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ep28.悪女は大切にされることに慣れない

 皇女殿下と和解して1週間、今日は何故か一緒に食事を取ろうということになっており、本当に久しぶりに本邸にやってきた。


「食事は美味いか?エヴァ」

「何か嫌いな食べ物があったらいつでも言うのよ?」

「嫌いな食べ物はわたくしが食べてあげますわ」

「私にも遠慮なく言え」

「俺にもな!」


 いやいやいや…、みんな急にどうしたのだろうか。


 確かに一緒に食事をするのは初めてだけど、そんなに気を使わなくても大丈夫だ。


「…えっと、みなさんどうされたのですか?」


 私が心底戸惑っていると、みんなは急に感謝の言葉を述べだした。


「いや、なんというかな…。最近毒を入れられた食事を持ってこられることが無くなったんだ。エヴァのおかげだ。ありがとう」


 皇帝陛下が言った。


「お茶会も楽しく開けるようになったわ。ありがとう、エヴァ」


 皇后陛下が言った。


「私も、夜中に暗殺に来られることが無くなったよ。心から感謝してる」


 第一皇子が言った。


「俺も!エヴァが総入れ替えをしてくれたおかげで、貿易に専念出来るようになった。ありがとな」


 第二皇子が言った。


「わたくしも、ストーカーもいなくなったし、それに、アイザックと堂々と一緒に居られるようになったのは、あなたのおかげ。ありがとう。エヴァ」


 どうして。みんな何かあったのだろうか。


 誰かに私にお礼を言えと脅された?それなら納得がいくけど、自ら言おうと思ったのであれば理解出来ない。


 確かに以前、2年前はもっとギスギスとしていたのは間違いない。


 気を張り詰めていないといつ殺されるかなんて分からないから。


 それも、私がティラノ帝国にやってきて国民を救ったり皇族に価値を証明しているうちに和やかな雰囲気に変わっていった。


 それは良いことだろう。


 お礼は、本当は私みたいな立場の人間に言うべきではない。それでも嬉しいものは嬉しい。


 それでもやっぱり、私は所詮人質でしかない。誰かに好意を向けられて良い存在ではない。


 ただ、価値のある人間に。


「皆さんに喜んで頂けて良かったです。今の私は、皆さんにとって最も価値のある人質と言えますか?」

「「「「「…__っ!」」」」」


 私がそんな質問をすると、みんなは一気に口を閉ざした。


 そして悲しそうな顔をされた。


 どうしてそんな顔をするのか、私にはよく分からなかった。


「エヴァ。あなたはもう人質でなくていい。私と婚約している家族だ。私も他のみんなも、あなたが家族として好きなんだ」


 何を、言ってるんだろうか。


 そんな訳がない。


 私と殿下たちが、家族?


 私は人質で、殿下は皇族。こんなにも空いている立場の差で、私がこの人たちのことを家族と呼んで良い訳がない。


「お世辞なんていりません。私は恨まれるべき存在なんです。みなさんも仰っていたではありませんか。私は人質で、後々死刑になる人間で、私が来て残念だと」


 今の私は笑えているだろうか。いつもは表情なんて簡単にコントロール出来るのに、何故か今回ばかりはそうはいかなかった。


「…エヴァ「私は」」

「時が来たら死ぬ存在です。だから、私に情を抱いてはいけませんよ」


 第一皇子の言葉を遮って、私は言った。


 情を抱いてはいけない。それは自分にも言い聞かせていることだった。


 今の暮らしは全部私が自分で手に入れた訳ではないのだから、縋ってはいけない。


 有効期限のある関係でしかない。


 そう、言ったのに。


 私が伝えた翌日から、みんなこぞって私によく会いにくるようになった。


 第一皇子も、月一回で一緒にお茶を飲んでいたのが、本当によく来るようになった。


 『お仕事は大丈夫なのですか?』と聞けば、『エヴァに会うための時間をつくることくらい簡単だ』と軽く流されてしまった。


 そして最近スキンシップが増えたように思う。

 というか、距離が近い。前まではこんなことなかったのに。


 月一で会っていた時は向かい合って座っていたのが、今では隣に座ってお茶を飲むようになった。


 なんで?


 私の疑問は消えなかった。


 しかも、おかしくなったのは第一皇子だけではない。


 皇帝陛下も皇后陛下も、第一皇女も、さらには第二皇子まで、私の部屋をよく訪れるようになった。


 初めは、また初めて会った時のように嫌味をいわれたり毒を盛られたりするのかと思っていたけど、そんなことは一度もなかった。


 むしろ、みんなの態度が一貫して優しくなったように思う。


 1番変化があったのは皇女殿下だった。


 なんというか、ツンが0になり、デレが100になって、実の妹のようになった。


 ここまでの代わりようがあるだろうか。


 確かに年齢で言えば皇女殿下の方が下の年齢ではあるが、だからって姉様と呼ばれるような立場の人間ではない。


 そのことを伝えると、皇女殿下には「関係ない!」と一掃された。


 そんな甘々な日常にもう諦めて慣れつつあった頃、私の祖国から一通の手紙が届いた。


 その手紙を見たみんなは、激怒した。

 


 














最後まで読んで頂きありがとうございました!

次話も見てくださると嬉しいですm(_ _)m

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