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Force of the JUSTICE  作者: コーヒー微糖派
12th day: Justice of the chosen one
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表と裏を統べる者

「ど、どういうことですか……!? 幕川総理が……真帝会の会長ですって!?」

「こ、こんなの、スキャンダルなんてレベルでもねえぞ!? 馬鹿げてやがる! この国の表と裏の頂点が、同一人物だって!?」


 俺も風崎刑事も、目の前にいる真帝会会長を名乗る人物に動揺が隠せない。

 政権与党のトップと、現存する極道組織のトップ。その二人が同じ人物だったのだ。動揺するなという方が無理だ。


「確かに僕は表では内閣総理大臣であり、裏では真帝会会長という立場にいる。だが、それでこの国の頂点というわけではない」

「そんな立場にいながら、よくそんなことが言えますね……!?」

「仮にも日本は民主主義国家だ。社会的な頂点も何もない。……それに、僕はそんなくだらない話をするために、こうして姿を現したのではない」


 俺と風崎刑事が戸惑う様子も意に介さず、幕川総理は奥の通路へと歩き始める。

 そのすぐ後ろを、真帝会会長としての部下でもある鬼島さんと西原さんが歩き、それを追うように俺と風崎刑事もついていく。


 ――急な事実を突きつけられて、俺も風崎刑事もその場の流れに身を任せるしかない。


「まあ、急なことで混乱するかもしれないが、僕が黒間に会うのは初めてではないだろう?」

「た、確かに、俺が特務局に潜入してた時にも、虹谷博士の案内中に会いましたが……」

「その後の方だ。お前は特務局から脱出する際、西原のトラックに乗せられてただろう? あれは僕が指示したことだ」

「あっ……!?」


 困惑しながら後をついていく俺に、幕川総理は少し振り向きながら言葉を交わしてきた。

 あの時は急なことで記憶が吹き飛んでいたが、思い出してみれば俺は特務局から脱出する直前にも、幕川総理と出くわしていた。

 そして、幕川総理が護衛と話している隙に逃げ出すと、その先で西原さんに気絶させられたのだった。


「あん時、幕川総理に――会長に耳打ちしたんは、護衛に紛れ込んどったオレや。黒間のことも会長には伝えてはおったから、後は西原に先に伝達して、脱出をさせるように命じたんや」

「あ、あの時の護衛が鬼島さん……!? でも、ようやく納得できてきましたよ」


 さらにその前後のことも、鬼島さんが語ってくれた。

 俺もあの時の記憶は曖昧だったが、当人達に話してもらえることでようやく思い出せた。

 確かに俺は正義四重奏ジャスティスクインテットの青林から逃げ出した後、幕川総理と出くわしていた。

 そして、そこから逃げ出した直後に俺は西原さんに気絶させられ、特務局から逃げ出すことができた。


 ――あの時、鬼島さんが護衛に紛れ込んでいたからこそ、俺のことを助けてくれたということか。


「それにしても、幕川総理は天治党の総裁ですよね? 異界能力者(エリアンアビリター)の政策を促進させている代表なのに、どうしてその裏で真帝会の会長なんて?」

「ハッキリ言って、幕川総理の表と裏の立場は矛盾してる。片や異界能力者(エリアンアビリター)の立場を守っていながら、片や異界能力者(エリアンアビリター)の敵である極道組織の長。この矛盾については、俺も黒間も納得できねえな」


 俺達の先頭を歩きながら説明してくれる幕川総理だが、それでも納得できない点は多い。

 現在の政権与党である天治党は、異界能力者(エリアンアビリター)の政策を推し進めることでその地位を確立してきた。

 それだというのに、真帝会という異界能力者(エリアンアビリター)のせいで追いやられた組織の頂点に立ち、異界能力者(エリアンアビリター)を調べていた俺のことまで助けてくれた。


 ――もう、この人が内閣総理大臣だろうが真帝会会長だろうが関係ない。

 俺も心に決めた以上、相手が誰であろうと真相を尋ねずにはいられない。




「僕の立場についても、この扉の先で待っている人と共に語らせてもらう」

「この扉の先……?」




 俺が疑問を抱いていると、幕川総理は一つの大きな扉の前で足を止めた。

 これまでの無機質な通路の壁とは違い、どこか威圧感をも感じるほど巨大な扉だ。


「この施設は本来、有事の際に政府要人が避難するためのシェルターとして作られたものだ。もっとも、今は異界能力者(エリアンアビリター)から姿をくらますために利用しているがね」

「国が推進していた異界能力者(エリアンアビリター)から逃れるために、国が用意した避難場所を使うってのも、なんだか皮肉な話ですね。……ですが、そんな場所で俺達を待っている人となると――」

「もしもこの国の頂点が存在するなら、それに該当する人物。俗にお前達で言うところの『フィクサー』が、この先で待っている」


 不思議そうに扉を眺める俺を見て、幕川総理が説明を加えてくれた。

 幕川総理はあくまで真帝会会長という立場であり、その真帝会を裏で動かしているフィクサーは別に存在する。


 俺もこの立て続けに襲い来る真実を前に、余計なことを考える暇もない。

 今の俺に分かるのは、一つだけだ。




 ――この先に真帝会を裏で操り、異界能力者(エリアンアビリター)にも繋がるフィクサーが待ち構えている。

 その人から話を聞かないと、姉村所長が遺した『罪と悲願』も分からない。




「……黒間。俺は覚悟を決めたぜ。フィクサーが誰だろうと、俺はきっちり話を聞き出してやる」

「俺も同じですよ。……幕川総理、この先の人物に会わせてください」

「いいだろう。鬼島、西原。扉を開けろ」


 俺と風崎刑事は一度目を合わせて確認を取り、同時にこの先に待つ真相へと覚悟を決める。

 そんな俺達の覚悟を確認すると、幕川総理の命令で鬼島さんと西原さんの手により、ついに扉が開けられた――






「……ほう? 君が黒間 次彦君か。姉村君からも話は聞いていたが、昔はヤンチャをしていたそうだな。……だが、悲しさと優しさが入り混じったような、若くして苦難を超えてきた目だ。姉村君が君に全てを託したのも、ワシには分かる気がするな」




 ――そして開けられた扉の向こうから、一人の年老いた男性の声が聞こえてきた。

 その人物は部屋の奥にある回転椅子に腰かけ、俺達に背を向けながら語り掛けてくる。


「あなたが……フィクサー? それより、どうして俺のことを……?」

「姉村君はワシの部下にあたる人物だったものでな。君のことも、彼女からは常々報告を受けていた。……姉村君のことについては、本当に残念だった」

「あなたが……姉村所長の……!?」


 このフィクサーと思われる人物の正体も気になるが、俺はそれ以上にその言葉が気になってしまう。

 この人は俺のことを知っている。それが姉村所長経由だったということは、本人もすぐに答えてくれた。


 ――真帝会の裏に潜むフィクサーと、姉村所長を動かしていた人物までもが同じだった。

 この国の総理大臣と真帝会の会長が同じだったことといい、俺の頭は軽くパンクしてしまっている。




 ――それに何より、俺はこのフィクサーの声にも聞き覚えがある。




「風崎刑事に黒間君。このような場所にまで、よくぞご足労いただいた。ワシも幕川総理同様、その立場のせいで簡単に姿は見せられぬのでな」

「あ、あんたはまさか……!?」

「ど、どうして、あなたが天治党の総裁と……!?」


 一通り語り終えると、フィクサーは椅子をこちらへと向け、その姿を風崎刑事と俺にも露わとしてくれた。


 この人が政府関係者なのは間違いない。俺だってよくテレビで見た顔だ。

 これほどの大物ならば、フィクサーという立場にいてもある意味納得できる。




 ――だが、この人は幕川総理とは『政党そのものが違う』はずだ。




「驚くのも無理はないだろうが、そのあたりも全て説明しよう。諸君から『フィクサー』と呼ばれ、諸君らの知りたい情報を握るこのワシ――野党地明党幹事長である、宮倉(みやくら) 宗五郎(そうごろう)がな」

宮倉みやくら 宗五郎そうごろう

七十歳の男性。野党地明党の幹事長。

裏の顔を『政界のフィクサー』

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