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Force of the JUSTICE  作者: コーヒー微糖派
2nd day:The dark leap of the driven clan
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限界の逃亡

「チィ! 異界能力者(エリアンアビリター)の援軍だとぉ!? 仕方ねぇなぁ。こいつらを始末してる時間もねぇかぁ」

「は、早くトラックに乗ってくだせえ! 逃げやしょう!」


 俺が西原にトドメを刺される直前、子分の男が慌てて駆け寄って来た。

 どうやら異界能力者(エリアンアビリター)の援軍がこの埠頭に向かっているらしく、これ以上西原達にも時間の余裕がなくなったようだ。


「命拾いしたなぁ、兄ちゃん。ここまで騒ぎなっちまったら、オレも口封じの意味がねぇ」

「そ、そりゃ……助かった……」

「オレらは異界能力者(エリアンアビリター)に見つかるとヤバい身だぁ。流石に増援の相手までは手が回らねぇ。まぁ、機会があったら兄ちゃんとはまた会えるかもなぁ。あばよぉ!」


 結果として俺も見逃してもらえることになり、西原達は俺に少しだけ言い残すと、トラックに乗って埠頭から逃げていった。

 このタイミングで異界能力者(エリアンアビリター)の援軍が来てくれたのは幸運だったが、俺も早くこの場を離れた方がよさそうだ。


異界能力者(エリアンアビリター)にこんなところを見つかったら、何を聞かれるか分かったもんじゃない……!」


 西原の脅威から逃れたとはいえ、今度は異界能力者(エリアンアビリター)の援軍がここにやってくる。

 今俺の近くには西原に気絶させられた異界能力者(エリアンアビリター)の二人がいるし、この二人も本来は西原を捕まえる任務でここに来ている。

 そんな現場に一般人の俺だけ残っていれば、質問攻めどころか身柄を拘束されることだろう。

 だから早急にこの場から離れたいのだが――


「くっそ……。体が言うことを聞いてくれねえ……」


 ――俺は体を起こすことさえできない。

 最後に西原からもらった一発で脳震盪を起こし、足元がフラついて仕方ない。

 どうにか這ってでも逃げ出そうとするも、視界もぼやけてよく見えない。


「これ、マジでヤバいな……」


 このまま逃げられずに異界能力者(エリアンアビリター)に身柄を拘束されるなんて、まっぴらごめんだ。

 それでも今の俺には、ここからまともに逃げ出す手段は――



 キキーッ!



「ツッ君! 早く乗って!」

「あ、姉村所長……!?」


 俺が諦めかけていたその時、目の前に赤いセダンが一台止まった。

 この車は俺もよく知っている。姉村所長の車だ。

 その姉村所長自身も運転席の窓を開けて顔を出し、後部座席の扉を開けて俺が乗り込めるようにしてくれている。

 よく分からない状況だが、俺を助けに来てくれたことだけは分かる。

 俺は体をフラつかせながらも、気力を振り絞って所長の車の後部座席へと飛び込んだ。


「白峰ちゃん! ツッ君の容態を確認して!」

「は、はい! 黒間君、大丈夫!?」

「し、白峰もいるのか? な、なんで?」

「わたし、黒間君に逃がしてもらった後、姉村さんに連絡した! それで来てもらった!」


 車の後部座席には俺が逃がした白峰も乗っており、俺を膝枕しながら頬の怪我を確認してくれる。

 どうやら白峰はあの後、姉村所長に助けを求めてくれたようだ。そしてこうやって車で助けに来てくれた。


「す、すいません、所長。俺のために――」

「今はあんまり喋らないで! 異界能力者(エリアンアビリター)が近づいてるし、少し撒いてから治療に専念できる場所に向かうよ!」


 俺は礼を言おうとしたのだが、姉村所長は車の運転に集中しているのか、話せる余裕もなさそうだ。

 横になりながら車の揺れから感じる限り、姉村所長はかなり入り組んだ道へ車を走らせている。

 おそらくは異界能力者(エリアンアビリター)の増援を警戒し、追って来れないように進路を選んでいるのだろう。


「し、白峰もありがとう。助かった……」

「わ、わたしこそ、黒間君に逃がしてもらえたし、これぐらいは当然だから!」

「そ、そうか……。悪い……安心したら、眠くなって……」

「え、え? 黒間君? ね、ねえ!?」


 白峰にも礼を言おうとしたが、そこで俺の意識は遠のき始めた。

 あの西原とか言うヤクザはとんでもない馬鹿力だ。おかげで殴られた俺の脳にまでダメージが響いてる。

 俺は呼びかけてくる白峰の声を聞きながら、その膝の上で意識を手離した――





「う、うぅ……。あれ? ここは?」

「黒間君! よかった! 目が覚めた!」


 次に俺が目を覚ますと、白峰の顔が飛び込んできた。

 どうやら俺のことをずっと膝枕で介抱してくれたらしいが、場所自体は車内ではなくなったようだ。


 少し辺りを見回してみると、カウンター席と酒の並んだ棚が見える。どこかのバーだろうか?


「とりあえずは無事みたいだね、ツッ君」

「姉村所長……ここはどこでしょうか?」

「私行きつけのバーだよ。しばらくはここで異界能力者(エリアンアビリター)をやり過ごそうと思ってる」


 

 俺が不思議そうにしながら白峰の膝から顔を上げると、姉村所長が近くに寄って来た。

 そしてこの場所について説明してくれるのだが、こんな中々こじゃれたバーが所長の行きつけだとは、あの普段のずぼらな姿からは想像できない。




「お連れの方の意識が戻られたようですね」


 そんなことを思いながらソファーの上に体を座らせ直していると、また別の誰かが奥からやって来た。

 ワックスで整えられた髪型に眼鏡をかけ、キッチリとしたタキシードを着こなしたそれなりに歳のいった男。

 その男は姉村所長の前まで来ると、丁寧な言葉づかいで話し始めた。


「マスター、ごめんね。急にこんなことで押し寄せちゃって」

「姉村様にはごひいきにしていただいております。この程度のことでしたら、いくらでもお申し付けください」


 どうやらこのバーのマスターらしく、なんとも紳士的な態度で姉村所長にも接している。

 その様相はかなり渋く、いかにも紳士といった様子だ。


「お連れの方ですが、脳震盪を起こしていたようですね。ですがその様子を見る限り、もう大丈夫でしょう」

「助かりました。だが、俺もここに運ばれたことをどう説明すれば――」

「無理にお話しする必要はございません。常連である姉村様のたっての願いです。ワタクシも仕事柄、無理な詮索はしない主義ですので、お気になさらずに」


 そのマスターは俺がここに運ばれたことについても、深く言及しないでくれた。

 俺も『異界能力者(エリアンアビリター)に関する事件を追ってたら、西原というヤクザに襲われた』なんて説明、どうするべきか迷っていたので助かる。


 ――ただこのマスター、いくら常連の姉村所長の要望とはいえ、こうも簡単に俺のような知らない人間を匿うのもおかしな話だ。

 それに『仕事柄、無理な詮索はしない』と言っているあたりに、どうにも含みを感じる。

 もしかするとこの人も、西原とは別方向で裏社会に携わる人間なのかもしれない。


「目が覚めたところで悪いんだけど、ツッ君も何があったか話してくれないかな?」

「え? でも、ここだとマスターが――」

「ワタクシのことはお気になさらないでください。この店もすでに閉店の看板を出しており、これから誰かが来ることもありません。ワタクシは奥のカウンターで仕事をしておりますので、いないものだと思っていただいて結構です。ご安心ください。あなた方の話を漏らすような真似はしません。姉村様への信頼を損ないたくはありませんので」


 俺の意識も戻ったところで姉村所長が話を伺おうとするが、ここは俺にとっては見ず知らずのバーだ。

 そんなこともあって話しづらくはあったが、マスターは快く話に介入しないことにしてくれた。

 こうも姉村所長との信頼を重要視するあたり、やはりこのマスターにも裏がありそうではある。

 それでも姉村所長も信頼しているからこそ、ここに逃げ込むという選択をとった。その点を見れば俺も信頼してもいいのだろう。


「……分かりました。それじゃ、俺と白峰に何があったか、最初から説明しなおします」


 俺の頭もだいぶ調子が戻って来た。これならもう大丈夫だ。

 ソファーに腰かけながら、今日一日にあったことを姉村所長に話し始めた。

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