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Force of the JUSTICE  作者: コーヒー微糖派
2nd day:The dark leap of the driven clan
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異常なる気配

「あの連続殺人犯が近くにいるだって!?」

「う、うん。私の気配の魔法で感知できた。魔法に意識を集中させなくても、怖いぐらい気配を感じる……!」


 どうやら白峰は自身の持つ魔法の力で、例の異界能力者(エリアンアビリター)連続殺人犯の気配を感じ取ったようだ。

 俺には白峰や異界能力者(エリアンアビリター)の能力の詳細は分からないが、無意識化でも感じ取れるほどあの殺人犯の気配というのは異常なのだろう。

 それは俺の推測に過ぎないが、それでも白峰の様子を見るとそんな気がしてならない。


 俺も昨日、あの殺人犯と直接対峙したのだ。

 あの異常としか言いようのない憎悪のこもった目。人間としての力を磨き、異界能力者(エリアンアビリター)さえも容易く殺す力。


 ――もし本当にそいつが近くにいるのならば、早急に足取りを追った方がよさそうだ。


「白峰。あの殺人犯の正確な居場所は分かるか?」

「た、多分、あの病院……!」


 俺が殺人犯の居場所を尋ねると、白峰は近くにある病院を指さした。

 この辺りでは一番大きい病院だが、あそこも異界能力者(エリアンアビリター)と関係があるのだろうか?


「あの病院は異界能力者(エリアンアビリター)の関連施設か何かか?」

「ううん、違う。でも、あの病院から昨日と同じ、冷たく突き刺さるような気配を感じる……!」


 俺も白峰に確認をとってみたが、どうやら病院自体は異界能力者(エリアンアビリター)とは関係ないらしい。

 もしも関係施設だったら、それこそまた殺人事件が起こりかねない。

 異界能力者(エリアンアビリター)ならば普通の病院ではなく、専用の病院の世話になるはずだから、殺人犯の目的は異界能力者(エリアンアビリター)にはなさそうだ。

 いずれにせよ、俺も急いだほうがよさそうだ。


「白峰。お前はここで休んでろ。俺はちょっとあの病院に行ってくる」

「わ、わたしも行く! 黒間君のこと、心配だから!」

「いや、お前が一緒にいても危険なだけで――」

「行くって言ったら、行く! わたしの魔法なら、あの犯人の足取りも追える!」


 怯える白峰は置いておこうと思ったが、当人は頑なに俺について来ようとする。

 このまま粘られても時間がかかるだけだし、それに白峰も言う通り、こいつの魔法は犯人を追うのに役に立つ。


「分かった。ただ、今回は深入りはしない。遠くから様子だけ伺うぞ」

「う、うん!」


 俺も今回はあの殺人犯とやりあうつもりはない。そんなことをすればどうやっても負ける。

 俺はそのことを白峰にも言い聞かせ、その病院へと向かった。





「どうだ、白峰? あの殺人犯の気配は感じるか?」

「……ううん。もういないみたい」


 病院近くへとやって来た俺と白峰だが、どうやら一足遅かったようだ。

 白峰は目を閉じ、魔法で殺人犯の気配を追うことに集中しているようだが、すでに立ち去った後のようだ。


「病院で話を聞いてみるにしても、ろくな手掛かりもないしな……」

「黒づくめの怖そうな人が来てないか、受付で聞いてみる?」

「いや、そんなことを聞いて答えるわけないだろ……」


 どうにか手掛かりを得られないかと思ったが、そもそも殺人犯のことを病院の人間が知っているとも思えないし、知っていても第三者に話すわけがない。

 白峰の提案などもってのほかだ。それこそこちらの方が怪しい目で見られて終わりだ。


「残念だが、今回はお手上げだな。これ以上探ろうとすると、逆に殺人犯に警戒されることになる。今はこの病院が殺人犯の足取りを掴める場所だと分かっただけでも、良しとするか」

「う、うん。……あれ? 他にも知ってる人の気配?」


 今後のことを考えて、今日はこのまま引き上げようとする俺だったが、白峰はまた何かを感じ取ったようだ。

 白峰は建物の陰から様子を伺うように、人のいなさそうな路地裏を見ている。

 俺も一緒にその視線の先を見てみるが――




「あれって……真帝会の西原か?」

「誰かと話をしてる? 外国人?」




 ――そこにいたのは、少し前に俺も出くわした真帝会若衆の西原と外国人の男の二人だった。

 何やら大きなトラックの前で話をしているが、ここからでは遠くて話が聞こえない。


「……少し気になるな。ちょっと話を聞かせてもらうか」

「でも、ここからだと遠いよ? それに真帝会に関わるのは危ないって、風崎刑事も――」

「少しだけだよ。俺もあの二人に近づくわけじゃない。少しばかり盗み聞きするだけだ」


 白峰はさっきの風崎刑事との話もあり、西原と関わることに怯えているようだ。

 だが俺としてはこのタイミングで外国人がいることが、妙になってしまう。


 ――あの殺人犯も外国人だった。

 もしかするとこの二人も例の連続殺人に関わっているのではと思いながら、俺はスマホで一つのアプリを立ち上げる。


「『指向性マイクアプリ』起動っと。これを使えば、この位置からでも会話を聞き取れる」

「す、すごい。これって、黒間君の仕事道具?」

「まあな。姉村所長からもらったものだ」


 俺のスマホは異界能力者(エリアンアビリター)関連の調査のために、通常のスマホ以上のスペックとアプリが搭載されている。姉村所長が用意した特注品だ。

 この『指向性マイクアプリ』もその一つだ。

 俺はスマホを西原と外国人の方へと向けてみる――




『Is this everyone?』

『Yes. Please go to the wharf』

『You also ask for the preparation of the submarine』




 ――そして聞き出した会話の内容なのだが、外国人だけでなく西原も英語で話している。

 これでは話の内容までは分からないが、それでもやはり俺は気になってしまう。


「あの外国人も英語圏の人間だろうな。例の殺人犯と同じか……」

「あの外国人も連続殺人に関わってる?」

「断定はできないが、関係性は捨てきれないな」


 白峰とも話してみるが、あの外国人も殺人犯の仲間だという可能性はある。

 そして真帝会の西原もまた、その関係者かもしれない。


 ――まだ可能性の話だが、何か大きな裏を感じずにはいられない。


「く、黒間君! トラックがこっちに出て来る!」

「何!? 隠れるぞ!」


 俺が少し考えこんでいると、トラックが動き始めたようだ。

 白峰の声で気づいた俺は、白峰の腕を引っ張りながらこちらに来るトラックから身を隠した。


 ――そして物陰から見えたのは、トラックを運転する西原の姿。

 一緒に話していた外国人も助手席に乗ったらしく、路地裏からは誰もいなくなっていた。

 幸い、西原達がこちらに気付いた様子もない。


「……あのトラック、どこに向かったんだ?」

「分からないけど、さっきの会話で『submarine(サブマリン)』って言ってたから、埠頭とか?」

「潜水艦か? なんでそんなものを? ……いずれにせよ、追ってみる価値はあるか」


 西原達が連続殺人に関与している可能性がある以上、俺にはただ見過ごすことなどできない。

 そんな俺の言葉を聞いた白峰だが、俺の革ジャンの袖を引っ張りながら不安そうな表情で訴えてくる。


「ダ、ダメだよ。これ以上真帝会に関わると、本当に危ないよ?」

「確かにそうかもしれないが、俺はそれ以上にあの殺人犯を野放しにできない。異界能力者(エリアンアビリター)のことが心配なんじゃなく、これからもお前みたいな関係ない奴が巻き込まれるかもしれないんだぞ?」

「わ、わたしも異界能力者(エリアンアビリター)だけど?」

「……そうだった。いずれにせよ、お前のためでもあるんだ。俺は一度、埠頭まで様子を見に行ってくる」


 白峰はやはり風崎刑事の言葉が気になるらしく、どうにか俺を止めようとしてくる。

 それでも俺は気になって仕方ない。これまで追ってきた事件の犯人の足取りを掴めるかもしれないのに、そのチャンスを逃したくない。


 ――それに白峰のことだって心配だ。

 こいつも異界能力者(エリアンアビリター)だが、一般人よりもよっぽど危なっかしい。

 もしも白峰が殺人犯に狙われれば、立ち向かう術などない。

 なんだかんだでこいつとは今日一日だけでも、色々とあった。


 ――万一、白峰が殺されてしまえば、俺は激しく後悔する。


「白峰はここで待っててくれ。俺もちょっとしたらすぐに――」

「わ、わたしも行く! わたしも一緒なら、さっきの人達の正確な場所も分かる!」


 俺は白峰を置いて一人で向かおうとしたが、ここでも白峰はついて来ようとする。

 だが白峰の言う通り、こいつがいればその魔法で西原達の気配も追える。


「……分かった。だが、絶対に俺の傍を離れるな?」

「う、うん!」


 西原達が本当に埠頭に向かったのかの確証もない。

 だが潜水艦を使うつもりなら、この辺りで一番秘密裏に動かせそうな場所となると埠頭しかない。

 どうにも賭けのような話だが、今はとにかく埠頭に行って確かめるのが先決だ。

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