表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/50

ep46.エヴァの好きな場所

「おはようございます、クラウス様」

「おはよう、エヴァ。昨日はよく眠れたかい?」

「はい。とてもふかふかで心地良い寝心地でした!」


 それはもう、皇宮のベッドに負けないくらいふかふかで飲み込まれるかと思うほどであった。


 私もクラウス様も、今日は他の貴族と会うつもりはないのでラフな格好で食堂へ向かった。


 朝はスープに野菜、パンはバケットにベーコン、トマトを乗せて、上からとけたチーズが乗っているという美味しそうな食事。


 男性と女性では食事の好みや量は変わってくるはずで、私もまた平均よりも少ない量なのに、クラウス様も私の食べる量と同じ分しか食べない。


「クラウス様は、もっとお食べにならなくてもよろしいのですか?」

「うーん、エヴァと食べない食事は味気ないからね。君と食べるから全部美味しく感じるんだよ。それに、今日は君が気に入る場所に連れて行くって言っただろう?」


 またクラウス様はそんなことを…。


 私と食べるから美味しいのではない。ここの食事は元々最高に美味しいのだ。


 クラウス様には今後是非ともその事実を分かってもらう必要がある。


 計画を練りつつ、また何気ない会話をして食事をする。食べ終わると、クラウス様は「さっそく行こうか」と、私を案内してくれた。


「ここは皇宮よりも広くないから、多分すぐに場所を覚えられるよ。ここを出た後も、言ってくれたら連れて行くからいつでも言ってね」


 クラウス様は見せるのが余程楽しみなのか、私がまた行きたいと言う自信があるらしい。


 私は私の好きなことがあまりよく分かっていないのでクラウス様の言うもう一度行きたいと言うのかはよく分からない。だけど私よりも私のことを理解しているクラウス様なら、あり得るかもしれない。


「ここだよ。どうぞ、好きなだけ見て行って」


 クラウス様が扉を開けたその先に真っ先に目に入ったのは、本、本、本だった。


 まさに、大図書館、そう呼べるほどの本の貯蔵量。


 私は目を輝かせた。


 確かに、これは一度来ただけで全てを読み切るにはあまりにも足りない。


「クラウス様、この場所は…!?」

「ふふ、その様子だと気に入ってくれたみたいだね」


 それはもう、早く読みたくてうずうずしているくらいには。


 本を読むスペースもしっかり確保されていて、窓際にテーブルと椅子が備わっている。流石としか言いようがない。


「とても好きです。この場所。本特有の匂いがして、落ち着く場所ですね」


 本は発行されて年数が経つほど本特有の匂いがする。これだけ本の香りがするということはそれだけ古い本も多くあるということ。


 ここにいるのが1週間だけと言うのが勿体無いほどだ。今の私の思いを見越して、クラウス様は先行きたい時は連れて行くと言ってくれたのだろう。


 一体私のことをどこまで分かっているのだろうか。


「だね。私もこの場所は好きだな。エヴァはきっと気を遣って言わないだろうが、1人の時間も必要なことは知ってるよ。だから今日、ここに連れてきたんだ。」

「えっ?」


 私が少しだけ戸惑った表情になった。


 1人の時間、なんて考えたこともなかった。


 自分の目の前のことに集中していたせいで、周りに人がいるいないはあまり気にしていなかった。だからこそ、クラウス様に言われて初めて気にした。


「1人…とは言えないけど、本を読むときはお互い集中するから自分の時間を持てるだろう?ごめんね、完全に1人にするのは私が不安すぎるから、出来ない…」


 私情を持ち込んで申し訳ないと言いたげなその瞳は、私の心を揺さぶった。もちろん良い方に


「クラウス様。私の立場上、1人になることが難しいのは承知の上です。それと、その、クラウス様が隣にいる時、私は酷く安心できます」


 これは、私の正直な気持ちだ。クラウス様が嘘をつかず、私に正直な言葉を使ってくれるのなら、私もこれは言うべきだと、そう感じた。


 自分の気持ちを相手に隠してばかりのくせに分かってもらいたいというのは、傲慢だから。


 言わないと伝わらないこともある。それは常日頃、私が実感している。


 私だって、クラウス様が言葉にして私を好きだと言ってくれるから、クラウス様の気持ちを知ることが出来る。ならば、クラウス様に伝えなければいけないだろう。


「だから、気を遣って1人の時間を持たせようとしてくださらなくても、大丈夫ですよ。私にはクラウス様がいますから」

「…!ふふ、そっか。そうなんだね。…ああ、なんだか嬉しいな。エヴァの思いを知ることが出来て。言ってくれてありがとう、エヴァ」


 ああ、なんだ。


 こんなに幸せそうにしてくださるなら、これからはもっと伝えよう。


 クラウス様が私は笑顔でいる方が良いと言ってくれたように、私もクラウス様には笑っていて欲しい。そんなクラウス様が築く国は、今よりもっと、栄えるだろう。


「こちらこそ、いつも気持ちをお伝えしてくださって、本当にありがとうございます」


 貴族社会で自分の気持ちを隠して相手と接することは基本中の基本であり、生きていく上でも必要なスキルになる。しかし今回のような、自分の気持ちを見せることが大切な人間関係というのはクラウス様とたくさん関わるようになってから初めて知ることが出来た。


 それから私とクラウス様は隣の席に座って、満足いくまで本を読み漁った。


 私もクラウス様も、集中力は化け物並みなのだ。






 









最後まで読んで頂きありがとうございました!

次話も見てくださると嬉しいですm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ