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第14話 一日の終わり

 そして、一輝は少し考えた後。

「えっと、先程の言葉が僕なりの支えのつもりだったのですが、あれだと足りませんでしたか?」

 綾香にそう質問をすると。

「あの言葉はとても嬉しかったのですが、残念ですがあの言葉だけだと、私の傷ついた心を完全に癒すことはできません。なので、佐藤くんはもっと優しくて、でも力強い感じで私のことを励まして下さい」

「優しくて力強い感じで……」

 そう言われて一輝が頭を働かせると、何故か先程、颯太から送られて来た、

「キスとかその先まで行っちゃえよ!」

 かなりアレな言葉が頭を過ぎった。しかし、

(いや、何を考えているんだ、僕は!! まだまともに手を繋いだこともないのに、いきなりそんなことを出来るわけがないだろ!!)

 そんな邪念を振り払おうと、一輝は心の中で必死に叫んだ。

 そして、何とかそんな邪念は振り払えたものの、言葉を掛ける以外にどうやって綾香のことを励ませばいいのか、一輝には全く分からなかった。なので、

「えっと、具体的にはどうやって立花さんのことを励ませばいいですか?」

 情けないと自分でも思いつつも、一輝は綾香に正直にそう質問をした。すると、

「えっと、それはさすがに佐藤くんに考えて欲しいのですが……でも、そうですね、私は佐藤くんのことを全力で抱きして励ましてあげたので、佐藤くんにもそれくらいのことは、いえ、出来ればそれ以上のことを期待したいです」

 綾香はそんな爆弾発言を放った。そして、そんな彼女の言葉を聞いた途端、

「ほら一輝、これはもうキスをしてくれって言っているようなものだぜ!!」

 一輝の頭の中にはかなり悪い表情を浮かべた、頭に角を生やして全身黒いタイツに身を包んだ、悪魔のような恰好をした颯太が現れた。しかし、

「そんなわけあるか!! 僕が知っている立花さんはもっと清楚でお淑やかな人なんだ!!」

 一輝は心の中で颯太の幻影に向けてそう叫んだ。すると、

「……佐藤くん」

 今度は白い服で身を包み、頭に白い輪を付けた、天使のような格好をした、綾香の幻影が現れた。なので、

「見ていろよ、颯太!! 立花さんは見ての通り天使のような純粋な心を持った人なんだ!! ほら、立花さんも思うことがあれば遠慮なく言って下さい!!」

 一輝は勝ち誇ったように、頭の中に浮かんだ彼女にそう語りかけたのだがが。

「その……佐藤くんは私とはキスをしたくはないのですか?」

「なん……だと!?」

 天使の姿をした綾香にまでそんなことを言われて、一輝の思考は完全に止まってしまった。すると、

「ほら一輝、立花さんもああ言っているんだし、これはもうやるしかないだろ?」

 悪魔の格好をした颯太も追い打ちをかけるようにそんなことを言った。しかし、

「……そんなはずはない!! これは僕の欲望が生み出した僕にとって都合のいい妄想だ!! 現実の立花さんはそんなことはまだ望んでいないはずだ……よし!!」

 一輝は心の中でそう言って自分のそんな邪な妄想を振り払うと。

「立花さん!!」

「あっ、はい!!」

 一輝がそう言うと、綾香はそう返事をしたので。

「えっと、その……失礼します!!」

 一輝はそう言うと、ベンチに腰掛けている綾香に向けて手を伸ばし、それを見て綾香は覚悟を決めたように目を瞑った。そして、

「ポフッ」

「……え?」

 そんな音を聞いて綾香が目を開けると、そこには自分の頭の上に手を置いている一輝の姿があった。そして、

「えっと、その……元気を出して下さい、立花さん」

 一輝はそう言うと、緊張しているのか少しぎこちない手つきで彼女の頭を撫で始めた。すると、

「……私は佐藤くんのことを抱き締めて励ましてあげたのに、佐藤くんは私の頭を撫でてくれるだけなのですか?」

 綾香は少し不満そうな口調でそう言った。しかし、

「今はこれで勘弁してください、僕にとって立花さんの体に触れるということは、立花さんが僕の体を抱き締めてくれることくらいハードルが高いことなんです」

 一輝は苦笑いを浮かべてそう言った。すると、綾香は一輝から少し顔を逸らして。

「私だって、佐藤くんに抱き着くのには相当勇気が必要だったのですよ……でも」

 そこまで言うと、綾香は改めて一輝の顔を見ると。

「今はこれくらいで勘弁してあげます、なので、佐藤くんは私が満足するまで私の頭を撫でていて下さいね」

 少し照れ笑いを浮かべながら、綾香はそんなことを言ったので。

「分かっていますよ、それくらいのことはさせて下さい」

 一輝もそう言って、それから暫くの間、彼女の頭を撫で続けた。

 そして、その後は何とか機嫌を直してくれた綾香と共にビリヤードやダーツをして残りの時間を楽しんだ。そして、



「立花さん、今日は付き合ってくれてありがとうございました」

 18時過ぎ、日も沈んで少しずつ辺りが暗くなっている中、最寄りの駅の出口に付いた一輝は隣を歩いていた綾香に向けてそう言った。すると、

「いえ、私の方こそ誘って頂いてありがとうございました。途中で斎藤くんが抜けてしまったり、私も佐藤くんもお互いに情けない所を見せてしまったりと、色々とハプニングもありましたが、それでも今日は楽しかったです」

 綾香はそう言ったので。

「それならよかったです……その、立花さん」

 一輝がそう言うと。

「はい、何ですか?」

 綾香はそう聞き返して来たので、一輝は一呼吸した後、彼女の目をしっかりと見ると。

「……その、今度は僕と2人で何処かに出かけませんか?」

 一輝はそう言った。これくらい恋人通しなら普通はもっと軽く誘えるのかもしれないが、一輝は内心、断られたらどうしようと、彼女に告白した時以上にドキドキしながらそう言った。

 そして、そんな一輝の言葉を聞き終えた綾香は、

「えっと、それはもしかしてデートのお誘いですか?」

 ストレートにそんなことを聞いて来た。なので、一輝はどう答えようか少し悩んだが、変に誤魔化す必要も無いと思い。

「ええ、そうです。今日は颯太も一緒でしたが、今度は僕と立花さんの2人だけで何処かに遊びに行きませんか?」

 一輝は少し緊張しつつもそう言った。そして、そんな言葉を聞いた綾香は、

「ええ、勿論いいですよ、それなら予定が決まったら今回のように電話で教えて下さい」

 一輝に向けて笑顔を向けてそう言った。なので、

「分かりました、それなら予定が決まったら、また立花さんに電話します!!」

 緊張から解放された一輝は笑顔を浮かべてそう言った。すると、

「ええ、分かりました、ただ、佐藤くん」

「何ですか?」

「私をデートに誘うだけでそこまで緊張しなくてもいいですよ、私は佐藤くんの彼女なので、佐藤くんの望むことはなるべく叶えてあげるつもりですから」

 綾香は笑顔を浮かべてそう言った。なので、

「立花さん……ありがとうございます、ただ、それだけだと不平等なので、立花さんも僕にして欲しいことがあったら遠慮なく言って下さい。全て叶えることは出来ないかもしれませんが、それでも僕に出来ることがあれば全力でやらせてもらいます!!」

 一輝も綾香に向けてそう言った。すると、

「分かりました、それなら佐藤くんにして欲しことが出来たら、私は遠慮なく言わせてもらいますね」

 綾香はそう言葉を返した。すると、

「ブロロロロ……」

 そんな音を立てて一台の車が駅の駐車場に入って来た。すると、

「あっ、すみません、佐藤くん、迎えの車がもう来たみたいです。なので、後の話は夜の電話でお願いします」

 綾香はその車を見るとそう言ったので。

「分かりました……えっと、さようなら、立花さん」

 一輝は綾香に向けてそう言うと。

「ええ、さようなら、佐藤くん」

 綾香も一輝に手を振りながらそう言って、車の方へと歩いて行った。

 こうして、多少のハプニングはありつつも、今日のお出かけは無事に終えることが出来たのだった。

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