ep2.悪女の家族
さて、今日はとても運の悪い日らしい。
またまた久しぶりに顔を合わせる人物が見えた。
なんとか会話をせずに見なかったことにしてくれたらなと思い挨拶をしなかったのだが、どうやら会話をせずに終わると言うのは無理なようだった。
「おい、待て」
「……ご機嫌よう、アルバート義兄様」
にこにこっと挨拶をして見せれば、アルバート義兄様は心底不機嫌そうな顔をした。
そんなに不機嫌になるなら話しかけないでよと思いつつ、会話を続ける。
「何のご用でしょうか」
「…門前で父上に会っただろう。父上がお前のことを心配していた…。」
"心配?"
何の冗談だろうか。
心配なのならば、もう少し優しい態度を取れないものだろうか。
「まあ…!心配だなんて!お父様もアルバート義兄様も、私が心配されるような器でないことはご存知でしょう?」
「…怒ってるのか?」
「…はい?」
もちろん顔には出さないものの、少し驚いたため口調が荒ぶってしまった。
「…俺たちが、お前を離れに追いやったから、怒ってるのか?」
「…ふふっ、まさか!そんなわけありませんわ。」
そう、そんなわけがない。
怒ってるという考えしか思い浮かばない辺り、本当に私の身の回りのことは何も知らないのね。と、少しばかり、いやかなり落胆した。
「残念ながら、怒ってこのような行動をするほど幼稚な頭を持っているわけではありませんの」
「…どういうこ「とにかく」」
余計なことを聞かれる前にと、私はアルバート義兄様の言葉を静止した。
「お父様とアルバート義兄様のご心配には及びません。私に構わないでくださいませ」
「…それが、お前の答えなんだな。堕ちたお前に、情けでかけた俺たちの心配の声を払い除ける…それが、お前の答えで良いんだな。」
"はっ…今更?"
思わず笑いが込み上げてきそうなのを必死に押さえ込む。
本当に何も分かってない。分かろうともしない。
腹が立つ。みんなみんな、大嫌いだ。
それでもやっぱり、何より
「もちろんですわ。貴方方の目に、私が堕ちて見えたなら、私もこの行動を辞める気はさらさらありません。」
お義母様の胸の中で生き残ってしまった自分が、誰よりも大嫌いだ。
◇◇◇
アルバート義兄様と話をした後、今度は2人目の義兄がやってきた。
なんだろう。私は勇者にでもなっているのだろうか。だとすれば、最大の難所は…、いや、今は考えるのをやめよう。
「ご機嫌よう。イーサン義兄様」
「おかえり。エヴァ」
まだ、私と会話をする人。
だが彼は
「また社交界で精を出していたのかな」
腹黒だ。
分かってるくせに。
「ええ。私の名を世に知らしめるため、日々精進しておりますわ。ところで、イーサン義兄様、お話しておきたいことがございますの」
「…なんだい?」
嫌な予感がしたのだろうか。
少し間が空いた後、イーサン義兄様は聞く耳を持った。
「イーサン義兄様は、アルバート義兄様が成人式の日になさることをきっと知っているでしょう?なので、予め言っておこうと思いまして。」
「言ってご覧」
少しだけ寂しそうな顔をしたイーサン義兄様の顔は見ないふりをして、私は続けた。
「アルバート義兄様が言い終えた後、『あの娘は私生児で、その私生児を公爵家の慈悲でこの年まで育ててやった』と言うことにしてください。私のことが大好きなイーサン義兄様なら、理解してくださいますよね」
否定なんかさせない。
どうせなら、全ての行動に価値を持たせてここを去りたい。
唯一、イーサン義兄様だけは、お義母様が亡くなった後に私の心配してくれた人だ。
あの時、『辛かったね』と、一言だけ言葉をくれた。
他の人がみんな何も言ってくれなかった分、その言葉のおかげで、性格の根本は変わらずいられることが出来たと思う。
その部分は、多少なりとも感謝している。
なので、これはイーサン義兄様への恩返しだ。
「…はぁ、どうして、こんな歪な関係になっちゃったんだろうね」
困ったように眉を八の字に曲げる。
私はそんなイーサン兄様に対して、悪女らしい笑みを向けた。
「私が、お義母様を助けられなかったからですわ。…全て、私があの年に魔法の才を見出せなかったからです。だから、私は一生涯悪女なのです」
「…っ、だからあれは…!「もうよろしいでしょうか」」
「…!」
余計なことを言われる前に、私は素で話すのを辞めた。
もしかするとイーサン義兄様との最後の会話になるかもしれないからと、話しすぎたのがいけなかった。
「私、夜会後で疲れていますの。早く湯船に使ってベッドで横になりたいですわ。失礼しても良いでしょうか」
「……ああ、すまなかったね。…エヴァ。今は平然としているようだけど、君はいつか、壊れるよ」
「………、失礼します」
義兄の戯言など、聞いていない。聞こえていない。私は覚悟して、ラスボスがいるであろう廊下の先へと歩みを進めた。
そしてやっと自室へ入れると思ったところで、やはりかとも思った場所に、ラスボスはいた。
「あら、私の可愛いルークじゃないの。いらっしゃい、こんなところでどうしたの?顔を見せるのは随分と久しぶりじゃない」
義弟は、私に睨みを聞かせて真っ直ぐに私を見つめるのだった。
最後まで読んで頂きありがとうございました!
投稿は前と違って時間帯もまばらで、少し遅れが生じるかもしれませんが何卒ご容赦を…
次話も見てくださると嬉しいです