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第33話 罰ゲームの代償

 綾香とのお家デートを終えて、少しギクシャクとした状況で彼女と別れた次の日の土曜日、一輝は十二時よりも少し前に、行きつけの大型書店のライトノベルのコーナーに来ていたのだが。

「……今日は居ませんか」

 一輝はそう呟いた。いつもなら土曜日のこの時間帯には、ライトノベルのコーナーに山下夏月が来ていて、よくライトノベルを観て周っているのだが、今日は珍しく彼女の姿は無かった。なので、

「仕方ない、綾香さんのことについて相談したかったのだけど今日は無理そうですね」

 一輝はそう呟くと取りあえず、折角来たのだからと新作のラノベを観て行くことにした。

 そして、一輝は新作のラノベ一覧を観て特に欲しいと思った作品が無かったので、そのまま店を出て、用もないので家に帰ろうかと思って時間を確認するためにスマホを取り出すと。

「ん?」

 さっきまでライトノベルを見て周っていたので気が付かなかったが、スマホには颯太からの着信履歴が残っていた。

 なので、一輝は何事かと思って颯太に電話を掛け直すと。

「おう、どうした、一輝」

 そんなことを言いながら颯太は電話に出た。なので、

「いや、どうしたって颯太の方こそどうしたんだ? さっき僕に電話をしていたみたいだけど」

 一輝がそう言うと。

「いや、お前が立花さんと上手くやっているのかと少し気になって電話をしていただけだ、ただ、直ぐに電話に出なかったから、それならそれでいいと思ったんだよ」

 颯太はそう言った。そして、

「それでお前は今、立花さんと上手くいっているのか?」

 颯太は一輝に改めてそう質問をした。なので、

「……いや、実は今ちょっと少しだけ問題が起きているんだ」

 一輝がそう言うと。

「……なんだと?」

 颯太は少し声を低くしてそう言った。そして、

「それで、お前はその問題を自力で解決出来そうなのか?」

 颯太は一輝にそんなことを聞いてきた。なので、

「……いや、自分で言うのも恥ずかしいけど、正直この問題はどうしたらいいのか僕もよく分からないんだ」

 一輝は自信のない口調でそう言った。すると、

「そうなのか……俺でよければ相談くらいなら乗ってやるけどうする?」

 颯太はそんなことを言った。なので、

「いいのか?」

 一輝がそう聞くと。

「ああ、今日はバイトもなくて丁度暇だったからな、それに俺はお前と立花さんには上手くいって欲しいとそう思っているからな。だから、俺が相談に乗ってやれることなら、いつでもお前の力になってやるぜ!!」

 颯太は一輝に向けてそう言った。そして、その言葉を聞いた一輝は、

「……分かった、それなら悪いけど今からいつものファミレスに来てくれないか? 昼ご飯を食べながらでいいから僕の悩みを聞いてくれ」

 颯太に向けてそう言った。すると、

「ああ、いいぜ、それなら今から家を出るから、多分三十分後くらいにはファミレスに付くわ」

 颯太はそう言って、二人は学校の近くにあるファミレスで会う約束をした。そして、



「それで、立花さんとの間に起きている問題っていうのは何なんだ?」

 その後、一輝と颯太はファミレスの自転車置き場で会ってから店内に入り、自分たちの注文を終えた後、颯太は一輝に対してそう質問をした。すると、

「……実は昨日、綾香さんがどうして僕が綾香さんに告白してくれたのかと、そう質問をされたんだ。ただ、僕は颯太に言われた罰ゲームで綾香さんに告白したから、そのことを伝えられなくて、それで多分、綾香さんには僕に何か言い辛い事情があるのだと伝わってしまって、そのせいで綾香さんとは今、少しギクシャクした関係になってしまっているんだ」

 一輝は正直に今の状況を颯太に説明した。すると、

「……成程な、確かにそのことは立花さんに素直に伝えるわけにはいかないよな……ただ、悪かったな、一輝」

 何故か颯太はそう言って、一輝に向けて頭を下げて謝ってきた。なので、

「えっ、なんでお前が謝るんだ?」

 一輝がそう言って、颯太に質問をすると。

「何故って当たり前だろ、お前たちがそんな風な状況に陥っているのは、そもそも俺が罰ゲームでそんな提案をしたからであって、俺はお前たちに上手くいって欲しくてあの罰ゲームを提案したのに、そのせいで仲が悪くなったのなら、正直、俺は申し訳なさ過ぎて、お前になんて言って謝ればいいのか分からねえよ」

 颯太はそんなことを言った。なので、

「いや、お前が謝る必要はないよ、何度も言っているけど、お前があの罰ゲームを提案してくれなかったら、そもそも僕は綾香さんに告白することなんて無かっただろうし、そうなれば僕が綾香さんの彼氏になることもなかったからな。でも、それでも罪悪感が消えないのなら、僕の悩みに真剣に答えて欲しい。正直、僕はこのことを綾香さんに伝えるべきかどうか、本気で悩んでいるんだ」

 一輝はそう言った。そして、そんな一輝の思いを聞いた颯太は、

「そうか、分かった、元々お前の相談には真面目に乗ってやるつもりだったけど、これには俺の責任もあるからな。だから、お前が満足する答えが得られるまでは俺は何時間でも付き合ってやるぜ、だから今日は遠慮せず、一輝の思っていることを正直に言ってくれ!!」

 思い悩んでいる一輝を励ますように颯太は力強くそう言った。なので、

「……ありがとう、颯太」

 一輝がそう言うと。

「気にするな、それで悩んでいるとは言っても、一輝は本当のところ心の内ではどうしたいと思っているんだ? 立花さんには本当のことを話したいと思っているのか? それとも、出来ればこのことは、この先もずっと立花さんには秘密にしておきたいと思っているのか? お前の正直な思いを俺に聞かせてくれ」

 颯太は真剣な表情で一輝に対してそう質問をしてきた。なので、

「……僕としては正直、綾香さんに本当のことを包み隠さずに伝えたいとそう思ってるよ、綾香さんがどうして僕みたいな地味で冴えない男の告白をOKしてくれたのかは今でも分からないけど、それでも綾香さんが僕のことを本当に好きでいてくれているということは、一緒に過ごしているとよく分かるから、そんな綾香さんの思いに今の僕が応えられることは、綾香さんには嘘は付かず、本当のことを伝えるくらいしかないと僕はそう思っていますから、でも」

 そこまで言うと、一輝は一度言葉を切り。

「もし僕が本当のことを伝えて、それがキッカケで綾香さんと別れることになったら、多分僕は一生そのことを後悔し続けると思う。正直、綾香さんは、この先もずっと僕の彼女で居て欲しいと思うくらい大好きだし、もし綾香さんと別れたら、僕ではもう二度と綾香さんのような素敵な人とは付き合えないと自分でもよく分かっているから……だから本当は、僕は今すぐにでも綾香さんに本当のことを伝えたいと思ってはいるのだけど、それで綾香さんとの関係が壊れるのかもしれないと思うと怖くて行動を起こせないでいるんだ……情けないな、僕、綾香さんに隠し事をしたくないと言いながら、結局は今の関係が壊れるのが怖くて、行動を起こせずにいるんだから」

 一輝はそんな風に、今の自分の素直な思いを口にした。すると、

「いや、そんな風に思うのは無理もないと思うぞ、もし俺が今の一輝と同じような立場にいたら、俺も多分、一輝と同じように悩んで直ぐには答えを出せないと思うからな、ただ」

 そこまで言うと、颯太は一度言葉を切り。

「それでも、多分俺なら最終的には彼女に本当のことを伝えると思うぞ、黙っていたら少しずつでも、彼女とのギクシャクした空気は薄くなっていくのかもしれないが、それでも自分の中には、彼女に嘘を付き続けているという罪悪感が残り続けることになるからな、それなら、彼女を傷つけて最悪別れることになるとしても、俺は本当のことを立花さんに言うべきだと思う。お前の言う通り、彼女に嘘を付かないというのはお前が立花さんに出来る、一つの思いやりだと俺もそう思うからな」

 颯太はそう言って、自分の思いを口にした。しかし、

「ただ、これはあくまで俺の考えで、これをお前に強要するつもりはないぞ、もし、お前がこのことをこの先もずっと秘密にしておきたいと言うのなら、俺はこのことを誰にも話さないとここで誓う、このことを知っているのは俺と一輝だけだから、お前がこのことを言うつもりがないのなら、後は俺が誰にも言わなければ、このことは他の人にはバレないからな。だから、一輝はここで精一杯悩んで、最悪どっちを選んでも後悔する可能性はあるが、それでもお前なりに納得できる答えを見つけてくれ」

 颯太はあえて秘密にする道も否定せず、例えその道を選んでも一輝に心配を残さないようにそう言った。なので、

「ありがとう、颯太、ただ、僕にはもう一つ悩んでいることがあるんだ」

 一輝は友人に甘えすぎているなと思いつつも、自分一人ではどうあっても解決できないと思いそう呟いた。すると、

「ん? なんだ? 丁度いい機会だから今ここで聞かせろよ」

 颯太はそう言った。なので、

「……実は、告白した理由を綾香さんに聞かれた時、それと一緒に自分のどんなところを好きになって告白してくれたのかと、綾香さんにそう聞かれたんだ。ただ、綾香さんに告白をした時の僕は、綾香さんのことを滅茶苦茶可愛いなとは思っていても、自分とは縁のない人だと思っていたから、綾香さんには悪いけど、その問いにはどうしても答えることができなかったんだ」

 一輝はそう言ってもう一つ悩みを口にした。正直、この悩みには颯太にも直ぐには答えを出せないのではないのかと、一輝はそう思っていたのだが。

「なんだ、それなら簡単じゃないか」

 一輝のそんな予想を裏切り颯太はなんでもないようにそう言った。そして、

「えっ、そうなのか?」

 あまりにも軽い口調でそう言われたので、一輝は思わずそう聞き返した。すると、

「ああ、だって…………」

 そう言って、颯太は一輝にそれに対する自分なりの考えを伝えた。

 その後、二人は自分たちの席に運ばれて来た昼ご飯を食べながら、一輝は颯太に相談しつつも、自分はこのことを綾香に伝えるべきかずっと悩んでいたのだが。



「……ありがとう、颯太、おかげで答えが出たよ、正直、綾香さんに振られる可能性は高いとは思うけど、それでも僕のことを好きだと言ってくれた綾香さんに嘘を付き続けるのは嫌だから、綾香さんを傷つけることにもなるけど、それでも僕は綾香さんに本当のことを伝えるよ!!」

 一輝は覚悟を決めた表情でそう言った。すると、

「そうか……まあ、多分俺も最終的にはお前と同じ答えになるだろうし、俺としてもそれが正しいとは思うけど……」

 そこまで言うと、颯太は言葉を切ったので。

「けど、なんだよ」

 一輝がそう言うと。

「……いや、なんでもない!! お前がそう決めたんなら、俺はこれ以上なにも言わねえよ、ただ、言うと決めたんならなにも誤魔化さず全部正直に話すんだぞ」

 颯太はその言葉を飲み込んで、最終的にはそう言ったので。

「ああ、分かったよ……ありがとう颯太、相談に乗ってくれて、これくらいでお礼になるとは思わないけど、今日の昼ご飯代は僕に奢らせてくれ、今日のお前にはそれだけ世話になったからな」

 一輝がそう言うと。

「分かった、お前がそういうのなら今回はご馳走になるわ」

 颯太は納得した様子でそう言った。そして、

「さて、お前の悩みも解けたようだし、そろそろ店を出ようぜ」

 颯太がそう言うと。

「分かった、それなら会計もあるし僕は先に行っているよ」

 一輝はそう言って、颯太を置いて一人その場を後にした。すると、

「時には嘘を付くのもそれはそれで優しさだと思うぞ、一輝。まあ今回ばかりは、本当のことを伝えるのは間違いではないと俺はそう思いたいけどな……頑張れよ」

 親友の背中を見送りながら、颯太は小さくそう呟いた。

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