深まってゆく謎
なぜ自分の姿がそこにあるのだろうか。ありえない。
そもそも存在を知ったのは、この展覧会が初めてだ。なのに描かれている。
見間違えるはずがない。幼い頃のアルバムの自分に瓜二つだ。
「……何であたしが……」
他人の空似とは思えない。昔よくしていた二つ結び、お気に入りのヘアゴム。
ここまでの要素が揃っていて他人というわけがないだろう。
となると幼い頃に、彼と会ったということになる。
それによく見てみると自分を後ろから抱いている女性は瑠海に似ている。
似ているどころか被っている帽子や服もどれも一緒だ。
「どういうことなの……」
「そのまま見た通りが真実だ」
いつの間にか後ろに瑠美奈がいた。瞬間移動をしたのだろう。
「湖原さんと瑠海と……昔、会ったことがあるってこと……?」
「そういうことになるな。じゃないとこんな絵なんて書けないであろう」
まるで全てを知っているかのような口ぶり。なんか腹が立つ。
「……あんたは知ってるんでしょ。全部、何もかも」
「知っているが、そなたを導くのが我の役目。言ったら元も子もないのだ。許せ、結よ」
そういう事情があるのか。いや考えてみたら分かるはずだった。
忘れていた記憶を少しづづ思い出させるように導くのが金魚神の役目。
それなのにまた新たな謎が増えつい、苛立って八つ当たりのようなことをしてしまった。
「……ごめん。考えれば分かる話だよね」
「気にするでない。新たな謎が増えれば混乱してしまうものだ。そなたは素直に謝った。それだけでもう良いのだ」
神様というだけあってとても心の器が広い。流石としか言いようがない。
「結ちゃんが私と彼のことを忘れているのは私のせいでもあるの」
少し離れたところから声が聞こえた。もう出入り口付近に二人はいた。
「私がなぜ金さんと一緒にこうしているのか、それにも関係しているわ。いずれ全て分かるわ」
「え~今、教えてよ~! 瑠~海~」
ルナが地団駄踏んでいる。こういう行動を見るとやっぱり幼いなと思う。
「教えたいのは山々だけど、教えたら私達の意味がないのよ。何より役目に反するわ」
「そっか~。私達には役目があるもんね~。私も知らないからなぁ。早く知りたいなぁ」
パンパンと瑠美奈が手を叩く。
「さてさて、気分転換に別の場所でも行くか。ルナ、お願いできるか」
「ハーイ!」
またルナが指を鳴らすと同時に、景色が一瞬で変わった。
今度は建物の中ではなかった。目の前に建物があった。
それは見覚えのあるものだった。忘れるわけがない。
高校の頃に通っていた学校だった。建物の中と違ってやはり水中だった。
でもただ背景がそうなっているだけで、感覚的には地上と何も変わりない。
「お~ここが結ちゃんの通ってた高校か~。結構おっきいね」
「そんなに大きいのかな……。通っててそう思ったことは特にないけど。あんたの高校はどうだったのよ」
「私の高校も……よくよく思い出せば同じ感じだったような気がする~」
瑠海ほどじゃないけどつい、ツッコミをしてしまいそうになる。
何だそれは。どっちなんだ。
「てことはここで合流するんだね~。あの子と」
「あの子?」
ここからは誰かと合流して一緒に行くみたいだ。一体、誰なのだろうか。
「そなたのよく知っている人物だ。さてそろそろ来るはずなのだが」
そう言うと空中にたくさんの金魚が凄い勢いで泳いで来た。
空が見えなくなってしまう程に。
「どうやらお相手も到着のようね」
「やった~! これでもっと楽しく賑やかになるねっ」
金魚たちは地上まで下がって、まるで誰かを囲っているかのように泳ぎ始めた。
そこには誰もいないはずなのに。
しばらく経つと、金魚たちは少しづづ別の場所へと散らばっていった。
誰もいなかったはずなのに、人の姿が見えた。
その人物は同じ制服を着ている。しかも女性のようだ。
ここまでの情報でなんとなく、誰か察しがついた。
それは嬉しいようで少し複雑な気持ちになる人物だった。
金魚たちが完全にいなくなり、その人物の姿が露わになった。予想通りの人物だった。
「やっぱり、あんただったのね。文香」
「まさか、結ちゃんと一緒にここで行動することになんて思ってもいなかったよ」
つまりここであたしと文香の記憶が、明らかになるということなのだろう。
一体、どんなことがあったのだろうか。
文香に何があったのか。そして、彼と自分に一体、何があったのか。
外伝を挟んで、次回からしばらく文香目線のお話になります。




