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【連載版】罰ゲームで学年一の美少女に告白したけど何故かOKされました  作者: 向井数人
第1章 罰ゲームの告白とその行方
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第3話 山下夏月と重なる影

 そして、一晩経って次の日の十二時になる少し前、一輝は自転車に乗って家から数十分の所にある某全国チェーン店の本屋へと訪れた。

 そして、一輝は店内に入りライトノベルが置かれているコーナーに訪れると。

「あ、やっぱり今日も居ましたね」

 そこには、一輝に背を向けて、新刊の棚に置かれているライトノベルのタイトルを見ている一人の女性の姿があった。

 しかし、その姿を見た途端、何故か一瞬、一輝の目の前に居る女性と、昨日体育館裏を後にしている、立花綾香の背後が重なって見えたのだが。

(……いや、いくら初めて出来た彼女だからって、立花さんのことを意識しすぎだろ)

 一輝は心の内でそう呟くと、ゆっくりとした足取りで彼女の背後へと歩いて行った。そして、

「山下さん」

 そう言って、一輝は彼女に声を掛けた。すると、

「ひゃあっ!?」

 突然背後から声を掛けられて驚いたのか、彼女はそんな風に可愛らしい悲鳴を上げた。

そして、彼女は恐る恐るといった様子で背後を振り返ると。

「あっ、こんにちは、佐藤くん」

 そう言って彼女、山下夏月(やましたなつき)は一輝に向けてそう挨拶を返してきた。

 長い黒髪をポニーテールに結び、黒縁の眼鏡を掛けていて、キャップデニムの帽子を被りっている彼女は、肌の露出が殆どない長袖長ズボンという地味な格好で棚に並んでいるライトノベルのタイトルを見比べていた。なので、

「こんにちは山下さん、何か面白そうな作品はありましたか?」

 一輝はいつも通り、彼女にそう質問をしてみた。すると、

「そうですね……今月に新しく販売された作品は一通り目を通してしてみましたが、その中だとこれが面白そうでした」

 彼女はそう言って、本棚から一冊の小説を手に取った。そして、そのライトノベルのタイトルを見ると、

「ああ、その作品は知っていますよ」

 一輝はそう答えた。すると、

「あ、そうなのですか、もしかして、もう読まれましたか?」

 山下夏月はそう質問をして来たので、

「ええ、今月の頭に買って、少し前に読み終わりました」

 一輝はそう答えた。すると、

「そうですか、因みに面白かったですか?」

 山下夏月は再度、そんな質問をして来たので。

「ええ、面白かったですよ、このライトノベルはタイトルを見れば分かる通り、フランス人の美少女が時々フランス語でデレてくるという話なのですが、そのヒロインがとても可愛くて、個人的には割とお勧めなのですが、話が滅茶苦茶面白いというよりは、主人公とヒロインの甘酸っぱいやり取りを見るのがメインで、話自体は割と平和な日常モノなので、人によっては少し退屈に感じるかもしれませんので、山下さんの好みに合うかどうかは分かりませんが」

 一輝は普段よりも少し早口でそう言って説明をした。そして、一輝の説明を聞き終えた山下夏月は、

「それなら多分大丈夫です、私はまったりとした日常モノの作品も可愛い女の子が出て来る作品も大好きですから。それに、佐藤くんの評価は結構当てになるので、私はこの作品を買って読んでみることにします!!」

 そのラノベを手に持ったまま、山下夏月は一輝に笑顔を向けてそう言った。

 その後も二人はのんびりとライトノベルコーナーで話をしながら、一輝は三冊、夏月は二冊のラノベを手に取ってレジへと向かった。

 そして、二人は会計を終えて店の外へ出ると。

「佐藤くんのお陰で今週も面白そうな作品を買うことが出来ました、私の買い物に付き合ってくれてありがとうございました」

 山下夏月は一輝にそうお礼を言ったので。

「いえ、僕の方こそ山下さんと一緒に買い物が出来て楽しかったです……あの、山下さん」

「はい、何ですか?」

 山下夏月はそう聞き返して来たので。

「この後、良かったら何処かに昼ご飯を食べに行きませんか?」

 一輝は彼女にそう提案した。すると、

「ええ、いいですよ。もしかして、もう少しライトノベルのお話をしたかったのですか?」

 山下夏月は一輝にそう質問をした。一輝は時々、本屋を出た後に彼女を昼ご飯に誘うことがあり。

 その時は大抵、ライトノベルに関する話をもっとしたいと思った時であり、彼女はそう思って一輝にそう質問をしたのだが。

「いえ、違います……実は最近になって一つ悩み事が出来てしまって、山下さんさえ良ければ相談に乗ってもらえないかなと、そう思ったのですが」

 一輝がそこまで言うと。

「……悩み事ですか」

 山下夏月は何を思ったのか、先程までの楽しそうな表情から一変して、何か困ったような、複雑そうな顔をした。なので、

「あ、すみません、突然無茶なお願いをしてしまって、もし気分が乗らないのなら断ってもらって大丈夫ですよ!!」

 一輝は少し慌ててそう言った。しかし、

「いえ、そんなことは無いです!! 力になれるかは分かりませんが、私なんかで良かったら佐藤くんの悩み事を聞かせて下さい!!」

 そんな一輝の不安を吹き飛ばすかのように、彼女は力強くそう言った。なので、

「……本当にいいのですか?」

 一輝が改めてそう聞くと。

「はい、佐藤くんには私のことを助けてもらったり、面白いライトノベルのことを色々教えてもらったりと、一年間ずっとお世話になりっぱなしでしたから。なので、私なんかでも佐藤くんの力になれるようなことがあるのなら、是非やらせて下さい!!」

 彼女はそう言った。なので、

「……分かりました、それなら申し訳ありませんが、少しだけ僕の悩み相談に付き合って下さい」

 一輝はそう言って、その場で彼女に頭を下げた。

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