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第48話 彼女のおねだり

 そして、そんな風にいつもとは変わらない綾香の様子を見た一輝は、

「……いえ、何でもないです」

 諦めた様子でそう言った。正直、今この場で綾香に何時も自分が寝ているベッドに座られると、変に緊張してしまうので出来れば止めて欲しいと伝えても良かったのだが。

 そうすると、綾香がその場で慌ててしまって、下の階にいる一輝の両親に妙な勘違いをされてしまう可能性があったので。

 一輝は取りあえず、綾香にベッドから移動してもらうことを諦めた。

 そして、一輝も取りあえず自分も何処かに座ろうと、勉強机の前に付いている椅子に座ろうとしたら。

「えっ、一輝くん、何をしているのですか?」 

 綾香が突然そんなことを言ったので。

「えっ、何って、椅子に座ろうと思っているだけですが」

 一輝が勉強机の前に置いてある椅子の背を持ってそう言った。すると、

「……その、折角二人きりなので、私と並んでベッドに座りませんか?」

 綾香はチラリと、自分の隣の空いているベッドのスペースを観てそう言った。そして、その言葉を聞いた一輝は、

「……えっと、本当にいいのですか?」

 少し緊張した様子で綾香にそう質問をすると。

「ええ、勿論です、一輝くんは私の大切な恋人なのですから」

 綾香は少し恥ずかしそうに頬を染めると、一輝から視線を逸らしながらそう言った。なので、

「……ええ、分かりました」

 一輝はそう返事をした。そして、一輝はゆっくりと、綾香が座っている自分のベッドの前へと歩いて行くと。

「……その、失礼します」

 そう言って、一輝は恐る恐るといった様子で、綾香から少し距離を取って自分のベッドに腰掛けた。すると、

「もう、一輝くん、そんなに距離を取らなくても大丈夫ですよ」

 綾香から少し距離を取ってベッドに座った一輝の傍に綾香は自分の体を寄せて来て。

 そのままピタリと綾香は自分の肩を一輝の肩に引っ付けて来た。そして、

「私たちは恋人同士なのですから、私は一輝くんに甘えたいと思っている時はこんな感じに甘えたいと思っていますし、一輝くんも私に甘えたいと思ったら、これくらいのことはしてもいいのですよ」

 綾香は一輝の肩に自分の頭を乗せながらそう言った。なので、

「綾香さん……ありがとうございます」

 一輝は綾香にそうお礼を言った。すると、

「いえ、大丈夫です……それで一輝くん、実は一つだけ私から一輝くんにお願いしたいことがあるのですが、いいですか?」

 綾香はそんなことを聞いて来た。なので、

「えっ、何ですか?」

 一輝がそう質問をした。すると、

「それは秘密です、ただ、一輝くんは良いか悪いかの二択で答えて下さい」

 綾香は頬を赤く染めながら、そんなことを言った。

 そして、そんな綾香の反応を観て、一輝は綾香が何を思っているのかと少しだけ不安になったが、それでも一輝は腹を括ると。

「綾香さんが僕に何を言うつもりなのかは分かりませんが、僕は勿論いいですよ、綾香さんならそんなに変なことを言わないだろうと、僕はそう思っていますし、多少無茶なお願いでも、彼氏として僕は綾香さんのお願いを叶えてあげたいです」

 綾香に向けてそう言った。すると、

「ありがとうございます、一輝くん、それなら遠慮なく、私のやりたいことを一輝くんにやってもらいますね」

 綾香はそう言うと、一輝の肩から自分の頭を離すと、そのまま綾香は自分の体を一輝の方へと傾けて来て。

 何を思ったのか、綾香は自分の頭を一輝の膝の上へと乗せて来た。なので、

「えっ!? あの、綾香さん、一体何を!?」

 一輝が驚いてそう言った。すると、

「何って、ただの膝枕ですよ……えっと、もしかして一輝くんは膝枕を知らないのですか?」

 綾香はそんなことを聞いて来た。なので、

「いえ、勿論知っていますが……ただ、綾香さんはどうして膝枕をしたいと思ったのですか?」

 一輝は自分の膝の上にいる綾香の体温を感じながら、少し緊張した表情を浮かべながらそう質問をすると。

「その、こんな話をするのは少し恥ずかしいのですが、私は小さい頃によくお父さんに膝枕をしてもらっていて、お父さんの膝の上でお昼寝をするのが好きだったんです」

 そう言うと、綾香は一度言葉を切ってから。

「でも、私はもう高校生なので、今更お父さんにこんなことをお願いするのは恥ずかしくて出来ないので、私の彼氏である一輝くんに今後は膝枕をしてもらえたら嬉しいなと、私はそう思ったのですが……一輝くんは私に膝枕をされるのは嫌ですか?」

 綾香はそう言うと、一輝の膝に頭を乗せたまま上を向いて、一輝の目を真っ直ぐに見つめて来た。なので、

「……別に、嫌ではないですよ」

 一輝は何とかそう言葉を捻り出すと、綾香からそっと視線を逸らした。すると、

「ふふ、一輝くんのそういう恥ずかしがり屋な所も私は好きですよ」

 綾香は笑顔を浮かべてそんなことを言った。そして、

「あの、一輝くん、もう一つお願いをしたいことがあるのですが、いいですか?」

 綾香は続けてそう言ったので。

「……ええ、何ですか?」

 何を言われるのかと少し身構えつつも、一輝がそう返事をすると。

「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ、私はただ一輝くんに私の頭を撫でて下さいと、そうお願いしようと思っただけですから、一輝くんは今までも何度か私の頭を撫でてくれたので、これくらいお願いは聞いて貰えますよね?」

 綾香はそんなことを言った。なので、

「……ええ、それくらいのお願いならいいですよ」

 一輝はそう返事をした。いきなり膝枕をされたので次は何をお願いされるのかと、一輝は内心かなりドキマギしていたのだが、それくらいのお願いなら可愛いモノだった。

 なので、一輝がそう言って綾香のお願いを了承すると。

「えっと、それなら一輝くん、申し訳ありませんがお願いします」

 そう言って、綾香は目を瞑った。しかし、

「えっと、綾香さん、どうして目を瞑るのですか?」

 何故か両目をしっかりと止めた綾香の方を見て、一輝がそう質問をすると。

「いいじゃないですか、さあ一輝くん、お願いします」

 綾香は一輝の質問には答えずにそう言ったので。

「ええ、分かりました」

 一輝はそう答えると、綾香の頭に自分の右手を乗せて彼女の頭をゆっくりと撫で始めた。そして、暫く綾香の頭を一輝が優しく撫でていると。

「……ん」

 一輝が少しの間、綾香の頭を撫でていると彼女はそんな声を上げた。なので、

「……あの、綾香さん、出来れば急に変な声を出さないで下さい!!」

 その声を聞いていると一輝は何だか変な気分になってしまいそうなので、一輝は慌ててそう突っ込みを入れた。すると、

「あっ、すみません、一輝くんに頭を撫でてもらうととても気持ちがいいので、思わず声が出てしまいました」

 綾香は目を開けると、急にそんなことを言われて恥ずかしかったのか、少し頬を赤く染めてそう言った。なので、

「そうですか、それなら良いのですが……綾香さんのそんな声を聞き続けたら多分、僕の理性が持たないので、出来ればなるべく声を出さないようにして下さい」

 一輝が改めてそう言うと。

「……ええ、分かりました、今一輝くんに襲われたら私は多分抵抗できないので、一輝くんに襲われないように気を付けます」

 綾香はそんなことを言った。なので、

「さすがに下の階に僕の両親が居るのに、綾香さんにそんなことをする度胸は僕にはありませんよ」

 一輝が苦笑いを浮かべながらそう答えると。

「ふふ、それもそうですね」

 綾香は一輝と同じように笑った。

 その後、一輝は綾香を膝枕したまま、彼女の頭を撫で続けていて。

 綾香も気持ちよさそうな表情を浮かべたまま、目を瞑って一輝に頭を撫でられて続けていたのだが……



「……すう、すう」

 彼氏に膝枕をされて頭を撫でてもらうのが余程気持ちよかったのか、数分後には、そんな彼女の寝息が一輝の部屋の中に聞こえて来た。なので、

「え? あの、綾香さん?」

 一輝はそう言って、綾香に声を掛けたのだが。

「すう、すう……」

 どうやら綾香は本当に眠ってしまったようで、一輝が幾ら声を掛けても、綾香からはそんな可愛らしい寝息が聞こえて来るだけだった。

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