カーネ王国第一王女の物語
初投稿です!
誤字、脱字、文章がおかしい等あればご指摘くださると嬉しいです。
ある近衛騎士視点
ここは離宮。
王宮からかなり離れた位置にある寂れた宮。
ここに現在幽閉されている第一王女殿下がお住まいらしい。
私は近衛騎士として陛下から預かった文をお届けする途中だ。
そして宮に到着し、第一王女殿下に文を渡すと第一王女殿下は中を見てお言いになられた。
「これ、あなたは見たかしら?」
その問いに対して私は毅然として答える。
「いえ、私は見ておりません」
「そう……返事は、はい、もしくはかしこまりしたの二つしかないわね……陛下に文の内容かしこまりました、とお伝えくださいませ」
仕方がない、そんなふうに感じられる微笑みで王女殿下は言い、帰りを促した。
そして、陛下の元に行く途中に考える。
第一王女殿下の宮には使用人や侍女が一人しかおらず、質素な生活をしていらしゃる。
対して異腹の妹君であらせられる第二王女殿下は使用人や侍女は大量におり、贅を凝らした宮で、贅沢な暮らしをしていらしゃる。
第一王女殿下は亡くなられた前の正妃様がお産みになられたたった一人の子供。亡くなられた正妃様は当時最もこの国で力を持っていらした公爵。まあ、陛下にとっては政略で娶られた妃であるが故にあまり愛しておらず蔑ろにしがちであった。
対して第二王女殿下は現在正妃の座に付いている方がお産みになられた子供。現在の正妃様は陛下の寵愛深き方である。ご実家は伯爵家であるものの陛下の寵愛がある限りは安泰であろう、と言われている。その寵愛深き妃を母に持つため、第二王女殿下は陛下から、溺愛されている。彼女が望めばなんでもお与えになされるため、傲慢で強欲な我儘姫に成長された。その母である正妃様も散財を好み贅沢な暮らしをされているため、娘である第二王女殿下を止める素振りはない。そんな二人に引っ張られるように陛下も贅沢な食事、高級な酒を飲み、政務を疎かにされるようになった。
二人の王女殿下は同い年でこの春、学園に入学なされる。そこで2年の間様々な学問や礼儀作法について学ばれる。
その2年の間に何事もなければ良いのだが。
特に王継承権問題がこの国、カーネ王国ではややこしい。なぜならカーネ王国では王女でも王子でも能力があるものに王太子の地位が与えられるからだ。まあ、大半は長子存続で、一番初めに生まれた子供がつく。だが、第一王女殿下は子供が産めないという疑惑がある。対して第二王女殿下では国を滅ぼす愚王になると思われ反対するものが多い。そのため、どちらの王女殿下が王位についても一長一短であるから揉めている。とはいいつつも第一王女殿下はとても賢く、民の声を聞こうとなされる方であるため、良識的な貴族はこちらを推している。逆に傀儡とし、甘い蜜を吸いたい愚か者たち、親馬鹿で愚かな陛下と国母の地位をとり、さらに贅沢がしたい正妃は第二王女殿下を推している。
ただ、そろそろ民の不満は爆発するだろう。なぜなら、少しずつ民の暮らしは悪くなっているからだ。
その原因として、近年少しずつ第一王女殿下派の貴族たちが処罰されている。そのため、段々勢力が落ちている。また、ここ数年前から第一王女殿下は表に出てくる回数が激減した。さらに最近では幽閉されており王位につくのは絶望的だと言われている。そのためか、良識的で民を思いやるものが減ったから、段々民の暮らしは悪化の一途を辿っているのだろう。
とは言いつつも、間違いなく第二王女殿下が王位につけばこの国は斜陽の一途をたどりすぐさま滅びるだろう。そう、言い切れるほど第二王女殿下は愚かで、強欲な我儘姫。第二王女殿下は国を滅ぼす悪女か害虫にしかならならい。
そもそもまだ滅んでいないこと自体奇跡なのだから。
それ程このカーネ王国の財政状況は悪い。
どうなるのだろうか、この国は。
そして、この国には未来はあるのだろうか。
カーネ王国第一王女殿下視点
わたくしは本来なら春に学園に入学する。
でもそれは取りやめになるようね。
父上………陛下の文にはそう書いてあった。
仕方がない。
その他の内容としては王の政務を代行せよ、婚約は破棄しておいたというもの。
どれもこれも酷いものばかり。
こんな酷いことが書けるのは父上も正妃様も第二王女である妹も贅沢にしか興味ないのだから。
「ふふ、きっと3年以内に戦争…いえ、侵略が起こるわ。隣国のヨーマ王国の王は民を蔑ろにするこの国の王族と貴族にあまりよく思っていないかったはずね。もし、民を慈しむヨーマ王国に侵略されたら民の生活は今よりは良くなるのかしら?」
そうたった一人の侍女に問えば彼女は哀しそうな表情をしていう。
「きっと良くなりましょう。ですが、その時姫さまは責任をお取りになるため自害致されるおつもりでしょう?私はそれがおそろしゅうございます」
「そんなこと言わないで。これは王族としての責務なの。だからわたくしは最初から受け入れているわ。だからそんな顔しないでちょうだい」
「ですが!…ご幼少の頃から虐待され、都合が悪くなられたら姫さまを生贄になされるあの方たちが許せないのです!そして、姫さまが不憫で仕方ないのです……」
「その気持ちは嬉しいけど決めたことよ。だから泣くのはおしまい。あんな酷い幼少のころだったけど民はとても優しかったのよ。それをよく覚えているわ。だから、わたくしは彼らの生活を命をなんとしてでも守りたいの。そのためならこの命惜しくないわ。……それにわたくしは王位につけそうにないから仕方ないのよ」
そう言い目を伏せる。仕方がないことだからもうわたくしは諦めている。
だから、隣国のヨーマの王よ。わたくしではこの国を変えられなかった。民を愛し、民を守るためにこの国を攻めてください。そして、陛下たちに破滅を。
そのためならこの命惜しくない。
そんなわたくしの覚悟が分かっている侍女は一つ疑問があるらしい。
「姫さま、なぜそれほどヨーマの王を信頼なされているのですか?あの方と文通を少し前までしていたことは知っておりますが……なぜそこまで絶対的な信頼できるかわかりません」
侍女は心底不思議だという顔をしながら聞いてきた。わたくしはその質問に対して笑みを浮かべながら言う。
後で聞いたらその時のわたくしはまるで恋する乙女が最愛の恋人に愛を囁くようなそんな妖艶で美しい笑みを浮かべいていたらしい。
「教育という名の虐待されていたわたくしに気づき、そのことについて父上…陛下に言われ、わたくしをあの地獄から救ってくださったからかしら、ね。……ここに幽閉されるまでは文通もしていたでしょう?そのおかげで、人柄がよくわかっていると言うこともあるわ。そこから考えられるあの方の気性からすれば必ずこの国を救ってくださると思うの。これはわたくしの勘でしかないのだけど。それに、わたくしの初恋の方だから信頼してるというのもあるわ……さあ、今やれることを精一杯やりましょう、行動しましょうか」
ふふ、そう笑いながら、行動を始める。
陛下に命令された政務を。
一年間民が飢えずに済むように食料を。
侵略されるための準備を。
半年後。
良識的な貴族であるの第一王女殿下派の者は軒並み処罰され、その多くが処刑、暗殺された。
中には一族ごと処刑されたところもある。
そうなればもう甘い蜜を吸う愚か者しかいなくなる。
もうこの国はおしまいだ。
何度も第一王女であるわたくしは止めた。
証拠も不十分だと訴えた。
だけどダメだった。
「お前は学園ににも入れぬ落ちこぼれ。そんな者に意見されてたところで誰も聞かぬ!」
そう陛下に言われればなすすべもない。
さらに半年後。
冬になった。
今年は大凶作ではなかった。
とは言っても、例年に比べて作物の実りは少なかった。
だけど陛下たちはそんなことお構いなしに重税を民に課す。
税が高くて払えず身売りをする幼い少女。
税の代わりといい連れてかれた幼い少年。
家計のために泣きながら子供を捨てる女。
必死に働きすぎて体を壊し床に伏せた男。
お腹がすいたといい生き絶える幼い子供。
孫らに食べさせるために食を絶った老人。
国のどこもかしこで上がる怨嗟、怒り、悲しみの声。
悲痛な声は王の足元である王都でも聞こえる。
なのに陛下たちには一切届かない。
金が少ない、そう文句をいい、限界を迎えている民からさらに税金を取ろうとする。……わたくしの制止も聞かずに。
そんな父たちの様を見て彼らを改心させることを諦めた。だからわたくしはもうあの策を実行することを決めた。侍女に実行を何度も止められた、己ごと破滅させる策を。
実行にあたり、ヨーマの王宛に文を書いた。それを侍女に届けさせる。
初恋の人はきっとこの国カーネ王国の民を救ってくださる、そう信じているの。
「一月以内に王宮側の工作をしておくわ。だからなんとしてでもこのカーネ王国にヨーマ王国の兵を連れてきてね、約束よ」
そう微笑みながら言って、侍女を送り出した。
ヨーマ王国国王視点
隣国であるカーネ王国が民に重税を課し、王侯貴族は贅沢をしている、そのため、民は貧困に喘いでいる、
そんな噂が広まっている。
嘘だと思いたかった。
なぜならカーネ王国の第一王女は聡明で、民のことを思いやることができる優れた少女だったから。
だが、宰相はいう。
「第一王女殿下は表に出てきていません。ですが裏から国を支えていることだけは確実でしょう。そうでなければ、あの国はもう潰れているでしょうし。そろそろ民の暴動が起きそうだったはずなのですが……それがいつのまにか起こせなくなるほど酷い状況に追いやられていますね」
「そういえば昨年の春に学園に入学したはずだろう?その少し前から文が届かなくなったな。大体1年前くらいだな。その頃に何かあったんだろう?何があった、宰相?」
「おそらく第一王女殿下は幽閉されているのでしょう。何故かわかりませんが第一王女殿下あたりの情報がかなり念入りに隠されております。表向きは病で療養のため、休学していることになっておりますが実情は邪魔な第一王女を抑えるための幽閉でしょうね」
とても納得した。
第一王女がいなくなれば確実に第二王女がカーネ王国を継ぐ。だが、あの女がつけば確実に国が滅ぶ。それを止めるために日々奔走していたのが第一王女だったし。彼女は酷い虐待を受けいていたのにも関わらず民を大切に思っているため、父王や第二王女正妃の贅沢を諫めていたからな。
だが、確か今年は秋の実りが例年以上に少なかったはず。まさか……
「まさかと思うが、あの愚王は税金をあげたりしていないだろうな。そんなことすれば滅びるぞ、カーネ王国は」
「そのまさかですよ。もうあの国はダメでしょうね。立て直すのは相当の苦労が必要ですよ」
やっぱりか……終わったな、現カーネ王国国王とその正妃とその正妃の娘である第二王女。
確実にこれは第一王女は動く。
国を滅ぼす害虫はいらんと微笑みながらやりそうだ。
……ん、まてよ?第一王女は幽閉中だよな。
あれ?あの国詰んでね?民が暴動起こして国として成り立たなくなりそうなんだが。まさかあいつがそんなことやるはずないと思うんだが……そんなまさかがあるのか?
「なあ、宰相。第一王女に動きはあるか?動きがあるにしては少しカーネ王国は静かすぎないか?」
「残念なことに一切ないようですね。半年前から軒並み第一王女派の貴族は処刑、謎の急死を遂げていますから、手駒がいないのでしょう」
そんな会話をしていたところに突然知らせはきた。
「陛下、カーネ王国から使者が参っております。どういたしましょうか」
「うん?カーネ王国から?何のようでだ?」
「それが、王に文を届けにきた、直接必ず渡すように主に言われている、と。しかもその使者が女性で侍女服を着ているのです………どういたしましょうか」
知らせにきたものはかなり困惑している。
そりゃそうだ。使者を名乗っているのが女、しかも侍女服を着ており、最近悪い噂しか聞かないカーネ王国からきたという。
だが、一つ心当たりがある。
「その女は主について何と言っている?」
「主についてですか?……王族の娘であるとしか言っておりません」
それを聞いて宰相と顔を合わせて即座に悟った。
第一王女からの使者だと。
「この部屋に通せ」
「か、かしこまりました」
知らせにきたものはかなり驚きつつも、すぐさま行動し始めた。
「なあ、これはどう考えてもこのタイミングだと救援要請だよな?」
「確実にそうでしょうね。本人は国を離れられないため腹心の部下をよこした……と言ったところでしょうね……助けを求めてられたらどうしますか」
「受けるしかねーだろ。惚れた女の頼みだしな」
宰相は呆れたように俺を見る。
まあ、昔、カーネ王国に行ったときにあまりにも酷い教育現場を見てしまい、そのことについてカーネ王国国王に質問した。そのあと彼女から感謝され何度か交流するうちにとても無邪気に笑っている姿を見て恋に落ちた。
とても酷い教育だったのにも関わらず無邪気に、明るく笑っていられる彼女を素直に尊敬し、民のために強く賢くなるのだという彼女に憧れた。
彼女をできれば俺の妃にしたかったが彼女はカーネ王国の第一王女という立場故に断ると思ったため、求婚はできなかった。その代わりとして文通を提案し、その頃から続けていた。そのうち彼女にも婚約者ができたらしいが、交流はほぼしていなかったらしい。
さらに最近婚約破棄したとか。
まあ、そんなことも宰相から聞いた話で本人からの文は一切ないため、本人から聞きたいな〜とのんびり思っていたのだが……この調子では何か婚約者と妹姫である第二王女あたりに反対されたか横槍を入れられたかで婚約破棄になった可能性が高いな。
ひとまずこのことは置いておこう。
とりあえず宰相には、
「助けを求められた必ず助ける」
といえば宰相はたった一言。
「かしこまりました」
そうこうしているうちに使者を名乗る侍女服を着た女が来た。
「俺がこのヨーマ王国国王。こっちが宰相だ」
まず、俺たちが名乗ると使者の女は俺を見ながら言った。
「私はカーネ王国第一王女殿下の侍女です。貴方様が姫さまの初恋のお方で姫さまがカーネ王国中の貴族よりも深く信頼をしていらっしゃるあのヨーマ王国の王でいらっしゃいますよね?」
……は?
柄にもなく固まり、その意味を理解すると
「おい、ちょっと待て!それどういう意味だ!?」
「わー、やっぱり姫側も惚れてましたねー。両片思いって素晴らしいー」
いつも公私の区別をしっかりつける宰相が思わず敬語が崩れるほどの爆弾発言。
使者の方も思うところはあるらしく申し訳なさそうに謝ってきた。
「こんなに動揺されると思いませんでした……申し訳ありません」
さすがの宰相はその言葉で正気に戻り、即座に言葉を返す。
「いえ、こちらもあまりの驚きに言葉がなくなっただけですので、お気になさらず……王は意識を飛ばしてますが、本題はなんでしょう、お伺いいたします」
宰相の言葉にハッと現実に俺は戻ってきた。
使者の女も同じらしく、改まって話してきた。
「詳しいことはこちらの文に書いてありますが、要約すれば国が滅びそうなので助けて欲しい、ということです」
「あーやっぱりそうかー。内容は予想通りだね。とりあえず文の内容見るか」
といいつつ、使者の女から文を受け取り読む……読む……うん?……えーと……これは……
「ねえ、この内容を彼女いや、第一王女殿は本気で実行する気かな?さすがにこの内容は許せないよ?」
俺が怒っていることに気がついた宰相はいう。
「どういうことですか、文を私にも見せてください」
そういう宰相に文を渡せば文を読み、内容を理解した途端困惑した顔になった。
「あの、私が読んだ限りではカーネ王国を侵略して欲しい。大義名分として国が疲弊しているにも関わらず王侯貴族の贅沢、散財し続けており民の悲痛な叫びと願いを聞き入れないから、とあるのですが…………これはどういう意味でしょうか?」
使者の女は静かにだが諦め切ったように微笑みながら言う。
「宰相様のおっしゃられる通りです。姫様は1年前学園入学を陛下によって取りやめにされたその日からずっと決められていた覚悟と希望です」
「希望?なぜだ?この文を読む限り彼女は己の命すら捨てても構わないと言っているようなものだ。これのどこが希望なのだ!」
使者の女はその言葉に諦め切った微笑みを浮かべながら俺の質問に対して最もだと肯定しつつ言う。
「ええ、私もそうだと姫様に申し上げてましたが……姫様は『民のためにこれが一番なのよ』と聞き入れてくださりませんでした……ご自身の学園入学への道が閉ざされ、婚約者が妹姫様と浮気していため、婚約破棄されたことで、自分ではこの国を変えられない、変えるどころか悪化しかさせられないと………そうおっしゃられ、このような策を立てられました。ですが、もしも半年以内に己の派閥の貴族達が処刑されず、姫様の父である王が改心なされたらばこの策は行わず、何とか、ご自身の力でこの国を変えると言いなされました……ですが、結果はご覧の通り。第一王女派の貴族は大半が死にもう派閥としての力はありません。そして、追い討ちをかけるように今年の作物大凶作とは言いませんが、例年よりかなり少なかったのにも関わらず変わらずとてつもなく重い税金を国としてかけていたところに追い討ちをかけるように追加で徴税したために姫様は王達に期待することをやめ、策を決行なされるとお決めになれました。姫様は『一月以内に王宮側の工作をしておくわ。だからなんとしてでもヨーマ王国の兵を連れてきてね、約束よ』と、そう私にとても残酷な命令を悲しげにですがそれはそれは美しく微笑んでなされたのです………」
最後の方は涙声になりながらも話してくれた。
これは……相当重い決意を第一王女である彼女はしたんだろうな。彼女は良くも悪くも王族らしい王族。
彼女は最も国として大切な宝は民だ、民のためならば王族として己の命すら惜しくないと簡単に言い切ることが出来る人。
彼女いや、第一王女の枷は間違いなく婚約者だった。
何故かと言えば、彼女にとって、婚約者は守るべき存在……それゆえに危険を承知で策を練り、実行することができなかったのだ。そんな枷がつけられる婚約を破棄したのだ。つまり彼女にとって重しはなくなり、凶暴な生き物を野に放ったのと同じ状態になったのだ。だからカーネ王国の民のために己の首を差し出してでも害悪にしかならないカーネ王国の王侯貴族どもを滅ぼそうとするだろう。
だけど……
「これはやりすぎだ。素直に助けを求めれば良いのにな、宰相?」
「ええ、本当にそうですね。ですがカーネ王国第一王女は他のどの国の王族よりも王族らしい王族。素直に助けを求めることができないのでしょう」
「ふっ、なら我が国の対応は決まったな」
そう俺達は言い合った。
そして俺は居住まいを正し、使者の女に宣言した。
「我がヨーマ王国はカーネ王国を侵略する!大義名分として幽閉された第一王女から助けを求めれたことを掲げる!……良いな、使者殿?」
使者の女は感激して
「ありがとうございます…………ありがとうございます……」
と涙を流して喜んだ。
そして一旦深呼吸して落ち着き、使者の女は言った。
「申し出を受け入れてくださりありがとうございます。姫様から申し出を受け入れてもらえたならば私は侵略のためにカーネ王国を道案内せよと命じられております。御同行をお許しいただけますでしょうか?」
「ふっ。あいつらしい。ああ、構わん。同行を許可しよう」
そう言い、使者の女を王城の客室の一室に下がらせる。
そして宰相と部屋に2人きりになり、宰相に命じる。
「軍議を開く。重臣ども今すぐに集めろ。ついでに騎士団長も呼び出せ。侵略の準備をするぞ!」
「かしこまりました、我が君」
そう言い宰相が部屋を出て行く。
俺は軍議の準備をする。
待ってろよ、俺の愛しい囚われのお姫様。今、助けに行くからな。
カーネ王国第一王女視点
侍女を使者にヨーマ王国に使者をやって一月。
カーネ王国なら辺境から順に侵略されている。
王侯貴族どもはあまり危険だと感じていない。
それは当然のこと。
あの愚か者どもには侵略ではなく、隣国のヨーマ王国国王が来るとしか伝えていないのだから。
この件についてわたくし、嘘は言っていないもの。そう、嘘は、ね。
そもそもあの愚か者たちは侵略だと言ったところで、この王都から逃げられない。それならばあえて言う必要もないでしょう?
そして、使者を送ってから一月で備蓄していた食料を何とか民のための炊き出し用に使い、王都周辺だけでも餓死者を出さない様に必死に努力し続けたわ。
……ただ、あまり結果に繋がっているとは思えないけどね。
それと同時に噂を流した。
ヨーマ王国の国王が食料を民のために持ってくると。
ヨーマ王国は救いの手を差し伸べてくれると。
その噂を聞いた民達はヨーマ王国の軍勢を心待ちにしていた。そして内容が内容のため、すぐさま広がった。どこまで広がったかはわからない。ただ、この内容が少しでも遠くの村まで広がって欲しい。
こんな噂が放置されるのは父たる王が完全に政務放棄していらっしゃるおかげで、全くもって民に気を配らず、食料管理も放棄しているため好きなように差配できるから。本当に父の愚かさに感謝しか以外の気持ちが湧かないこと。
さて、あと二日もあればヨーマ王国の軍勢は王都に着く。そこで、全てを終わらせ、新しくこのカーネ国を生まれ変わらせなければ斜陽のカーネ王国に未来はない。
カーネ王国を生まれ変わらせるためにわたくしは今日まで努力してきたのだから。
だから、最期まで必ずやり遂げるの。
願いは一つ。
この国を守ること。
でも……もし許されるのなら最期は恋しいあの人のそばで安らかに逝きたいわ。
ヨーマ王国国王視点
このカーネ王国は酷い。
それ以外に言葉では表すことができなかった。
「ここまで荒れ果てているとは………これは国の根本から変えねば民な暮らしは一向に良くなると思えない。第一王女はこの現状をわかっていたから己の限界を悟った可能性が高いな」
そう俺が言えば今回の同行者騎士団長が答える。
「ああ、これはひでえや。国の頭を入れ替えたところでそう効果があると思えん。………酷いにも程があるな。……それにしてもこのアイデアは陛下からですか?たしかに飢えている民に食料を振る舞えば敵だと思われず、抵抗も少ないでしょうが」
「いや、俺じゃない。あいつがよこした使者がこれもあいつの計画の内だそうだ。だから噂が流れていただろ。その内容についてはヨーマ王国の軍勢は食料を持ってカーネ王国の国王を滅ぼしてくれる……と言うものらしい。俺はカーネ王国の第一王女だけは敵に回したくないと改めて思ったな」
それにしても、あっさりカーネ王国内に入れすぎないか?カーネ王国側の軍勢は一度も見られなかったのは少し異常に思えるのだが。
そう思い、使者の女に聞いてみると、
「姫様は軍勢について王達には誤魔化しておく。絶対に侵略されているとは気付かせないわ、と言っておりましたのでそのためかと思います」
……誤魔化すってどうやるんだろうな。
もし誤魔化しきれるなら相当愚かなんだな、王達。
そしてその尻拭いし続けだなんてすげーな、第一王女、俺は尊敬する。
そんなことを言葉を交わしつつ、王都についた。
ちなみにだが、宰相はお留守番だ。
内政の方を丸投げしてきた。まあ、今回の場合は許してくれるが。
そして、王宮に入る。
……ものすごくあっさりと。怖い。
「これ罠じゃないよな?」
と何度も使者の女に確認しても答えは同じ。
「罠ではございません。姫様にとっては計画通りです」
とりあえず、何故か王宮の表門をくぐり、王たちの待つ謁見の間に到着。
そして、俺を見てカーネ王国国王は言う。
「此度は大義であった。食料だけ置いてさっさと国へ帰れ!」
……俺らヨーマ王国はカーネ王国の属国にいつからなったんだ、と言うことを開き口一番に言われ、困惑している。
「陛下、彼らヨーマ王国はこのカーネ王国を侵略しにきたのです。わたくしは何度も申し上げたはずですわ。このままではこの国に未来はない、と。その言葉を聞き入れなかったのは陛下でございます。我が国は侵略されたのです」
どこまでも愚かな父親に苦言を呈しているのは俺の初恋の人である第一王女。
だが、どこの愚か者も現実を見られないのはお約束らしい。
「貴様は黙れ!ヨーマ王国は我がカーネ王国の属国だ!我らの命令を聞くのが当たり前なのだ!」
「お父様の言う通りですわ、お姉様。侵略なんてありえないに決まっているじゃない」
「そうよ、そうよ。愚かなのは貴女よ。第一王女と言う立場に甘えてろくに社交をしないもの。それでよく今の状況で発言できるるわね。醜い貴女はさっさと下がりなさい!」
……ああ、第一王女は相当頑張ったんだな。
これは害虫でしかない。こんな奴らを葬るために自分すらも犠牲ににしようとするなんて……
国を今まで持たせていたのが誰かこの三人はわからないのだと言うのなら本当に……
「愚かものばかりだな」
「ええ、そうでしょう!お姉様って本当に愚かよねえ。表に出てくることも間違っている方よねえ……ふふふ、あはは」
「違う、愚か者は貴様らだ」
何故だかわからないがこの場にいるのは2人の王女と王、正妃の4人のみ。兵士も騎士も貴族も姿を見せない。
そして、勘違いかつ愚か者の第二王女は顔を真っ赤にして叫ぶ。
「妾が愚かなはずないわ!だって、みんな妾を賢い子だと美しい子だと褒め称えたもの!醜く愚かなのはお姉様の方よ!」
ああ、もうだめだな。聞くに耐えない金切り声。
命乞いすらしない、愚か者の話を聞くのは大変だし、はっきり言って面倒だ。
だから騎士団長に一言。
「落とせ」
パパパン!
凄まじい早技で王、第二王女、正妃が気絶した。
「それで、こんな茶番の果てに何を手に入れたかったんだ、第一王女」
たった1人たっている彼女に問えば満面の笑みを浮かべて言う。
「ふふ。見なければわからないと思って。歪んだ家族と愚かなこの国の頭。これを見て貴方様もよく理解なされたでしょう?この3人が玉座に君臨している限りこの国に未来はないって。ふふ、ただ、それをわかってほしかっただけよ」
当たり前のようにあっさりと言う。そこには一ミリも己の不幸を嘆くと言った感情が見当たらない。だけど今回の俺たちの目的は……
「第一王女、やりすぎだ。ここまで派手にする必要などないだろう?……俺は素直に助けを求めて欲しかった。そうすれば、助けてくれるものは何人もいただろう?」
そう、俺が言えば彼女は首を振って否定しながら言う。
「この国に頼れるものがいなかったからこそ隣国であるヨーマ王国国王にたすけを求めましたのよ……さあ、我らの首をお納めくださいませ」
「っ、自分の命を簡単に差し出すな!たしかに連座で処刑されてもおかしくないほどカーネ王国国王は酷い罪を犯した。だが、俺たちがここにくる途中で、お前について噂をいくつも聞いた。皆、口を揃えて言う。第一王女がきっとヨーマ王国の軍勢を連れてきてくれたのだ、第一王女はこの国の光だと。そんな民の言葉も聞こえないのか!」
第一王女は流石に俺の言葉に絶句した。どれほど自分が民に好かれているのか理解していなかったらしい。
「そう……何も、何もわたくしは出来なかったらそう思っておりましたが……ちゃんと民のためになっていたのですね……」
そう第一王女は少し涙ぐみつつ言う。
そして、俺はくる途中に考えていた案を言ってみることにした。
「なあ、俺たち結婚しないか?そうすれば、ヨーマ王国はカーネ王国を侵略したものの、平和的に統合したように見えるだろうし。………どうだ?」
その提案に彼女は驚いたようだ。だが、満面の笑みを浮かべ
「喜んで。それが民のためにもなるでしょうから」
そう承諾してくれた。
「じゃ、今から厄介ごとを片付けますか」
と、俺が軽やかにこの場にいる騎士団長、と第一王女に向かって言えばら第一王女が即座に言う。
「貴族どもはこの王宮の大広間に集めてありますわ。本日は王家主催の大きな夜会がありますの。愚か者たちは本日、客としてヨーマ王国国王がくると伝えてありますの。……もちろん、罠ですが」
……用意周到すぎて恐ろしいな、相変わらず。
カーネ王国第一王女殿下視点
こんな展開になるとは思わなかった。
でも、とてもわたくしにとってもカーネ王国にとってもよい結末になった。こんな結末を用意してくださった、かの方に感謝を。
そして、侵略が終わって早くも半年が経った。
来年は結婚式。
そのために今、必死に元カーネ王国を建て直している。
二人でやれば苦しくない。
少なくとも半年以上前よりは。
だから、今わたくしは幸せ。
さあ、今日も立て直しを頑張らねば。
お読みいただきありがとうございました!