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第18話 クレーンゲームとプレゼント

 そして、そのぬいぐるみを見た一輝は、

「そういえば立花さんは自宅で犬を飼っているんでしたよね、そんなに犬が好きなのですか?」

 綾香に向けてそう質問をした。すると、

「そうですね、犬は好きですよ、可愛くて人懐っこくて、素直に好意を伝えてくれるので」

 綾香は嬉しそうにそう言った。そして、そんな言葉からは、彼女は本当に犬が好きなんだという気持ちがひしひしと伝わって来た。なので、

「分かりました、それなら僕が必ずこのぬいぐるみを取るので、隣で見ていて下さい」

 一輝はそう言うと、財布を取り出して100円玉をゲーム機に投入して、クレーンゲームを始めた。そして……



「立花さん、どうぞ」

 ぬいぐるみが結構大きかったこともあり、800円という高校生からすれば割と痛い出費をしたモノの、最終的には何とか犬のぬいぐるみを無事に手に入れることが出来た一輝はそう言って、綾香にぬいぐるみを差し出した。すると、

「ありがとうございます、佐藤くん」

 綾香はそう言うと、何故か自分のバックの中から自分の財布を取り出した。なので、

「えっと、立花さん、どうして今財布を取り出しているのですか?」

 一輝は綾香にそう質問をした。すると、

「何故って、佐藤くんは私のためにそのぬいぐるみを取ってくれたので、そのために使ったお金は私が払うべきじゃないですか」

 綾香はそう言った。恋人である一輝には意外と遠慮なく甘えて来る綾香だが。

 学校では文武両道の優等生であるだけのことはあり、金銭面に関してはかなりしっかりしていて、前回のお出かけでも彼女は自分の分の料金は全て自分で払っていたし。

 このぬいぐるみも、最終的に自分のモノになるのなら、その分の金額は自分が払うべきだと、綾香はそう思っているようだった。

 そして、確かに理屈で言えば、彼女の言い分は正しいのかもしれないと、一輝もそう思ったのだが。

「いえ、このぬいぐるみは僕から立花さんへのプレゼントなので、お金は払わなくていいですよ。それに、僕も久しぶりにクレーンゲームをしていて楽しかったので、金額分の楽しい思いは出来ましたから」

 それでも、これで彼女からお金を受け取るのは違うと思い一輝はそう言った。すると、

「それでも、私だけが一方的に佐藤くんの好意を受け取るのは納得出来ません、それなら、お金以外のことでもいいので、私からも佐藤くんに何かお返しをさせて下さい」

 綾香はそう言った。正直、一輝としてはそんなモノは期待していなくて、ただ純粋に彼女の喜んでいる顔を見たかっただけなのだが。

 この様子からして、何かお返しをお願いしないと綾香は納得しそうになかった。なので、一輝はお返しは何がいいのかとその場で考え始めたが、直ぐに一つ思いついて。

「それなら、いつでもいいので今度、立花さんの手料理を僕に食べさせて下さい……その、彼女の手料理を食べるのは男の夢の一つなので」

 最後は少し恥ずかしくなって声を少し小さくしつつも、一輝ははっきりとそう言って、自分の思いを口にした。

 そして、そんな一輝のお願いを聞き終えた綾香は、

「分かりました、それなら今度、私の手料理を佐藤くんに食べさせてあげますね」

 その言葉を聞いて納得したのか、今度は素直にそう言った。なので、

「えっと、それなら立花さん、今度こそこのぬいぐるみを受け取ってもらえますか?」

 一輝が改めてそう言うと。

「ええ、ありがとうございます、佐藤くん」

 彼女は満面の笑みを浮かべてそう言うと、一輝の手から犬のぬいぐるみを受け取って、それを大事そうに両手で抱えて抱き締めた。そして、

「佐藤くんに初めてもらえたプレゼントなので、これからはこの子のことを佐藤くんだと思って大切にしますね」

 綾香は唐突にそんなことを言った。そして、そんな言葉を聞いた瞬間、一輝は綾香に抱き締められているぬいぐるみと自分を重ねて見てしまい。

 綾香に背後から力いっぱい抱き締められている自分の姿を想像して、その瞬間、思わず恥ずかしくなり。

「……その、それはもう立花さんのモノで、立花さんがどう使おうと僕に口出しする権利はないので、立花さんの好きなように使って下さい!!」

 一輝は綾香から視線を逸らしつつ、少し早口でそう言うと。

「あっ、佐藤くん、もしかして照れていますか? もう、それくらいのことで照れるなんて、やっぱり佐藤くんは可愛いですね」

 綾香は少し可笑しそうに笑いながら一輝に向けてそう言った。しかし、

「でも、すみません、佐藤くん」

 その後、唐突に綾香がそう言って謝ったので。

「えっと、何がですか?」

 一輝は何のことか分からず、そう質問をすると。

「この子のことです、本当は佐藤くんからのプレゼントなので私は素直に受け取るべきだったのでしょうが、金銭面のことに関しては、私はどうしてもきっちりしていなと気が済まないタイプなので、佐藤くんに余計な気を遣わせてしまいました……もしかして、少し面倒くさい女だとそう思われてしまいましたか?」

 綾香は少し心配そうな口調でそんなことを聞いて来た。なので、

「いえ、そんなことはないです!! 寧ろ僕からすれば、何でも男性に奢ってもらおうとする女性より、立花さんみたいに自分の分の料金はきちんと自分で払う女性の方がしっかりして魅力的に見えます。それに、将来結婚するのなら、立花さんみたいに金銭面できっちりしている女性がいいと思いますし、そういう意味でも、やっぱり立花さんはとても素敵な女性だと思うので、それくらいのことで僕は立花さんのことを嫌いにはなりません!!」

 一輝は彼女のことを安心させるために口早にそう言った。そして、その言葉を聞き終えた綾香は、

「……もう、佐藤くん、さすがにプロポーズをするのは幾ら何でも気が早すぎますよ。そういうのは、せめてお互いが社会人になってきちんと自立をしてからにして下さい」

 綾香は少し恥ずかしそうな表情を浮かべてそんなことを言った。しかし、

「えっ……あっ、はい、そうですよね、すみません」

 いきなりそんなことを言われて一輝は話に付いて行けず、取りあえずそう言って謝った。

 ただ、このまま彼女と会話を続けていると、何処かとんでも無い所まで話が飛んで行ってしまいそうな気がしたので。

「えっと、取りあえず次はプリクラを撮りに行きましょうか?」

 話題を変えるために、一輝がそう提案をすると。

「ええ、そうですね、そうしましょう」

 先程の一輝との会話で機嫌をよくした綾香は、嬉しそうに微笑みながら犬のぬいぐるみを大事そうに抱えてそう言った。

 そして、2人はそのままゲームセンター内を移動して、プリクラの前へとやって来たのだが、先に誰かが入って居たようなので、2人はプリクラの機械の前で立ち止まって順番を待っていた。なので、

「因みに立花さんは、プリクラを撮ったことがあるのですか?」

 一輝が綾香にそう質問をすると。

「いえ、ありません、何度も言っていますが、私は小学生の時以来、ゲームセンターを訪れたことはなかったので。因みに、佐藤くんはプリクラを撮ったことはありますか?」

 綾香はそう言って、一輝にそう聞き返して来たので。

「いえ、僕もプリクラを撮ったことはないですよ、ゲームセンターには偶に颯太に連れて来られていましたが、プリクラを撮る機会は無かったので」

 一輝はそう言って、綾香の質問に答えた。すると、

「本当、佐藤くんは斎藤くんと仲がいいのですね。でも、そんなに仲良しなら、斎藤くんと一緒にプリクラを撮ってもよかったのではないですか?」

 綾香はそんなことを言った。なので、

「少し前に何処かで、プリクラは男だけでは入れないという話を聞いたような気がするのですが、そんなことはないのですかね? ただ、仮に男だけで入れるのだとしても、颯太と2人でプリクラを撮るのは普通に嫌ですけどね」

 一輝はそう答えると。

「えー、何故ですか? 仲のいい女の子同士でプリクラを撮ったという話を私は割とよく耳にしますよ」

 綾香はそんなことを言ったので。

「いや、仲のいい女性同士でなら僕も分かりますが、男2人でプリクラを撮るなんて、何と言いますか、ちょっとキモくないですか?」

 一輝はそう言うと。

「そうですか? 私はそんなことは無いとそう思うのですが」

 綾香はそう言った。そして、2人がそんな会話を続けていると、撮影を終えたカップルらしき男女がプリクラの機械の中から出て来た。そして、

「それにしても湊くん、最初のポーズは変だったよ」

「それを言うなら紬だって、2番目にしていたポーズはないだろ」

 そんな会話をしながら、2人は落書きコーナーへと向かって行った。なので、

「それじゃあ、立花さん、僕たちも行きますか」

 一輝はそう声を掛けたが。

「……」

 どういうわけは、綾香は何かを考えこんでいるようで、返事をしなかった。なので、

「えっと、立花さん?」

 一輝が改めてそう声を掛けると。

「えっ、あっ、はい、何でしょう?」

 綾香は慌ててそう返事をした。なので、

「えっと、僕たちの番が来たのでプリクラの機械の中に入ろうと思うのですが、いいですか?」

 一輝が改めてそう質問をすると。

「ええ、勿論です」

 綾香はそう言ったので。

「それじゃあ行きましょう、立花さん」

 一輝はそう言って歩き出そうとした所。

「分かりました……あの、佐藤くん」

 綾香は何か言いたそうに、一輝にそう話しかけて来たので。

「ええ、何ですか?」

 一輝がそう聞き返したのだが。

「……いえ、やっぱり何でもありません、私たちも行きましょう」

 綾香はそう言ったので、2人はそのままプリクラの機械の中へと入った。

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