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第55話 告白への返事

 そして、そんな綾香の言葉を聞き終えた男子生徒は、

「分かりました、彼氏の居る前でこんなことを言うのは失礼だと思いますが、それでも僕の思いをしっかりと立花さんに伝えさせてもらいます」

 この場で初めて男子生徒は一輝の目をしっかりと見てからそう言うと。

 その後、直ぐに綾香の方へと向き直り。

「……好きです、立花さん!! 今の貴方に彼氏が居ることは分かっていますが、出来れば僕と付き合って下さい!!」

 男子生徒はそう言って、綾香に向けて頭を下げた。そして、その言葉を聞いた綾香は数秒間、何も言わずに男子生徒を見ていて。

 そんな綾香の様子を見て、一輝は少しだけ不安な気持ちになったのだが。

「……ごめんなさい、私は一輝くんの彼女でいる今の生活がとても充実していて、この生活を壊したくないですし、出来ればこの先もずっと私は一輝くんの彼女で居続けたいと思いっています。なので、私はこの先誰から告白されても、一輝くんの恋人で居る限りその思いに応えるつもりはありませんし、勿論、貴方の告白も私は受け取るつもりはありません。なので、申し訳ありませんが、私への思いは全てこの場で捨てて行って下さい。今の私は一輝くんの恋人で居られる今この時が一番の幸せですから」

 綾香はそう言って、爽やかイケメン風の男子生徒からの告白をきっぱりと断った。すると、

「……振られるという経験は初めてだけど、結構辛いんだな。でも、分かったよ、立花さんの決意はかなり固いようだし、僕は君のことは諦めて別の相手を探してみるよ」

 男子生徒はそう言って、綾香の言葉を素直に受け入れた。すると、

「ええ、そうして下さい、私は先輩の容姿には一切興味はありませんが、先輩は世間一般から見るとイケメンだと言われる顔立ちだと思うので、その内私よりもいい相手が見つかると思いますよ」

 綾香は笑顔でそう言った。すると、

「はは、立花さんは最後まで辛辣だね……でも、ありがとう、学年一の美少女だと噂されている君にそう言われると少しだけ自信が戻って来たよ……それと、一輝くんだっけ」

 唐突に一輝は男子生徒からそう声を掛けられたので。

「えっ!? あっ、はい、何ですか」

 一輝がそう返事をすると。

「こんな事は僕が言うことではないのだろうけど、君の今回の判断は正解だと思うよ。彼氏が隣に居るとなると告白相手にはいい牽制になるし、立花さんも素直に自分の気持ちを伝えられたのだと思うからね。だから、今後もこんな風に彼女のことを守ってあげるんだよ、そうじゃないと、これだけ君のことを大切に思ってくれている立花さんに対して失礼だからね……それじゃあ、僕はこれで」

 爽やかイケメン風の男子生徒は自分の言いたいことを一輝に一方的に告げると、一輝の返事を待たず、そのまま二人に背を向けて体育館裏を後にした。

 そして、そんな男子生徒の姿が完全に見えなくなると。

「ペタン」

 一輝の隣で手を繋いだまま立っていた綾香が突然、尻もちを付いて地面へ座り込んだ。なので、

「えっ、あの、綾香さん、大丈夫ですか!?」

 一輝が慌てて綾香にそう声を掛けると。

「ええ、大丈夫です、ただ、私は普段こういう時は相手に気を遣った断り方をするのですが、こんな風に自分の気持ちを正直に告げて告白を断ったのは初めてだったので、無事に終わったと思うとつい安心して気が抜けてしまいました」

 綾香はそう言って、少し疲れた表情を浮かべながら笑った。なので、

「確かに綾香さんなら断るにしても、もっとオブラートな言い方をしそうだなと思っていたのですが、そういうことだったんですね……でも、どうして今日に限ってはあんなストレートな断り方をしたのですか?」

 一輝がそう質問をすると。

「一輝くんが居たからですよ」

 綾香は直ぐにそう答えた。なので、

「えっ、どういうことですか?」

 一輝がそう質問をすると。

「簡単ですよ、一輝くんが居るのに普段のような相手に気を遣った断り方をして、もし一輝くんが不安な気持ちになったら私は嫌でしたから。なので、慣れないのですが私は一輝くん以外の人とは付き合うつもりはないと、先輩にも勿論、一輝くんにもちゃんと分かってもらうために、私はきっぱりと先輩の告白を断りました」

 綾香はそんなことを言ったので。

「そうですか、すみません、綾香さん、僕のせいで余計な気を遣わせてしまって」

 一輝はそう言ったが。

「謝らなくてもいいですよ、そもそも私に恋人が居るのにずっと告白をされ続けていたのも、私がずっとオブラートな断り方をしていたので、男性の方々に余計な期待を抱かせ続けてしまったせいもあると思うんです。でも、今日は一輝くんが居てくれたおかげで、私の本心をきちんと相手の男性に伝えることが出来ました。なので、一輝くん、今日は私に付き合ってくれて本当にありがとうございました」

 綾香はそんな風に一輝にお礼を言った。しかし、

「そんな、気にしないで下さい、僕はただ綾香さんの隣に居てずっと手を握っていただけで、何もしていませんから」

 一輝はそう答えた。すると、

「それで充分ですよ、好きな人が傍に居てくれるだけで私は十分に勇気がもらえて、自分の本心を伝えることが出来ました。なので、一輝くんさえよければ、今後も私が告白を断る時には、一緒に付いて来てもらえませんか? 一輝くんが傍に居てくれたら、私はきちんと自分の気持ちを相手に伝えられると思うので」

 綾香はそんなことを言ったので。

「綾香さん……ええ、勿論です、僕なんかが力になれるのなら、幾らでも綾香さんに付き合いますよ」

 一輝がそう答えると。

「ありがとうございます、一輝くん、でも、すみません、一輝くんはマラソンのトレーニングで忙しいのに、わざわざこのようなことに付き合ってもらって」

 綾香は少しだけ申し訳なさそうな表情でそう言った。なので、

「気にしないで下さい、これくらいのこと大した負担ではありません、それに再来週の勝負で僕が勝てば、綾香さんへ告白する人もかなり減ると思いますよ」

 一輝がそう言うと。

「えっ、そうなのですか?」

 綾香がそんなことを聞いて来たので。

「ええ、少し前に颯太が話していましたが、そもそも今、綾香さんがこんなにも告白されているのは、彼氏である僕が周りの人たちから頼りなく見られているのが一番の原因だと言っていました。だからこそ、再来週の勝負で僕が元生徒会長に勝って、少しでも男らしい所を見せられれば、周りの目も少しは変わってこんな馬鹿な告白をする男子も減るだろうと、颯太はそう言っていました。正直、そんなに上手く行くのかは分かりませんが、それでも今度の勝負は僕たちの現状を変えるキッカケになる可能性は高いと僕は思っているので、再来週の勝負で周りからの僕の目を少しでも変えてみせます。なので、綾香さんには申し訳ありませんが、もう少しだけこの現状に耐えて下さい」

 一輝は綾香に向けてそう言った。すると、

「一輝くん……分かりました、そういう事でしたら、それが良いキッカケになると信じて、私は今まで通りの生活を続けて行きます。でも、一輝くん」

「何ですか?」

 一輝がそう質問をすると、綾香は一輝の頬に自分の手を当てて。

「あまり無理はしないで下さいね、私としては、一輝くんが苦手なマラソンを毎日続けてくれているだけでもとても嬉しいですし、例え一輝くんが負けたとしても、私は一輝くんの彼女で居ますから変に気負わなくても大丈夫ですよ」

 綾香は優しい笑顔を浮かべて、一輝の目を見てそう言った。



 その後の二週間は特に何事もなく過ぎていき。

 一輝は毎日マラソンのトレーニングを続け、その後は二回ほど綾香の告白現場に同席したが、彼女は普段よりも強気な態度で相手の告白を断り続けて。

 そして、一輝は遂に約束した勝負の日を迎えた。

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