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【連載版】罰ゲームで学年一の美少女に告白したけど何故かOKされました  作者: 向井数人
第1章 罰ゲームの告白とその行方
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第5話 立花綾香の独り言

 その後、一応一輝の悩みは解決したということで、二人は雑談をしながら昼ご飯を食べ終えて、各々帰路へ付いた。そして、

「ただいま」

 山下夏月はそう言って、靴を脱いで家の中へ入ると、手洗いを済ませてから階段を上げり、二階にある自分の部屋へ入った。

 そして、部屋に入った彼女は、帽子を脱いでそれを机の上に置くと、後ろ髪をポニーテールに結んでいたゴムを外して、綺麗な長い黒髪を部屋の中でなびかせると。

 最後には、彼女が自分をあえてダサく見せるために掛けていた、黒縁の眼鏡を外して。

「もしかして、山下夏月の正体が私だと気付いたから、佐藤くんは私に告白したのではないのかと思っていたのですが、そういうわけではないみたいですね」

 学園一の美少女と言われ、今では佐藤一輝の彼女である立花綾香は自分の部屋でポツリとそう呟いた。そして、

「でもどうして、佐藤くんは私に告白したのでしょうか?」

 立花綾香はそう言った。一年間それなりに話をしてきて、共通の趣味もある山下夏月の姿でいる時に告白してくるのなら、綾香は納得できたし、特に難しいことを考える必要もなく、彼の告白にOKして自分の正体を明かすことも出来たのだが。

 何故か彼はクラスが同じだったことくらいしか接点が無かった立花綾香に告白をしてきて、返事をどうするか悩んだものの、自分が彼のことを好きになっていたのは間違いなかったので、納得のいかない部分はありつつも、好きな人を振るわけにもいかず。

 その結果、今の様に少し複雑な状態になっていたのだった。そして、

「というか、私の恋人の恋愛相談に私自身が答えるなんて、私は一体何をしているのでしょうか……それに佐藤くんこそ、私のことを好きだっていうのなら、これくらいの変装は見破ってくれてもいいのに」

 綾香はそんなに風に自分の不安を口にした。そして、

「……電話、早く掛かって来ないかな」

 綾香がポツリとそう呟くと。

「プルルルルルル……」

 そんな綾香の気持ちを読んだかのように、彼女のポケットの中に入っていたスマートフォンが鳴り出した。

 なので、綾香は少し慌てながらもポケットからスマホを取り出すと、そこには知らない番号が表示されていた。

 そういった場合、慎重な綾香は一度電話に出ず、その後、番号をネットで調べて大丈夫そうなら改めて自分から掛け直すのだが。

「……もしもし」

 タイミング的に、この相手は佐藤一輝だろうと綾香は確信していたので、彼女は静かに電話に出た。すると、

「……あ、もしもし、その……立花綾香さんの携帯ですか?」

 先程、山下夏月として会っていた時とは違い、少し緊張した様子で電話の主は話しかけて来た。

 そして、そんな彼の分かりやすい変化を感じて、綾香は内心ちょっとだけ面白いなと思いつつも、その思いは口には出さず。

「ええ、そうですが、もしかして佐藤一輝くんですか?」

 分かっていながらも、一応確認のためにそう質問してみると。

「え、あ、はい、そうです!! こんな中途半端な時間に電話をしてすみません」

 一輝はそんなことを言い出した。なので、綾香は少し考えてから。

「別に構いませんよ、いつでも掛けて大丈夫ですと言ったのは私ですから……ただ、昨日電話をしてくれなかったのは少し悲しかったです。もしかして、私のことはそんなに好きではないのですか?」

 そう言って、自分が一輝に抱いていた不安を少し彼にぶつけてみた。すると、

「あ、いえ、そんなことはないです!! あまり話したことはありませんが、それでも僕は立花さんのことが大好きです!!」

 一輝は力強くそう言った。すると、

「はうっ!!」

 その言葉を聞いた途端、綾香はそんな少し変わった悲鳴を上げた。なので、

「えっ、大丈夫ですか!! 立花さん」

 そんな声を聴いた一輝は少し驚いた様子で綾香に向けて語り掛けて来た。なので、

「ええ、大丈夫です……それと、佐藤くん」

「え、あ、はい、何ですか?」

「その……私も佐藤くんのこと大好きですよ」

 先程のお返しとばかりに綾香がそう言うと。

「ぐはっ、ごほっ!!」

 その声を聴いた途端、一輝は思い切り咽てしまった。なので、

「え、あの佐藤くん、大丈夫ですか?」

 綾香が少し心配そうにそう聞くと。

「……ええ、大丈夫です。ただ、立花さん」

「何ですか?」

「えっと、その、立花さんにいきなり好きと言われるのは、幾ら何でも僕の心臓に悪すぎるので、出来れば控えてもらえませんか?」

 一輝はそんなことを言った。しかし、その言葉を聞いた途端、綾香の中に眠る何かが強く刺激されてしまい。

「ええ、いいじゃないですか、私は佐藤くんのことが大好きなので、いつでも佐藤くんに大好きってそう伝えたいです!!」

 綾香が少し力強くそう言うと。

「……ぼふっ」

 電話先からそんな風に人が倒れた音が聞こえた。なので、

「えっ? あの、佐藤くん、本当に大丈夫ですか?」

 綾香が少し困惑した様子でそう聞くと。

「あっ、はい、大丈夫です。すみません、あまりの破壊力の高さに意識が一瞬飛んでいました」

 一輝はそんなことを言った。なので、

「ふふ、佐藤くんは冗談が上手いですね」

 綾香はそう言ったが。

「いえ、本気で言っているのですが。正直、今後もこんな風に不意打ちで言われると、僕の命が幾つあっても足りないです」

 一輝は真面目な口調でそう言葉を返した。すると、

「そうですか、ただ残念ですが、私は思ったことは素直に口に出さないと気が済まないタイプの人間なんです。なので、佐藤くんは頑張って私に好きと言われることに慣れて下さいね」

 綾香はそう言った。そして、再びそんなことを言われて、一輝はまた心臓にダメージを受けそうになるものの何とか堪えて。

「……分かりました、立花さんがそう言うのでしたら慣れるよう頑張ります」

「ええ、頑張って下さい」

 一輝がそう言うと、綾香は満足した表情を浮かべながらそう言葉を返した。そして、

「……えっと、立花さん、俺から一つ質問があるのですが聞いてもいいですか?」

 一輝がそう言うと。

「ええ、何ですか?」

 綾香はそう答えた。すると、一輝は一呼吸終えた後。

「立花さんはどうして、僕の告白をOKしてくれたのですか?」

 一輝はそう言って、一番気になっている疑問を口にした。そして、その言葉を聞いた綾香は、

「知りたいですか?」

 一輝にそう質問をした。すると、

「はい、自分で言うのも何ですが、僕は別にイケメンではないですし、何か特別な才能があるわけでもない普通の人間です。それに、立花さんともこれといった接点は今まで無かったです。なのに、どうして僕なんかを恋人として認めてくれたのか、正直分からないんです」

 一輝はそう言った。そして、彼の言葉を全て聞き終えた彼女は、

「そうですね、確かに佐藤くんの言う通り、今そんな疑問を持つのは無理もないと思います。ですが、私が佐藤くんのことを好きなのは何の裏もない本心ですし、それにはちゃんと佐藤くんも納得できるだけの理由もあります。ですが……」

 そこまで言うと、綾香は一度言葉を切り。

「その理由に関しては、出来れば私が伝えるのではなく、佐藤くん自身で気付いて欲しいです。気付いてさえしまえば、そんなに難しい話ではないと私は思うので。ただ、これはあくまで私の我儘で、佐藤くんが今直ぐ教えて欲しいと言うのなら、私はこの場でその理由を全てお話ししますがどうしますか?」

 一輝に対してそう問いかけた。そして、その言葉を聞いた一輝は少し考えてから。

「……いえ、今は教えてもらわなくても大丈夫です。分からないからって何も考えず、直ぐに答えを聞くのはあまり良くないと思いますから、それに」

「それに、何ですか?」

 綾香がそう聞くと。

「彼女の我儘を叶えるのも彼氏の勤めだと、僕はそう思うので。なので、立花さんがそう望むのでしたら、僕なりに頑張ってその答えを探したいと思います」

 一輝はそう言った。そして、そんな一輝の答えを聞いた綾香は、

「分かりました、佐藤くんがそう言うのでしたら、期待して待っています」

 優しい口調でそう言葉を返した。

 その後、二人は趣味や好きな食べ物など、事前に彼女がアドバイスしていた内容の話をしていた。そして、

「えっと、それじゃあそろそろ電話を切りますね」

 一通り話し終えた後、一輝がそう言ったので。

「ええ、分かりました」

 綾香もそう言葉を返した。すると、

「あっ、そうだ立花さん、最後にもう一つだけ質問をしてもいいですか?」

 一輝はそんなことを聞いてきたので。

「いいですよ、何ですか?」

 綾香がそう返事をすると。

「その、迷惑でなければ明日も電話を掛けていいですか? 恋人だからというのもありますが、それ以上に立花さんとは会話が弾みますし、話をしていてとても楽しかったので」

 一輝はそんなことを聞いてきた。なので、

「ええ、勿論いいですよ、私も佐藤くんと話をしていてとても楽しかったですし、それに今以上に私は佐藤くんのことを知りたいですから」

 綾香はそう言った。なので、

「えっと、その、分かりました。僕ももっと、立花さんのことを知りたいので、これからも電話をさせてもらいます……それでは、また明日」

 一輝がそう言うと。

「ええ、また明日」

 綾香がそう返事をして、一輝は静かに電話を切った。そして、綾香は暫くの間、その場に立っていたが、急に目の前に合った、自分のベッドにダイブすると。

「うーー!!」

 枕に顔を押し付けたまま、そんな声を上げた。そして、

「もう、佐藤くん可愛すぎですよ!!」

 枕に顔を押し付けたまま綾香はそう言った。

 電話で一輝と話をした時、最初、一輝はがかなり緊張した様子で話しかけて来たので、綾香は山下夏月として接している時とのギャップに少し笑いそうになってしまったのだが。

 そもそも、一輝は夏月と綾香が同一人物だとは思ってもいないので、それも仕方がないことだと思ったし。

 緊張しながらも頑張って自分に話しかけてくれる一輝に対して、段々と愛おしいと思える感情が芽生えて来たのだった。そして、

「明日も電話してくれるのですね、ふふっ、今から楽しみです」

 綾香はそう言って、枕に顔を埋めたまま微笑んだ。

 こうして、少し複雑な事情を抱えつつも、初々しい一組のカップルが新しく生まれたのだった。

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