ep36.悪女と家族の対話(2)
「そんなこと…言わないでくれ。エヴァ、お前は自分のことを守っただけだった。悪いのは全部私たちだ」
果たして本当にそうだろうか。
私の命は義母の手によって生還した。そうして、また私は自分の保身に走ってる。
きっと、本当に、真に悪いのは、私だ。
父が今更どんなことを言おうが、私には届かない。
「本当に後悔している。今更で信じてもらえないかもしれないが、決して私たちはお前のことが嫌いだったわではない。ただ、ルーナ…お前の義母が亡くなって、お前の顔を見るのが辛くなってしまった。お前のせいではないということは分かってる…。だが、このままだと【酷いこと】を言ったり行動に移したりしてしまうかと思えば、別邸に移す以外の方法が思いつかなかったんだ…」
嘘つき。
確かに父は私を嫌ってはいなかっただろう。
だが好いてもいなかったはずだ。私の言った通り、私がもう少しだけ早く魔法の才に目覚めれば義母を救えたかもしれないのだから。
それに、ルークも間違いなく私のことを嫌っていただろう。この耳ではっきり聞いた。私は母の仇だと。
「…っ」
「エヴァ…?…っ!エヴァ!」
私の異変に気が付いたであろう第一皇子は必死に私の名前を呼んだ。
そう、先からお腹の痛みが増していて、立っていられないほどに激痛なのだ。
腹痛だけではない。頭痛もするし呼吸のリズムが乱れていく。
けど、今話すチャンスを逃せば、今後私は話したいとも思わないし、この人たちを前にするだけで今みたいなことが起こってしまうだろう。唯一大丈夫なのはイーサン義兄様くらいだろうか。
第一皇子に何度も名前を呼ばれて身体を支えられ、少しだけ落ち着いてから、私は言葉を発した。
「お父様、アルバート義兄様、ルーク。あなた方は、私を別邸に追いやり、私も話をするどころか目を合わせることさえも強制的になくしたこと自体が【酷いこと】だとは考えなかったのですか?」
ここまで話すと、3人はハッと我に返った。
どうして、3人が傷ついたような顔をするのよ…。
「私が、お義母様が亡くなって悲しくなかったと、苦しくも辛くもなかったと、そう思っているのですか…?」
3人はみるみる顔が青ざめていった。
「エヴァのせいじゃな「私のせいです」」
イーサン義兄様はいつも、決まってその言葉をくれる。けどね、違う。
私のせいだよ。
「私とあの日、馬車に乗って出掛けていなければ、私を庇ってなどいなければ、お義母様は死を免れたかもしれないのです。あなたたちも、侍女たちも、私なんかよりもよっぽど、お義母様の方が必要な存在だったのに…!私がお義母様を庇って、お義母様の代わりに死んでいれば…「良い加減にしろ!」」
そこまで言ったところで、私は怒られた。
…怒られた…?
誰に…
目を見ると、明らかに苛立っている父の姿があった。
やっぱりあなたは、いつだって私を腹の奥底では恨んでる。
「お前はルーナによってその命を助けられたんだろ!その命をお前が軽視してどうする!二度とそんなことを言うな!」
はっ…
ふざけてる……。
「……思わず自分の身を軽視してしまうような環境に置いて私を遠ざけたのはあなたでしょう…?そんな貴方が、それを言うの…?」
「…っ!!エヴァ…!今のは!「ほんの少しでも…!」」
止めさせない。
言いたいことは言わせてもらう。ここで我慢なんかしても意味ないから。それからまた、悪女らしく振る舞おう。それで良いじゃない。もう、疲れた。
「私に会いに来てくだされば、慰めてくだされば、気にかけてくだされば、家族としての愛を私にくだされば、私は自分の命がどうでも良いと思うようなことはありませんでした。どれか1つで良かったのです。ですがイーサン義兄様以外、何1つ私に向けることはなかったではないですか…」
「「「「………」」」」
黙っている反応を見て、私は続けた。
「私には、お義母様の死を悲しむ時間もありませんでしたよ…。涙が出る前に、私は別邸に追いやられたのですから」
「…っ_!!」
ああ、もうそろそろ限界だ。
自分勝手に謝ってくるあの人たちを、私はどう許せば良いのだろう。
もう、やめよう。責め立てるのは終わりだ。
どうせ、意味なんてないのだから。
「っ………エ「なんて!」」
「今更過去の事を嘆いたって仕方ありませんわ!父上もアルバート義兄様もイーサン義兄様もルークも、もう気にしないでください!殿下、私としては、この人たちは先程この国に貢献すると言っていました。なので釈放して早いところ有言実行して頂きましょう?」
家族は皆、イーサン義兄様を除いて、まるで悪い夢を見ていたかのような顔になっている。
それもそうだろう。
過去の恨み辛みを話していた私が、突然気にしていたってしょうがないと言い出すのだから。
私も無理矢理なことくらい分かっている。けれど、限界だ。
第一皇子は察してくれたようだ。
「っ…!ああ、元よりエヴァの希望通りにするつもりだったからね。それで構わないよ。…お前たち、今し方自分が言ったことが如何に愚かなことか見つめ直せ。そしてエヴァに感謝しろ。エヴァのおかげでお前たちの首が繋がったんだ。さあ、行こう。エヴァ」
物凄い豹変…というか、私からすれば見慣れた方の第一皇子が牙を向いていた気がするけど、スルーした方が身のためだろう。
「はい。殿下」
第一皇子は私の身体を支えながら、第一皇子の私室まで連れて行ってくれた。着くまで、お互いに無言だった。
私をソファに座らせてくれ、直々に紅茶を用意してくれてから、殿下は私の隣に腰を下ろした。
最後まで読んで頂きありがとうございました!
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