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第75話 三度目のキス

 そして、一輝としてはこんな風に慌てている綾香の姿をもっと眺めてみたいと思ったのだが。

 さすがにこれ以上、彼女が困っているのをほっとくのは彼氏として駄目だろうと一輝はそう思ったので。

「えっと、綾香さん、取りあえずジュースでも飲んで落ち着いて下さい」

 一輝はそう言うと、空のグラスにジュースを注いで彼女の前の机に置いた。すると、

「……一輝くん、ありがとうございます」

 綾香はそう言うとジュースの入ったグラスを手に取って、ゆっくりとジュースを飲み始めた。そして、

「……ふう」

 暫くジュースを飲んでから、綾香は一呼吸置いたので。

「落ち着きましたか?」

 一輝がそう言うと。

「……ええ、一輝くん、情けない姿を見せてしまってすみません」

 綾香は申し訳なさそうにそう言ったので。

「いえ、そんな事は無いです、寧ろ慌てている綾香さんはとても可愛かったので、もっと見てみたいくらいです」

 一輝がそう答えると。

「えっ」

 綾香は驚いた様子でそう言った。そして、

「もう、一輝くん、そんなことを言わないで下さい、怒りますよ」

 綾香は頬を膨らませながらそう言ったが、そんな風に怒っている姿もとても可愛かったので。

「そんな風に怒っている姿も可愛いですよ」

 一輝は自分の思っている気持ちを素直に伝えた。すると、

「んーー!!」

 綾香はそう声を上げたのだが、その後、何を思ったのか綾香は一瞬だけ黙ると。

「……一輝くん、忘れているのですか?」

 綾香は急にそんな事を言ったので。

「えっと、何がですか?」

 一輝がそう質問をすると。

「この後、一輝くんは私の事を綾香と呼び捨てで呼ぶ必要があるのですよ。そして、私は優しいですから、一輝くんが一回だけ私のことを呼び捨てで呼んでくれたら、一輝くんの事を許してあげようと思っていたのですが……これだけ私を虐めるということは、一輝くんも私と同じように私に虐められたいという事でいいですよね?」

 綾香は笑顔を浮かべてそんなことを言ったので。

「あっ、いえ、そういう訳では……」

 一輝が慌ててそう言うと。

「……そんなに慌てなくても大丈夫ですよ」

 綾香はそんな事を言いながら、一輝の右手を包み込むように自分の両手で握りしめて来たので。

「えっ、綾香さん!?」

 突然手を握られて、一輝が驚いてそう言うと。

「今までずっと私の事をさん付けで呼んでいたので、呼び捨てで呼ぶのに抵抗があるのは分かりますが、それでも私は一輝くんに綾香と呼び捨てで呼んで欲しいです。一輝くんにかっこよく綾香と呼び捨てで呼ばれたら、私はちゃんと一輝くんのモノになれた気がして、私はとても嬉しいと思いますから」

 そう言った綾香は少しだけ恥ずかしかったのか、それともさっきの照れがまだ抜けていないのか、ほんのりと頬を赤くしてそう言った。

 そして、大好きな彼女からそんなことを言われたら、一輝は断れるはずもなく。

「……分かりました、それじゃあ今から綾香さんの事を呼び捨てで呼びます」

 綾香に右手を握られたまま、一輝がそう言うと。

「ええ、お願いします」

 綾香はそう言って、そのまま力強く一輝の右手を握った。そして、

「……それでは呼びますね」

 一輝がそう言うと。

「ええ、お願いします」

 綾香がそう返事をしたので、一輝は綾香の目をしっかりと見て。

「えっと、あ……綾香」

 一輝がそう言うと。

「……はい、一輝くん」

 綾香は恥ずかしさと嬉しさの混ざった、照れ臭そうな笑みを浮かべてそう返事をした。しかし、

「えっと、綾香さ……綾香は僕のことを呼び捨てで呼ばないのですね」

 一輝がそう言うと。

「ええ、私は一輝くんの事を呼び捨てで呼ぶとは約束していませんから、でも、一輝くんがどうしても呼び捨てで呼んで欲しいのなら、私も一輝くんのことを呼び捨てで呼んであげますよ」

 綾香はそん事を言ったので。

「えっ、いいのですか?」

 一輝がそう言うと。

「ええ、私だけがこんなに美味しい思いをするのは不公平ですから」

 綾香はそう答えた。そして、

「それで一輝くん、どうしますか?」

 綾香は改めてそう質問をして来たので、一輝は何と答えるべきか少しだけ悩んだモノの。

「えっと、それなら、一度だけでいいので僕のことを呼び捨てで呼んで下さい」

 一輝は遠慮がちにそう言った。すると、

「ええ、分かりました」

 綾香はそう言うと、一息着いてから。

「それでは言いますね」

 綾香がそう言ったので。

「……ええ」

 一輝が少し緊張しながらそう言うと。

「えっと……か、一輝」

 綾香は顔を真っ赤にしながらそう言った。すると、

「……可愛い」

 恥ずかしそうに言った綾香に対して、一輝は思わずそう呟いた。しかし、

「もう、からかわないで下さいよ」

 綾香が頬を赤くしたままそう言ったので。

「別にからかってはいませんよ、今の綾香さん、いえ、綾香はとても可愛いですよ」

 一輝がそう言うと。

「もう、その呼び方だと、一輝くんは絶対に私のことをからかっているじゃないですか」

 綾香はそんな事を言ったので。

「いえ、そんなことはありません、今の綾香は本当に可愛いですよ」

 一輝が改めてそう言うと。

「もう、そんな風に言って、やっぱり私のことをからかっていますね」

 綾香は頬を染めながらも、少しだけ怒ったような口調でそう言った。しかし、

「ただ、私から言わせてもらったら、照れながらそう言っている一輝もとても可愛いですよ」

 綾香も一輝のことを呼び捨てにして反撃をしてきた。なので、

「そんなことはありません!! 絶対に綾香の方が可愛いです!!」

 一輝が力強くそう否定すると。

「いえ、違います、今は絶対に一輝の方が可愛いです!!」

 綾香も負けまいと、そう言い返して来た。なので、

「いえ、可愛いのは綾香です!!」

「一輝です!!!」

「綾香です!!」

「一輝です!!」

 二人はそんな言い争いを始めた。しかし、二人とも暑くなりすぎたせいか、言葉を交わすごとに二人の顔の距離はどんどん近づいて行き。

「……え?」

「……あっ」

 気が付けば、二人の距離は後数センチでお互いの唇が重なるというところまで迫っていた。すると、

「一輝くん……ん」

 綾香はそう言うと、その場からは動かずゆっくりと目を瞑った。なので、

「……綾香さん」

 一輝もそう呟くと自分も目を瞑り、ゆっくりと綾香と唇を重ねてキスをした。そして、数秒経って一輝が綾香から唇を離すと。

「ふふ、一輝くんとのキスは三回目ですね」

 綾香はそう言ったので。

「そうですね」

 一輝はそう答えた。すると、

「……それで一輝くん、この後はどうしますか?」

 綾香はそんな事を言ったので。

「この後ですか?」

 一輝がそう質問をすると。

「……ええ、折角二人きりなので、今なら二人だけでしか出来ない事も出来ますよ」

 綾香は頬を赤くしたままそんな事を言った。そして、

「えっ!?」

 その言葉を聞いた一輝は、自分の心臓の鼓動が早くなるのを確かに感じた。

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