湖原 翔
まさかこの美術館に行くまでと行ったあとに、こんな出来事があったとは。
今まで全く思い出せなかった。これも金魚神様の能力だろう。
はっと我に返り左右を見る。誰もいない。あの三人はどこにいったのだろうか。
もしかしてどこかに行ってしまったのだろうか。
「結、我らは絵画を見ておるぞ」
心の中でも読んだのだろうか。瑠美奈の声が右側から聞こえた。
そういえば右側から順路だった。思い出している間に、結構経ったのだろうか。
「ごめん、結構待たせた?」
「ううん待ってないよ~あっそこで待ってて~」
何故かルナの声が聞こえてきた。
待っててと言われたので待っていると、すぐにパチンと指を鳴らした音が響いた。
と同時にその一瞬で瞬間移動をしていた。
周りにはたくさんの絵画がある。ルナが瞬間移動させてくれたようだ。
瑠美奈がくれた能力だろうけど、使いこなせているルナも十分凄い。
「やぁ。彼とのラブラブ~な思い出は思い出せたかいっ」
「まぁ全部じゃないけどとりあえずちょっとは思い出せたよ。あとラブラブは余計」
ラブラブっちゃそうかもしれないけど一応、否定しておく。
ルナなら冷やかしてきそうな気がするから。
入口側から順路となっており、小学生の頃の絵から現在の絵までと順番に展示されてある。
普通の絵画もあれば、スケッチもきちんと展示されている。
順番に見て行ってるけど、どれも見覚えがないものばかり。
大河君と一緒に見たはずなのに、どうもピンと来ない。
「これ本当に彼と一緒に見たのかなぁ」
つい疑ってしまうほどに。
ルナ達はもう見終わったのか出入口付近で、あまり大きくない声で雑談していた。
見終わっていないのは自分だけだったけど、急がずにゆっくりと見ればよい。
と瑠美奈が言ったから有難く、そうさせてもらうことに。
ここの展示室は彼が幼稚園から高校一年生までの作品が飾られていた。
そう聞くととても多くの絵画が飾られているように思えるだろう。
しかし幼稚園から小学校の絵画は数枚ほどしかなかった。
今回のテーマが『金魚』だからだろう。
絵画以外にも合間合間に彼の生涯について記されていた。
パンフレットの続きから話すと、彼は絵画教室の中でも特に注目されていた。
幼いながらもどれも、インパクトに残る作品ばかりを生み出していた。
もちろん、題材は先生と共に考えてそこから構成や下書きに移る。
しばらくは色塗りがあまり上手くなかったり、はみ出してしまったりとあった。
でもそれも少しづつ改善されていった。
小学生の頃は1年に最低2、3回は賞を取っていた。
中学校以降の絵画ははみ出すということは一切なかった。
それは中学校に入学して、美術部に入ったからだと本人は言っている。
美術部には同級生や先輩含め、みな素晴らしかったと。
例え世間から見て自分より上手くない人がいても、彼はそう思わなかった。
自分には思いつかないような発想や構成をしていて、気を引き締めなければ。
吸収できるところは吸収してもっと、自分の絵を素晴らしいものにしようと、
そう決めたらしい。
彼の絵は歳を重ねるたびに、どんどんと上手くなっていってる。
昔から一つだけ共通点があった。それはどれも印象に残るという点だ。
絵画の構成はどれも異なっているし、似ているようには見えない。
けど何故か不思議なことに印象に残るのだ。
どれも見るまでは忘れていたけど、いざ見てみるとあぁこんな絵があったなぁ。
と思い出せるほどに。
十分にここの部屋の絵画は鑑賞できた。芸術に触れるのも悪くない。
これからまた美術館とか展覧会とか調べて、色んなところに行ってみようかな。
「結ちゃ~んっどぉ~堪能した~?」
ルナは早く次の場所に行きたくてうずうずしている。
瑠美奈はその様子を見て笑っていて、瑠海は呆れている。
もう見尽くしたし次の場所に行くとしよう。ルナも早く行きたいみたいだし。
「うんっもう十分に堪能したよ、お待たせ」
走ってルナ達の元へ向かう。その途中でまた瑠美奈が指を鳴らした。
あぁ早く見に行きたいのだろうなぁと、改めて思った瞬間だった。




