。


 ダンジョン内で意図して人を害することは地上と同じように禁止されているのだ。これはダンジョンが発生してからずっと変わらない。


 しかし、今、私にモンスターをけしかけた男たちのように、意図して同じくダンジョンに潜る者を害する人間が少なからず存在している。


 ダンジョンができた当初はダンジョンの中は法治圏外だと宣って堂々と犯罪行為に走る者たちもいたが、そのような者たちの多くは捕まり法の下で裁かれている。

 だが、残念ながらその犯罪すべてが法によって裁かれたわけではないのだ。


 ただでさえ表の世界と隔絶したダンジョン内部。その中で行われた犯罪が明るみに出ることはほぼない。証拠も残り難く現場を押さえることも難しい。特にダンジョンの下層より下、そこまで潜れる者が少ない場所では目撃者など得ることはかなり難しい。

 そんな場所で行われた犯罪はほぼ迷宮入りである。立証者が嘘を言ってしまえばそれに否と断言するための証拠は得ることは不可能だ。


 それで、今の状況もそれにあたるわけで。


 周囲にあの男たちと私以外他の人はいない状況。あの男たちは意図してこの状況を作り出しているのだから、自分たちがこのような状況を作り出し、私にモンスターを差し向けたと言うわけもない。自ら犯罪をしたというのであればこのようなことをするわけもないのだから。


「マジでこれ配信出来たら相当儲かるはずなんだよなぁ。ホントに法律はクソだな」

「ホントそれ」

「いっそ捨てアカで配信するのもありなんじゃねぇか? 今回は間に合わねぇけど、表の視聴者の反応見るの面白そうじゃん」


 クソはお前らの頭だ、と嘆息しながら目の前に迫るモンスターを見据える。


「はぁ、めんどくさ」


 元からこうなることがわかっていたとはいえ、男たちの態度が本当に悪すぎてため息ついでに本音が漏れてしまった。

 あぶないあぶない。さすがに小声だったから騒いでいる男たちには聞こえていないだろうけど、まだ私が危機感を持っていないことに気づかれるのはよくない。


 今いる階層は深層と呼ばれる、ダンジョンに潜る者たちの中でも上位の者たちが探索するような場所だ。

 救難信号を出したところですぐに誰かが駆けつけて来てくれるような場所ではないし、迫ってきているモンスターたちは生半可なシーカーでは手こずるどころかあっさり返り討ちにあってしまうような相手だ。

 そもそも迫ってきているモンスターの数が10を超えている段階で絶望レベルである。


 まあ、側から見れば最悪の状況だろうけど、こうなることは想定の範囲内なので、問題はないんだけどさ。もとからこうなる可能性が高いのはギルドで依頼を受けた時からわかっていたし。しっかり対策はしている。


 ちらりと横を見る。


 そこには何も存在していない。ダンジョンの空間の端まで何も見渡すことができるほど障害物が存在していないが、しかし、よく見ると何かきらりと光りを反射するものが微かに見て取れた。

 


本日あと2話公開予定です。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ