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第16話 立花綾香の独り言②

 その後、家に帰った山下夏月は自分の部屋に入ると帽子を取ってから後ろ髪をポニーテールに結んでいたゴムを解いて、眼鏡を外して立花綾香に戻ると。

「やっぱり佐藤くんは私には気付いてくれないのですね……まあ、格好もバレないように工夫していますし、普段より高い声で喋っているので、仕方がないのかもしれませんが」

 綾香は少し不安そうな口調でそう言った。どうやら一輝は山下夏月と立花綾香が似ていると思い始めているようだが、まだその正体に気付く様子は無かった。

 しかし、綾香としても出来れば一輝に気付いて欲しいという思いが強く、自分から正体を明かすつもりは今のところ無かった。そして、

「まあでも、焦らなくてもいいですよね。あの様子だと近いうちに佐藤くんの方からデートに誘ってもらえそうですし、そんな風に一緒に過ごしていたらきっと佐藤くんには私と山下夏月が同一人物だと気付いて貰えますよね?」

 綾香はそう言って、先程まで一緒に過ごしていた自分の彼氏に向けて呼びかけた。すると、

「プルルルルル」

 そんな綾香の問いに答えるように、彼女のポケットに入っていたスマホから着信音が響いた。なので、綾香はもしかしてと思い、ポケットからスマホを取り出して画面を見てみると。

「……もう、タイミングがいいのですから」

 綾香はそう呟くと、画面に表示されている通話ボタンを押して、その電話に出た。すると、

「あっ、もしもし立花さん、その、今時間は大丈夫ですか?」

 電話先の一輝がそう言って、綾香に話しかけて来たので。

「ええ、大丈夫ですよ、それよりこんな時間にどうしたのですか?」

 先程の会話で何となく一輝が言いたいことは分かっているのだが、綾香はそう質問をした。すると、

「その、立花さんは明日、何か予定はありますか?」

 一輝は綾香にそんなことを聞いて来た。なので、

「明日ですか? いえ、特に予定はありませんが、もしかして、デートのお誘いですか?」

 綾香はそう言った。すると、

「……ええ、そうですが、よく分かりましたね」

 一輝はそう答えた。なので、綾香は何と答えるべきか少し考えてから。

「そうですね、分かったというよりは私がそろそろ佐藤くんにデートに誘って欲しいなと思っていて、そんな時に佐藤くんから電話があったので、もしかしたらと思っただけです。ただ、明日いきなりデートに誘われるとは思わなかったので、出来ればもう少し早く教えて欲しかったですね」

 綾香はそう言った。すると、

「それはそうですよね、すみません、急なお誘いになってしまって」

 一輝は申し訳なさそうにそう言った。なので、

「いえ、そんなに気にしないで下さい、私としても佐藤くんにデートに誘ってもらえたのは嬉しいですから、それで、明日は何処に何時に集合すればいいのですか?」

 綾香は一輝を励ましつつも、そう言って話を先に進めた。すると、

「ああ、そうですね、明日の集合場所は……」

 そう言って一輝は綾香に向けて明日の予定を説明し始めた。そして、

「成程、分かりました。それでは明日はその時間に佐藤くんとのデートに向かうことにしますね」

 一輝の説明を聞き終えた綾香はそう言った。すると、

「ええ、お願いします……ところで立花さん、少し聞きたいことがあるのですが、いいですか?」

 一輝は綾香にそんなことを言った。なので、

「ええ、いいですよ、何ですか?」

 何を聞かれるのかは何となく理解しつつも、綾香はそう言った。すると、

「……その、立花さんは漫画やアニメに付いてどういった印象を持っていますか?」

 一輝は綾香が予想して来た内容の質問をぶつけて来た。そして、その質問に対して綾香は、

「漫画やアニメですか? そうですね、漫画はあまり読みませんが、アニメは割と好きで、休日の暇な時にはよく観ていますよ」

 オタク趣味を持っている一輝を安心させるために、綾香は正直にそう答えた。すると、

「えっ、そうなのですか? 何と言いますか、少し意外でした」

 一輝は少し驚いた様子でそんなことを言ったので。

「私がアニメを観ていたらそんなに可笑しいですか?」

 綾香は彼氏に対して少し意地悪な質問をした。すると、

「あっ、いえ、そんなことはないです!! ただ、立花さんはそういう文化とは縁がない生活を送っていそうだなと、僕が勝手にそう思っていただけです!!」

 一輝は慌ててそう言った。なので、

「そんなことは無いですよ、私は幼い頃から面白い物語の世界に浸るのが好きで、有名なアニメ作品は一通り見て育ちましたよ。ただ、私が本格的に色々なアニメ作品を見るようになったのは去年からなので、アニメに関して詳しいのかと聞かれたら、そういうわけではないですけどね」

 綾香はそう答えた。そして、去年から彼女が本格的にアニメを観るようになったのは、山下夏月でいる時に一輝から色々と面白いアニメに関する情報を教えてもらったからなのだが。

 そのことは今はまだ秘密にしておくことにした。すると、

「そうなのですね……因みに、観ているアニメはやっぱり少年キック系の作品ですか?」

 一輝はそう質問をした。アニメを観ていると言っても、観ているのはツーピースや鬼殺の刀などの有名作品だけでオタクっぽい感じのするアニメは見ないという人も世の中には多いため、一輝は綾香がどの程度の作品を観ているのか知るために一輝はそう質問をした。

 そして、そんな一輝の質問の意図を読み取った綾香は、

「そうですね……私はあまりアニメには詳しくないので、そういった有名な作品を観ることが多いですが、それ以外だとゼロレクイエムとかアイドルスターとか一から始める異世界生活とか、ネットでの評価が高い作品をよく見ていますね。ただ、やはりどれも有名な作品ばかりで、本当にアニメが好きな方からすればにわかだと言われても仕方ないと、そう思ってはいますが」

 少し恥ずかしそうにそう言った。すると、

「いえ、それでいいと思いますよ、アニメを本格的に見始めたのが去年からならまだそこまでアニメを観られていないのも無理はないと僕は思いますし、そういうことなら、僕のお勧めのアニメを立花さんに教えてあげて、その感想を聞けたらいいなと僕はそう思いますから!!」

 一輝は綾香が自分と同じオタク趣味を持っていると知って嬉しかったのか、普段よりも早口でそう言った。すると、

「ふふっ、佐藤くん急に元気になりましたね、私が佐藤くんと同じ趣味を持っていると分かってそんなに嬉しかったのですか?」

 一輝は綾香に自分の心情を正確に当てられた上、そんな突っ込みを受けてしまった。なので、

「あっ、すみません、急にテンションを上げてしまって……その、もしかして少し引きましたか?」

 一輝が少し不安そうな様子でそう聞いてきたので。

「いえ、そんなことは無いですよ、でも、佐藤くんがそんなにアニメが好きなのでしたら、明日のデートが終わってその次のデートは、佐藤くんを私の家に呼んで一緒にアニメを観る、お家デートにしてもいいかもしれませんね」

 綾香は一輝を安心させるようにそう言いつつも、一輝にばかりデートプランを考えてもらうのも悪いと思ってそんな提案をした。すると、

「お家デートですか……」

 そう言って、一輝が少しの時間黙った。なので、

「……佐藤くん、今エッチな想像をしたでしょう?」

 綾香がそう言うと。

「えっ!? あっ、いえ、そんなことは!?」

 一輝は慌ててそう言った。なので、

「もう、駄目ですよ、佐藤くん、そういうのは私たちにはまだ早いと思います」

 綾香は少し恥ずかしそうに頬を染めてそう言った。すると、

「まだ!?」

 スマホ越しで一輝は驚いた様子でそう言った。しかし、綾香としてもこういった話題の話をするのはとても恥ずかしいので。

「……すみません佐藤くん、お母さんに呼ばれたので、そろそろ電話を切りますね」

 咄嗟にそんな嘘を言うと。

「えっ? あっ、はい、分かりました」

 突然のことに一輝は少し困惑しつつも一輝はそう返事をした。なので、

「えっと、それでは失礼します……その、明日のデート楽しみにしています」

 最後にそう言って、綾香は静かに通話を終えた。そして、

「……もう、佐藤くんのせいで変な想像をしてしまったじゃないですか」

 顔を真っ赤に染めながら、綾香は小さい声でそう呟いた。そして、

「でも、佐藤くんとこの先、順調に進んで行ったら、いずれはそういう時が来るのですよね……」

 そう言って、綾香は少しだけそうなった時のことを少しだけ想像してみた。しかし……

「っつ、駄目です佐藤くん!! そんなに激しく求めて来ては!! ……こほん、やっぱり暫くの間は、私たちは健全な関係でいた方がよさそうですね」

 綾香はそう言って、自分で話を広げておいて勝手に自己解決を図った。ただ、その綾香の思わせぶりな発言のせいで、現在進行形で悶々とした時を過ごしている健全な男子が約一名存在しているのだが。

 当の本人である綾香はそのことを知る由もなかった。

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