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Force of the JUSTICE  作者: コーヒー微糖派
5th day:The true emperor of the underworld
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地下の格闘世界

「ダハハハ! 驚いたかぁ? ここは真帝会が経営してた、地下闘技場のリングだぁ!」

「地下闘技場……だって?」


 俺達四人の前に現れた西原は、高笑いをしながらこの場所について説明してきた。

 地下闘技場――噂程度に聞いたことはあるが、ここは設備も広さも段違いだ。

 まさかこれほどまでに大規模なものが、この日本に実在するとは思わなかった。


「だけど『経営してた』ってことは、今はやってないってことで?」

「あぁ。異界能力者(エリアンアビリター)がのさばるようになってから、ここも監視の目を潜り抜けるのが難しくてなぁ。今はこうして、休業中だぁ。裏で膨大な賭けもやってたから、下手に経営なんてできやしねぇ」


 西原も語ってくれるが、この巨大闘技場も現在は営業してないらしい。

 これだけの規模を誇っているならば、その収入は膨大であったに違いない。

 それを異界能力者(エリアンアビリター)の出現で表に出せないようになれば、真帝会にも大打撃になったのは想像できる。


「姉村所長と風崎刑事も、ここのことは知ってたんですか?」

「私も色々と網は張ってるからね。そのことについては、いつもの『秘密は女性を美しくする』ということで理解願うよ」

「俺もここを検挙しようとしたことはあるんだが、どうやら財政界のお偉いさんも使ってるらしくてな。俺みてえな一介の刑事じゃ、手出しできねえんだよ」


 ここの存在をあらかじめ知っていた姉村所長と風崎刑事も、俺が尋ねるとその理由を簡単に語ってくれた。

 姉村所長の方はいつもの笑顔と誤魔化し文句だが、風崎刑事は眉をひそめて頭をかきながら苦言を呈している。

 警察でも手出しができない真帝会の裏側。データベースの改ざんだけでなく、こういうところにも眠っていたのか。


「ここの場所についてはある程度分かった。だけど、俺達が今回ここに来たのは、そんな内情を聞くわけじゃない。ここにいるのはあんただけか?」

「急かすなぁ、黒間ぁ。まぁ、オレも事情は聞いてるぜぇ。てめぇらが会いたがってる、鬼島のカシラからよぉ」


 この闘技場に俺達を呼び出した理由は不明だが、そもそもこちらの目的はこの場所と関係ない。

 俺はその目的のためにも、西原に話を進めるように促した。


「なんでも、異界能力者(エリアンアビリター)を殺して回る犯人を追ってるんだってなぁ? こっちからしてみれば、異界能力者(エリアンアビリター)は目の上のタンコブだから、その犯人が消して回ってくれた方が都合がいいんだがなぁ」

「そんなことを言ってると、今度は異界能力者(エリアンアビリター)が殺人犯一人のために戦争でも仕掛けるよ? あいつらにはそれができるだけの力がある。そんなことになれば、真帝会はますますヤバいことになるでしょ?」

「ほぉう? 確かに戦争でもされたら、真帝会はたまったもんじゃねぇなぁ」


 真帝会若衆である西原からしてみれば、殺人犯よりも異界能力者(エリアンアビリター)の存在の方が目障りだ。それは俺も理解できる。

 そのことも承知した上で、俺は西原がこちらの目的に興味を持つように話題を向けてみる。


異界能力者(エリアンアビリター)もこの国の治安における実権を握っているとはいえ、組織としてはまだまだ不完全。そこに連続殺人犯なんて脅威が加われば、混乱は必至。そんな力だけが肥大化した不完全な組織が暴走すれば、真帝会はもちろん政界の大物――フィクサーみたいな人達だって迷惑するはずだ」

「ダハハハ……! 黒間ぁ、てめぇも中々口が回るなぁ。安心しなぁ。今回もオレは鬼島のカシラより、直接命令を賜ってらぁ。この場においてオレの一存だけで、てめぇらを追い返す真似はしねぇさぁ……!」


 俺は屁理屈ともとれる文言を交えながら、西原の気持ちをこちらとの交渉に向けられるように仕向ける。

 西原もその話を聞いて、ある程度は満足してくれたように見える。もっとも、西原も最初から交渉自体は行うつもりだったらしい。


 ――俺達が探していた可能性。

 異界能力者(エリアンアビリター)、在日米軍、殺人犯。

 それらを結ぶ真帝会という糸が、今目の前まで迫っている。


「それで、俺達の目的はハッキリ言ってあんたじゃない。真帝会のナンバー2――若頭の鬼島 炎はどこにいる?」

「そう焦るなよぉ。鬼島のカシラは真帝会若頭――ナンバー2とはいえ、現在においては事実上のトップだぁ。そう簡単に出てくるお人じゃねぇんだよぉ」


 俺は焦る気持ちを抑えきれず、目的の人物である若頭の鬼島の居場所を尋ねる。

 だが、事は簡単に及んでくれない。現存する極道組織の事実上のトップとなれば、そうなるのも仕方がない。


「姉村さんと風崎刑事に関しては、鬼島のカシラもある程度の信用は置いてるみてぇだぁ。あんたら二人に関しては、話を聞いてやってもいいとカシラから聞いてるぜぇ」

「姉村さんと風崎刑事は大丈夫なの? そんなに信頼されてるの?」

「私に関しては、まあ、異界能力者(エリアンアビリター)を敵に回すような仕事の代表者だからね」

「俺については商売敵としての付き合いってところか。鬼島の奴、本当にすかしたことばっかり言いやがる」


 西原曰く、姉村所長と風崎刑事の二人だけならば、素直に姿を現してくれるようだ。

 だが、今回は俺と白峰も同席している。ここまで関わった以上、俺達も同席しないわけにはいかない。


「つまり、俺と白峰のことを鬼島も認めれば、本人も姿を現してくれると」

「そういうことだぁ。そして、それを試すための代理人として、オレが選ばれたってわけだぁ」


 俺も話の流れから予想した通り、鬼島に会うにはまず西原を納得させる必要があるとのこと。


 ――ここに来て、俺は待ち合わせ場所にこの地下闘技場が選ばれた理由を理解する。

 相手は真帝会というヤクザ。普通の話し合いをするはずもない。

 そんな俺の考えに同調するように、西原はゆっくりとリングの中央に歩を進める――




「さぁ、リングに上がれぇ、黒間ぁ! この俺に勝てれば、鬼島のカシラに会わせてやるよぉお!!」




 ――想像通り。鬼島の代理人である西原は、拳で白黒つけるつもりだ。

 言ってしまえば実にヤクザらしい、なんともシンプルな提案だ。


「そ、そんな!? 黒間君、危ないよ! だってあの人、第一世代の異界能力者(エリアンアビリター)を一人で叩きのめしちゃうほど強いし……!?」

「……いや。ここまで来たら俺もやるしかないな。荒事に巻き込まれるのも覚悟の上だ。やってやるよ……!」

「く、黒間君……」


 俺は白峰の不安を振り払うように、リングの中央へと向かう。

 風崎刑事に試された時から、同じようなことが続くことは予想できていた。


 ――ヤクザの流儀に従う羽目になるが、俺はここで西原を倒す。

 俺よりも数段格上の相手だが、この道を避けては通れない。


「ルールは簡単だぁ。てめぇが一度でも俺に膝をつかせたりすれば、それでそっちの勝ちだぁ。そっちのセコンドに白峰って姉ちゃんがついても構わねぇ。言うなれば、二人がかりでオレを倒せばいいのさぁ」

「かなり俺に好都合な条件だな。……まあ、それでも勝てる自信があるから、こんな条件を突きつけたんだろうよ」


 俺はリングの中央で西原と構え合う。

 西原が出した条件的に見れば、俺の方が圧倒的に有利だ。

 それでも、西原は俺が簡単に倒せる相手じゃない。


「わ、わたし、どうすればいいの? 黒間君、本当に大丈夫?」

「大丈夫だよ。白峰ちゃんもセコンドに入って応援すれば、ツッ君も気合が入るよ」

「どのみち、俺と姉村の姉ちゃんは介入できねえ。後はお前達若い二人でやれ。こうなること自体は、黒間も予想はしてただろ」


 リングの外では怖気づく白峰に対し、姉村所長と風崎刑事が声をかけている。

 白峰のセコンドが戦術的に役に立つとは思えないが、応援してくれるなら精神的にはありがたい。




 ――相手は一度戦った時、俺のトドメが決まらないほど頑丈な男。

 それでもこの先に進むと決めた以上、俺が引くこともない。




「埠頭で着かなかった決着を、ここでもう一度やり直そうじゃねぇかぁあ! 黒間ぁああ!!」

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