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Force of the JUSTICE  作者: コーヒー微糖派
2nd day:The dark leap of the driven clan
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Battle:真帝会若衆 西原 雷作

「くぅ……!? 見つかったか……!」

「ど、どうしよう……! 黒間君……!?」


 気絶した二人の異界能力者(エリアンアビリター)を拾いに来た西原に、俺と白峰は見つかってしまった。

 俺達はこの件に無関係だが、一部始終を見ていた以上、流石に西原が逃がしてくれるとは思えない。


「どこかで見た男と女だなぁ? 確か今日の昼だったかぁ? まあいい。悪いんだがオレらの仕事を見られた以上、タダで帰すわけにはいかねぇなぁ!」


 やはり、西原に俺と白峰を見逃すつもりはない。

 自らの裏家業を見られ、異界能力者(エリアンアビリター)を始末しようとする現場を見られたのだ。

 このままだと、俺も白峰もそこで気絶している異界能力者(エリアンアビリター)と同じ末路をたどってしまう――




「おぉい! ドラム缶を後二つ、追加で用意して――」

「逃げろぉ! 白峰ぇえ!!」

「え、え!?」




 ――そうさせないためにも、俺は子分に声をかけようとした西原に蹴りかかりながら白峰に大声で叫んだ。

 少しでも俺が西原の相手をし、その隙に白峰を逃がす。

 今の俺に余計なことを考えている余裕はない。とにかく白峰だけでも逃がすことしか思いつかない。


「で、でも! 黒間君――」

「いいから逃げろぉ! 俺も後で追いつくから、さっさと行けぇえ!!」

「わ、わわ、分かった!」


 俺は柄にもなく大声で叫び、必死に白峰に逃げることを促した。

 白峰もこの事態に動揺して余計なことを考えられなくなったのか、少し躓きながらも俺の言う通りにこの場から逃げ出してくれた。


「ほぉう? 彼女を守るために、一人だけ残ったってわけかぁ……!」

「別にそんなんじゃないさ。ただ、俺もあいつがいると戦いづらいからな……!」


 そして俺が蹴りを放って意識を逸らさせていた西原だが、左腕で軽々とガードしている。

 さっきも異界能力者(エリアンアビリター)を二人とも一瞬で、それも力任せで叩きのめしたのだ。俺の蹴りなんて造作もないのは予想できる。

 それでも俺だってこのままドラム缶に詰められて、海に沈められる気なんて毛頭ない。

 一度側転しながら西原と距離をとると、いつもの拳法の構えをとる。

 西原に対してはあえて余裕のある態度を見せるが、そうでもしないと俺の心の方が折れそうだからだ。


 ――正直な話、内心ではビビりまくっている。

 西原はかなり喧嘩慣れしている。それこそあの殺人犯が殺しに慣れているのと同じようなものだ。

 単純に戦ったところで、俺に勝ち目はない。


「ダハハハ……! 中々気合の入った兄ちゃんじゃねぇかぁ。そういう奴は嫌いじゃねぇんだが、運が悪かったと思って、くたばっちまいなぁああ!!」


 しばらく俺の方を睨んでいた西原だが、右手の拳を硬く握りながら殴りかかって来た。

 異界能力者(エリアンアビリター)さえもねじ伏せるパワーを前に、ガードをしても意味をなさない。

 だから俺にできるのは回避優先。まずは西原の殴りかかった拳を横に交わしたが――


「ちったぁ腕に覚えがあるようだが、オレに言わせりゃまだまだ甘ぇなぁ!」

「裏拳!?」


 ――西原はすぐさま振りぬいた右腕をひるがえし、横に躱した俺へ裏拳を追撃として放ってくる。

 おまけに俺が避けた方向にはコンテナ。このままでは西原の裏拳と挟まれてしまう――


「くそっ!? 仕方ない!」



 ――タンッ ガァアン!!



「ほぉう? 身のこなしは軽いみてぇだなぁ」


 ――危うく西原の拳とコンテナに挟まれるところだったが、俺はコンテナを蹴って飛び上がり、西原の背後へと回り込めた。

 咄嗟の判断だったが、これぐらいの身のこなしなら、事務所の二階から壁を掴んで降りるのと変わらない。

 それ以上に俺が認識しないといけないのは、西原の拳が叩きつけられたコンテナの方だ。


 ――鉄製の頑丈なコンテナなのに、西原の拳でわずかにへこんでいる。

 もしも俺があの一撃を受けていれば、気絶じゃ済まないほどの威力。

 やはり、まともにやって太刀打ちできる相手ではない。




 ――こうなったら、少し小細工が必要になるな。




「あんた、とんでもない馬鹿力だな。何かヤバい薬でもやってんのか?」

「あぁ? やってねぇよぉ。これはオレが鍛え上げて手に入れた力だぁ」

「本当にそうなの? まるで異界能力者(エリアンアビリター)みたいに、人のレベルを超えてるように見えるけど?」

「ガキがぁ……! 調子に乗りやがってぇ……!」


 俺はまず、西原のことを徹底的に煽った。

 このとんでもないパワーは本当に薬でもやってそうだが、どうやら西原は本当に体を鍛えてこの力を手に入れたらしい。

 それならそれで、徹底的にそのことを疑って煽る。事実など関係なく、西原の自尊心を砕きにかかる。


「ほら。本当に鍛えた力だってんなら、それを使いこなして俺を捻りつぶすぐらい簡単でしょ? 早くやってみなよ?」

「こぉんのぉ……クソガキがぁああ!!」


 俺の挑発で怒り狂った西原は、その怒りに任せて両の拳をこちらへと襲わせてくる。

 かなり激しい拳のラッシュだが、西原はパワーはある分スピードは乏しい。これぐらいなら俺でも躱し続けられる。


「ちょこまか逃げんじゃねぇええ!!」

「くぅ!? 避けれてはいても、当たれば一発アウトだな……!」


 そうは言っても俺の劣勢は変わらない。西原のラッシュを躱すため、ただただ後ろに下がり続ける。

 なんとか落ち着きながら拳の軌道を見切ってはいるが、こんな攻撃をまともに食らえば終わりだ。

 それでも俺が後ろに下がり続ける以上、いずれ後ろには――




「くっ!? コンテナの山が!?」

「ダーハハハ! 終わりだぁああ!!」




 ――高く積み上がったコンテナが俺の後ろに立ちはだかってしまった。

 それをチャンスと見た西原は、高笑いをしながら渾身の右ストレートを撃ち込んでくる――




「……なーんてな。ここまでは予定通りだよ!」



 ――タンッ バギィインッ!!



 ――その西原の拳よりも先に、俺は積み上がったコンテナを蹴り、先程よりも高く飛びあがる。

 西原の身長よりも高く、完全に西原を見下ろせる高さまで、俺は自らの体を飛躍させる。


「なっ!? オレを嵌めやがったのかぁ!?」


 拳をコンテナへと振りぬいた西原も俺の目論見に気付き、顔を見上げる。


 俺の力じゃ、西原に真っ向勝負で勝てる気がしない。

 だから挑発して攻撃を誘い、俺を追い詰めたと油断させたところでこちらから決めにかかる。

 姑息な手だが、俺にできることはこれぐらいしかない。


「ウオラァアア!!」


 俺は落下の勢いを付けながら右肘を立て、西原の額へと狙いを定める。

 西原も俺を見上げているが、完全に虚を突かれたせいで隙だらけだ。

 俺も落下のタイミングを合わせ、渾身の力を込めて左手で右肘を押し込むようにその隙だらけになった額へと突き刺す――



 ズギャァアン!!



「うがぁ!? ……ぎぃ!?」


 ――そして俺の腕にも伝わる確かな衝撃。

 俺の右肘は確かに西原の額へと直撃し、食らった西原は動きを止めた。


「ハァ、ハァ……! これで何とかなっただろ……!」


 西原の背後に回り込むように着地した俺は、息を切らしながら地面に手をついた。

 ここまでの喧嘩なんて、異界能力者(エリアンアビリター)相手でもしたことがない。精神的にもギリギリだった。

 俺の渾身の一撃を食らった西原も、天を仰ぎながら固まっている。

 これで決まらなかったら、それこそ俺にもう打つ手は――




「やってくれたなぁ……このガキがぁああ!!」

「げぶっ!?」




 ――勝ちへの期待と不安を両方抱く俺だったが、西原はまだ倒れなかった。

 振り向きざまに左の拳を俺の頬へとめり込ませ、その衝撃で俺の体は大きく吹き飛ぶ。


「い、いてぇ……!」

「さっきのは流石のオレも効いたぜぇ……! だが、ただのガキが簡単にヤクザを相手どれるほど、世の中は甘くねぇんだよぉ……!」


 西原には確かなダメージが入っている。額を押さえ、よろけながら俺の方に近づいてくる。

 だが俺は逃げ出そうにも、さっきの一撃で脳を揺さぶられたのか、まともに立ち上がることもできない。

 そんな地面に倒れた俺に対し、西原はゆっくりと近づきながら見下ろしてくる。


「大した度胸のガキだったが、これで終わりだぁ。そこで寝てる異界能力者(エリアンアビリター)と一緒に、海の底に沈めてやるよぉ……!」


 西原は俺にトドメを刺そうと、その右手を天高く掲げ、今にも振り下ろそうとした――




「あ、兄貴! 大変です! 異界能力者(エリアンアビリター)の援軍が来やした!」

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