表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Force of the JUSTICE  作者: コーヒー微糖派
2nd day:The dark leap of the driven clan
13/141

望まない朝

新章。物語二日目。

〔地下に潜む闇の一味〕

「ふあ~……寝すぎた」


 連続殺人やら白峰との出会いやらで疲れていたのか、次の日の俺は少し寝坊してしまった。

 昨日はあの後事務所がどうなったのかしらないが、姉村所長のことだ。冷蔵庫からビールでも出して、飲んだくれているかもしれない。

 これは早めに事務所に行って片付けないと、事務所に来客も通せない。


「朝飯はコンビニで適当に買うか。白峰を所長と二人きりにさせたのも、今思えば悪い気がするな……」


 朝飯を食べる余裕さえなかった俺は、最低限の準備だけしてアパートの自室を出た――




「あっ、黒間君。お、おはよう」

「……なんで俺のアパートにいるんだ? 白峰?」




 ――そして扉を開けた先にいたのは、昨日事務所に残してしまった白峰だった。

 俺を待っていたように、背筋を整えてお辞儀をしてくる。

 服装はおしゃれなワンピースを着ているが、こういう身だしなみは姉村所長にも見習ってほしい。


「……いや、服装とかはどうでもいい。本当になんで白峰がここにいるんだ?」

「姉村さんに聞いた」

「『俺のアパートの位置を知ってる理由』を聞いてるんじゃない。『今この時間に俺のアパートにいる理由』を聞いてるんだ」

「わたしの感知の魔法で、黒間君が出てくるタイミングをはかってた」

「そういう意味でもない!」


 思わず意識が白峰の服装に逸れかけたが、俺は本題を聞いてみる。

 だが白峰から返ってくる言葉は、どこか間の抜けたものばかり。

 俺が聞きたいのはここにいる目的だ。方法じゃない。


「そ、そうだ。姉村さんから連絡。『今日の仕事はお休み』だって」

「え? 本当に休みになったのか?」

「うん。黒間君も色々あって疲れてるだろうから、今日はお休みにするって」


 そんな気になる本題なのだが、ようやく白峰も話してくれた。

 帰り際の話だと『夜通し話し明かすこと』を条件に休日になるはずだったが、それとは関係なく今日は休みなったようだ。

 それならそうとわざわざ白峰をよこさずに、電話で言ってほしいものだ。


「まあ、これで今日はゆっくりできるわけだな。それじゃ、部屋でもうひと眠り――」

「あっ、それともう一つ、姉村さんから言われたことがある」


 とりあえずはこの休みを満喫するためにも、俺は自分の部屋に戻ろうとしたのだが、白峰にはまだ要件があるようだ。

 俺が閉じようとした部屋の扉に体を挟み込み、グイグイ割り込んでくる。どうにも危なっかしい奴だ。

 仕方ないので俺も扉を開け直し、白峰の話に耳を傾ける――




「え、えっと。『今日は息抜きのために、ツッ君と遊びにでも行ってきて』だって」

「……なんだそれ?」




 ――耳を傾けたのはいいが、どうにも理解が追い付かない。

 話の内容もそうだが、白峰は何やらメモを見ながら話しかけている。

 これが姉村所長からの要件らしいが、どこからツッコめばいいのか分からない。


「それ、姉村所長からの要件だよな? なんであの人、こんなこと考えだしたの?」

「えっと。黒間君は友達もいなくて、寂しがってるからって……」

「なんて余計なお世話だよ……。てか、白峰もそんな話をすんなり引き受けるな」


 とりあえず、白峰が姉村所長の言いなりで動いているのは分かる。

 わざわざ所長の依頼内容のメモまで確認して、なんとも律儀な奴だ。


 ――だが、凄まじいまでにいい迷惑だ。


「俺は遠慮する。どうせ休みになったなら、惰眠をむさぼりたい。お前も帰れ」

「ま、待ってよ! わたし、今日は非番だし、せっかくおめかしもしたんだよ!?」

「知るか! さっさと扉から体をどけろ! 閉められないだろ!」


 とにかく休みたい俺は、どうにか扉を閉めて部屋にこもろうと試みるも、白峰がしがみついてきてそれも叶わない。

 異界能力者(エリアンアビリター)は俺の家族だけでなく、休息まで奪うつもりだろうか? 本当に疫病神だ。




「わ、わたしも友達いないから! 黒間君と友達になりたい!」

「……は?」




 そう思っていたのだが、急に白峰は声を荒げて本心と思える言葉をぶちまけてきた。

 結局のところ、白峰は白峰で寂しかったということなのか?

 なんとも急に本音をぶつけられて驚いたが、そういえばこいつも異界能力者(エリアンアビリター)の中では仲間はずれな扱いを受けているのだった。


 概ねあの後、姉村所長にそのことを相談をしたところ『俺なら友達として適任』とでも言われたのだろう。

 こいつは異界能力者(エリアンアビリター)だが、俺のイメージに根付いているようなろくでなしではない。

 いきなり『友達になりたい』と言うのはなんとも不器用だが、こうも真正面から頼まれると俺も断りづらい。


「ハァ……分かったよ。適当に街でもぶらつくか」

「や、やった! 黒間君、優しい!」

「……白峰はチョロいな」


 そんなわけで、俺は白峰と遊びに出かけることになった。

 俺が了承したのを聞いて、白峰はピョンピョンと子供っぽく喜んでいる。


 ――こいつ、俺と同じ二十一歳だよな?

 異界能力者(エリアンアビリター)ってのは、精神年齢が成長しないのか?

 まあ、今気にする話でもない。


「それじゃあ、まずはどこに行こうかね」


 元々は仕事に行く直前だったので、外出の準備は問題ない。

 アパートの部屋の戸締りを終えると、外で待っていた白峰に行き先を尋ねてみた。


「ちょ、ちょっと待っててね。えーっと……『デートコースの定番は、まずブラインドショッピングから』」

「……おい。それも姉村所長のメモか? てか『デート』ってなんだよ? あの人、何をどうしたいんだ?」


 俺に尋ねられた白峰なのだが、今度は別のメモを取り出して読み上げてくる。

 その内容はどう考えても姉村所長が考えたものだ。しかも勝手にデートだと解釈されている。

 今時『久しぶりに会った同級生が恋人同士になる』なんて、ベタなシナリオでもやりたいのだろうか?

 そういうのは恋愛小説や漫画で十分だ。リアルでやるつもりなんてない。


「そのメモはもういらん。捨てとけ」

「で、でも! 姉村さんが昨日真剣に考えてくれて――」

「なんであの人はこんなところでマジになってんだよ。普段の仕事もそれぐらい真面目にやってくれよ」


 せっかくの休みで姉村所長からも解放されるどころか、むしろ普段よりも面倒なことになっているこの現状。

 まあ、俺も最近は連続殺人を追うので気が立っていたから、こういう息抜きも必要なのかもしれない。

 白峰の頼みを無下にもしたくないし、これも姉村所長なりの気遣いなのだろう。


 ――そう思っておこう。

 そうでも思わないと、苛立ちで白峰をビビらせてしまう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ