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Force of the JUSTICE  作者: コーヒー微糖派
10th day: Ability and the truth of the case
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逃走のハイウェイ

「あれって、半グレなんですか!? なんで俺達の乗ったトラックを襲って!?」

「そんなもん、オレが知るわけねぇだろぉ!? このトラックの進行を妨げてくるし、体当たりまでしてくるしで、こっちも手一杯だぁ!」


 状況を確認しようにも、運転している西原さんもこの事態を飲み込むことができていない。


 俺達は虹谷博士を誘拐し、尋問していた。

 その虹谷博士は正義四重奏ジャスティスクインテットの赤森により、焼き殺されてしまった。

 そこから逃げ出したと思えば、今度は半グレの集団がバンに乗り、こちらの逃亡を邪魔してくる。


 ――事態が二転三転しすぎて、この場にいる人間でもこうなった理由が分からない。


「わけ分からへんことになっとるが、とりあえず半グレどもから逃げ切んぞ! 西原ぁ! トラックのスピードを上げて、強引に前に出るんや! いくらぶつけても構わん!」

「分かったでさぁ! こっからはオレも、さらに荒っぽく行きますぜぇえ!!」


 ただ、今はこの事態の理由を考えている余裕もない。

 鬼島さんの命令を受けて、西原さんはトラックを一気に加速させる。


「くそ!? 相手のトラックの方が、馬力は上か!?」

「怯むな! こっちも命令通り、あのトラックを止めるんだ!」


 トラックは半グレのバンを跳ねのけながら、強引に前へと走り抜ける。

 乗っている半グレ連中の声もわずかに聞こえてくるが、やはり俺達のことを狙っている。

 ここまでの数のバンを用意して、ただの通り魔なはずもない。


「これ以上はこのバンじゃ近づけねえ! 後はあんたらでやってくれ!」

「仕方ないね。まあ、半グレなんていう反社会勢力に、そこまで期待はできないか」


 そんな半グレ連中なのだが、こちらのトラックの後ろに回り込むと、同乗者に声をかける様子が伺える。

 こちらも荷台の開いた後部扉から覗き見るが――




「悪いんだけど、君達は正義に逆らう重罪人だ」

「俺ら異界能力者(エリアンアビリター)が、まとめて始末してやるよー!」


「ば、馬鹿な!? 異界能力者(エリアンアビリター)だって!?」




 ――半グレの運転する複数のバンの中から、異界能力者(エリアンアビリター)らしき人物が顔を見せ始めた。

 手に炎や氷の魔法を宿す者、こちらの方に身構えて飛び込もうとする者等々。

 どう見ても異界能力者(エリアンアビリター)が半グレと手を組んで、俺達のことを狙っているとしか思えない。


「半グレと異界能力者(エリアンアビリター)が協力しているのですか? まあ、自分からしてみれば半グレも異界能力者(エリアンアビリター)も『憎たらしい連中』という意味では共通してますね」

「ラルフル! お前、自分が捕えられとるからって、部外者面が過ぎへんか!? 連続殺人犯であるお前かて、連中にとっては標的なんやぞ!?」

「そうおっしゃるのでしたら、この手錠を外していただけませんかね?」

「外すわけないやろが! そもそも、手錠の鍵は風崎はんが持っとるわ!」


 そんな状況で慌てふためく俺達を見ても、ラルフルの態度は変わらない。

 こちらに手錠を見せつけながら、自身の解放まで求めてくる。

 無論、そんなことを許すわけにはいかないし、鍵自体が手元にない。


 ――ただ、なぜ半グレと組んでいるのかまでは分からないが、異界能力者(エリアンアビリター)からしてみれば、これまで同胞を何人も殺してきたラルフルのことなんて、見逃せるはずがない。

 ラルフルが連続殺人犯だとバレているのかは不明だが、いずれにしてもここで俺達がやられれば一巻の終わりだ。


「西原さん! もっとスピードを上げて、完全に振り切ってください!」

「そんなこと言ってもよぉ! このトラックじゃぁ、これが最高速だぞぉ!?」


 俺は運転する西原さんに、なんとか半グレと異界能力者(エリアンアビリター)のバンを振り切るように願い出るが、トラックの速度はこれが限界のようだ。

 流石に車が相手だと、トラックではサイズや馬力は上でも、加速性能では劣ってしまう。

 バンに乗った異界能力者(エリアンアビリター)は、今にも襲い掛かって来そうなのに、これでは打つ手が――




「しゃーない! 黒間! お前に拳銃を貸したったやろ! それ使って、応戦するんや!」

「え!? け、拳銃で!?」




 ――そんな時、鬼島さんから意外過ぎる打開策が述べられた。

 確かに俺は虹谷博士を脅す時に貸してもらった拳銃を、今も腰に差している。

 だが、拳銃なんて撃ったこともない。そもそも、こんなもので応戦するのは、あまりにも危険すぎる。


「別に人は撃たんでもええんや! バンのタイヤを狙え!」

「タ、タイヤ!? そうか! パンクさせてしまえば……!」


 銃を撃つことに怖気づく俺の心情を理解したのか、鬼島さんはアドバイスを述べてくれた。

 確かにバンのタイヤをパンクさせれば追って来れなくなるが、それでも拳銃のトリガーにかけた俺の指は震える。

 だが、ここで立ち向かわなければ、俺も異界能力者(エリアンアビリター)と半グレにやられて終わりだ。


 ある意味、状況に流された勢いというものもある。

 俺は思い切ってトリガーを引き、後ろから追ってくるバンのタイヤ目がけて発砲した――



 バギュンッ! バギュンッ!



「うおぉ!? 異界能力者(エリアンアビリター)の皆さん! あいつら、撃ってきましたよ!?」

「くっ!? 拳銃まで使うだなんて、本当に危険で野蛮な連中だ!」


 鬼島さんと一緒になって、なんとかバンのタイヤを狙うも、素人の銃撃が簡単に当たるはずもない。

 それでも、威嚇射撃としての効果はあったのか、構えていた異界能力者(エリアンアビリター)も尻込みし始める。


「そのまま撃ち続けるんや! タイヤに当たれば儲けモン! 当たらんでも、相手の出鼻を挫くぐらいはできる! 異界能力者(エリアンアビリター)なんてとんでもない連中や言うても、所詮は経験の浅いガキに過ぎひん!」

「わ、分かりました!」


 俺は鬼島さんに言われた通り、トラックの壁に掴まりながら拳銃を連射してタイヤを狙う。

 高速道路で揺られながらという状況で、素人の俺がまともに拳銃を扱えるはずがない。

 だが、それは異界能力者(エリアンアビリター)からしても同じことだ。

 向こうも高速道路で走行中の車に乗りながら戦うのは慣れていないのか、こちらの銃撃を見て及び腰になっている。


 ――総じて、お互いが拮抗している現状。

 だが、それでこちらが有利というわけでもない。


「だったら、俺らであのトラックに近づいてやる! そこから異界能力者(エリアンアビリター)が乗り込んでくれ!」

「チャカなんて、極道してた時にだって見てきたんだ! 今更、多少ハジかれそうなぐらいで怖気づくかよ!」


 こちらの拳銃を確認しても、バンを運転する半グレの方は大きく及び腰にはなっていない。

 かつて異界能力者(エリアンアビリター)の政策によって極道組織の大半が壊滅した際、半グレに流れた人間も多い。

 そんな連中は、俺と鬼島さんだけの銃撃にもまったく怖気づかない。


 ――かつて異界能力者(エリアンアビリター)のせいで苦汁を舐めたのに、こうして今は協力している光景も考えれば、なぜこんなことになっているのかさらに理解に苦しむ。

 そのことが気になりつつも、今気にするべきはバンに近づかれてしまい、異界能力者(エリアンアビリター)が直接こちらに乗り込んでしまうこと。

 そうなってしまうと、この狭い車内では応戦も厳しい。状況は拮抗どころか、逃げるこちらの劣勢だ。



 ――ファンファンファン!



「この音……サイレン!?」


 そうやってカーチェイスを続けていると、今度はサイレンの音が近づいてくるのが聞こえた。

 トラックの右側にある合流車線から聞こえてくるが――




「黒間ぁあ!! 無事かぁあ!?」

「か、風崎刑事!?」

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