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Force of the JUSTICE  作者: コーヒー微糖派
10th day: Ability and the truth of the case
105/141

死の真相

 俺がどうしても知りたかった最大の真実――白峰の死について。

 そのことを虹谷博士に尋ねてみるが、まるで『初めて聞いた』といった様子でシラを切られてしまう。


「知らないとは言わせないぞ? これまで俺があんたにした話だって、元々は白峰が託してくれたものだ」

「あんさんは白峰ちゃんが共同実験の行われていた施設からデータを抜き取ったことを知り、情報漏洩を防ぐために白峰ちゃんを殺して口封じした。せやろ?」


 だが、特務局の代表という地位にある虹谷博士が、組織的な口封じの事実を知らないはずがない。

 俺は鬼島さんと一緒に、虹谷博士へと詰め寄るが――


「ほ、本当に何の話をしているんだ!? 白峰君を口封じのために殺しただって!? そんな馬鹿なことがあるか!?」


 ――返ってくるのは『何も知らない』という言葉だけだった。


「今更になってとぼけるのか? これだけ特務局の秘密を掴まれ、かつて犠牲にしたラルフルだっているんだ。下手に逃げようと考えても無駄なことぐらい、あんたにだって分かるだろ?」

「し、知らないものは知らないんだ! 白峰君が死んだことだって、私は初めて聞いたぞ!?」

「まだとぼけるつもりかよ……!? いい加減にしろぉお!!」


 あまりにシラを切り続ける虹谷博士に業を煮やし、俺はその胸ぐらを掴んで睨みながら言葉を紡ぐ。

 ここまで白峰のことで知らないフリをされては、俺の気が収まらない。


「白峰を殺させたのは、正義四重奏ジャスティスクインテットの緑蓮寺じゃないのか!? 白峰の遺体には、植物に関する能力が使われた痕跡があったんだ! 異界能力者(エリアンアビリター)の指揮権を持つ、あんたが命令したんだろぉお!?」

「わ、私はそんな命令、出した覚えはないぞ!? ほ、本当だ! 信じてくれ!」

「てめぇ……! 一体、どこまでとぼければ気が済んで――」

「落ち着くんや、黒間。……どうにも、この博士はホンマに何も知らんのかもしれへんぞ」


 俺は声を荒げて虹谷博士を問い詰め続けるも、虹谷博士からの回答は変わらない。

 俺があまりの興奮状態になっていると、横から鬼島さんも口を挟んでくる。


 ――まさかとは思うが、虹谷博士は本当に何も知らないのか?


異界能力者(エリアンアビリター)特務局の代表ともあろう人間が何も知らないというのも、実に奇妙な話ですね。まさかとは思いますが、研究についても全てを把握していないなんてことはありませんかね?」

「研究について……か」


 ラルフルも虹谷博士の不可解な様子を見て、これまでの怒りで興奮する態度から一転、落ち着いて状況を観察している。

 その中で出てきたのは、虹谷博士は本来知っているはずの異界能力者(エリアンアビリター)の研究についても、同じように知らないことがあるのではないかということ。

 俺達にはまだ、虹谷博士に聞いていなかった研究内容がある。

 俺はそのことについても、虹谷博士に尋ねてみることにした。


「かつて米軍との共同実験が行われた施設の地下で、俺達はこれまでラルフルに殺された異界能力者(エリアンアビリター)の遺体がカプセル内に保管されているのを見つけた。あれも『Project:Force of the JUSTICE』の一部らしいが、その陣頭指揮もあんたが執ってたんじゃないのか?」

「殺された異界能力者(エリアンアビリター)の遺体が、あの施設の地下に保管されていただって? そ、それだって、私は知らないぞ? あの施設は三年前の米軍との共同実験以来、封鎖されていたはずだ。そんなものは『Project:Force of the JUSTICE』にも含まれていない!」


 まさかとは思ったが、虹谷博士はあの施設の地下で行われていた研究についても知らない様子だ。

 この期に及んで、虹谷博士が知らないフリで通すメリットは小さい。

 もうほとんどの物事がバレているのに隠しても、こちらを苛立たせてしまい、ラルフルに殺される危険性だってある。


 ――それだというのにこの態度。どうにも、話が噛み合ってこない。


「……本当に何も知らないんだな?」

「あ、ああ。白峰君があの施設のデータを持ち出していたとしても、まさか殺すような真似まではしない。そんなことをする情報が私の耳に入っていれば、流石に止めている」

「だったら、あんた以外の人間が命じたってことか?」

「そ、そうなるのだろうが、果たして誰が……?」


 再度虹谷博士に確認を取りながら尋ねてみて浮上してくるのは、虹谷博士以外の人間が白峰殺害の糸を引いているという可能性。

 ただ気になるのは、もしも白峰を殺したのが本当に正義四重奏ジャスティスクインテットの緑蓮寺だとした場合、虹谷博士と同等以上の地位を持った人間ということになる。


「実際に虹谷博士を動かしていたのも、天治党だったとすれば、考えられるのは幕川内閣総理大臣や戸浦幹事長といった大物か……?」

「いや、幕川総理は違うな。この間も言うたけど、異界能力者(エリアンアビリター)関係の政策を動かしとるんは、戸浦幹事長の方や。そうなんとちゃうか? 虹谷博士?」

「た、確かに異界能力者(エリアンアビリター)の政策面においては、戸浦幹事長が指揮を執ってはいる。真帝会の若頭なら、そう考えることもできるか……」


 俺が思いつく限りの首謀者を列挙してみると、鬼島さんが注釈を入れながら虹谷博士へと尋ね始めた。

 鬼島さんは幕川総理が糸を引いている可能性を否定しているが、これも真帝会とフィクサーの繋がりからだろうか?

 俺には分からないが、虹谷博士も事情を知っているような様子を見せている。


 ――どうにも、この事件の裏には真帝会のさらなる深部が見え隠れする。


「鬼島さん。俺にも教えてもらえませんか? 真帝会のバックにいると言われる、フィクサーの正体などについても――」

「それについては、オレも簡単に教えられへんな。せやけど、今のところ可能性が高いんは、戸浦幹事長やとオレは睨んどる」


 俺が尋ねてみても、鬼島さんが真帝会の裏側を教えてくれることはない。

 たとえ俺達に協力はしてくれていても、そこは別問題と捉えているということだろう。

 これまでも鬼島さんの性格は見てきたが、この人ははぐらかすことはしても、こちらが行き詰まるようなことはしていない。

 とりあえず、今は真帝会と白峰を殺した黒幕との繋がりはないと見ていいだろう。


「まあ、鬼島さんも真帝会のバックが白峰の死と繋がっているならば、真っ先に俺や姉村所長に伝えてますよね」

「そらそうやろが。でなきゃ、オレもここまで協力なんかせえへん」


 俺は鬼島さんに軽く確認を取りながら、白峰を殺した黒幕について考える。

 現状で考えられる黒幕は天治党の戸浦幹事長だが、相手が相手だけに簡単には行きそうにない。

 この辺りは姉村所長や風崎刑事とも相談し、慎重に調査を進めた方が――




「……待ってくれ。『姉村』だって? 君達は姉村という人物と一緒に動いているのか?」




 ――俺がそう考えていると、虹谷博士が座り込んだまま、俺達の会話に口を挟んできた。


「俺はそもそも姉村所長の部下だが、あんたは所長のことを知ってるのか?」

「いや……私も姉村という人物の名を聞いたことがあっただけだ。同一人物かは不明だが……」


 虹谷博士が姉村所長の名前に反応するとは思わなかったが、反応されると俺も気になってしまう。

 所長は明らかに自身の秘密を持っているが、そのことはこれまでお約束のようにはぐらかされてきた。

 虹谷博士の述べる人物が所長のことを指しているのかは不明だが、耳にしてしまった以上、俺はどうしても気になってしまう。


「なあ、虹谷博士。あんたが知ってる姉村って人物のことだが――」



 ガララッ!



 俺がそのことを虹谷博士に尋ねようとした矢先、運転席に繋がる窓が勢いよく開かれた――




「カシラぁ! 黒間ぁ! ヤバいことになったぞぉ! 異界能力者(エリアンアビリター)がここを嗅ぎ付けやがったぁあ!!」

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