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青い春を漂う  作者: CHIKA(*´▽`*)
水中の透海町

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20/39

見知らぬ少女

 いつもと見慣れている町なのに、全く違うように感じた。

 とても静かな空間に響く、蝉の鳴き声と微かに聞こえる波音。

 人は誰一人としていない。

 そして水の中に沈んでいる街並み。いつもと同じ様で、違う光景。



 ゴムボートから落ちないように気をつけて頬杖をつきながら見ていた。

 このままどこへと向かっていくのだろうか。水の流れは思ったより遅い。

 まるで映像をゆっくりと再生しているように思えてくる。



 「……暇だなあ……」

 持ち物は何もないしならばと気分転換に泳ごうと考えた。

 ただ苦しくはならないけど服が濡れてしまうのはごめんだ。

 つまりどこかに止まったり何か起こるまで本当にすることがないのだ。



 横から見る景色にも飽きたので正面からゆっくりと景色を見よう。

 そう思い正面に体を向けた。

 人一人分空いた離れた場所に見知らぬ少女がゴムボードに乗っていた。



 「えっ!」

 いつの間に乗っていたのだろう。何の音もしなかったのに。

 茶髪のスーパーロングで麦わら帽子、そして黄緑色のワンピース。

 少女は視線に気が付き振り向いた。



 「そなたと話すのは初めてだな」

 見た目と違いとても古風な喋り方に驚いた。

 『そなた』っていつの時代の人間なのだろうか。



 ただ、そういう個性的な性格なだけなのだろうか。

 流石、夢の中。何でもありだ。

 今の時代でその主語を使う人を、この目で初めて見た。



 「……」

 やべえ。こういう時ってなんて言ったらいいか分からない。

 まさかこんな古風な喋り方をするとは思ってなかったし予想外すぎる。

 何より色々と想定外過ぎるのだ。頭が追い付かない。



 自分の日本語は通じるのだろうか、なんて思ってしまう。

 「はっはっはっ緊張してしまうのも無理はない。何せ初対面だからな。我が名は瑠海だ。本当の名前ではないがそう名乗っておくとしよう。そなたは結だな」

 何で名前を知っているんだと思いながらも頷いた。

 


 「雰囲気が出ると思ったのだが……蝉の鳴き声は自己紹介をするのには少し邪魔だな」

 そう少女は言うと指をパチンと鳴らした。と同時に蝉の鳴き声が全く聞こえなくなった。

 今さっきまで元気よく鳴いていたのに、急にぱたりと止んだ。



 この少女……瑠海は一体何者なのだろう。

 蝉の鳴き声が聞こえなくなったと確認すると瑠海は話を続けた。



 「結。この世界は夢の中だ。だがただの夢ではない。そなたの記憶を全部見ることができる夢の中の透海町だ。多少の操作や移動や我には自由に出来るがな」

 「夢の……中……」



 改めてそう言われて周りを見渡す。どの建物にも見覚えがある。

 いつも学校へ行く時や出勤する時に見慣れた景色。ただそれが水没しているだけの話だった。

 「……ん?」



 さきほど見慣れたと言ったが一つだけ見慣れていない建物があった。

 それはよく東京とか大阪などの都会で見かけるようなビルだった。

 この町にはビルは存在しなかったはず。

 知らなかっただけで本当はずっと前から、あったかもしれない。



 ……いやそもそもこの町に何故ビルを建てようと思ったのだろうか。

 しかも昔ながらの店に挟まれて間にぽつりと存在している。

 その違和感を放つビルへとボートはゆっくりと近づいていく。



 「あんなビルなんてあったっけ」

 問いかけに瑠海は深く溜め息をついた。

 「まさかあの子……」

 「あの子?」



 また誰か新キャラが出てくるのだろうか。短時間で情報量が多過ぎる。

 ゴボゴボゴボと水の音が徐々に大きく聞こえてくる。

 何かが下から出てくるような気がした。

 「やっぱりね……」



 瑠海はどうやらこの音の正体が何かを知っているようだ。

 ザパーン! と大きな音が響き鳴り人影が上を通り過ぎた。

 それはビルに突っ込んでいって、ビルは真っ二つになった。

 その半分が自分達に向かって落ちてくる。



 うん。待ってどういう状況なの。夢の中で死ぬの?

 思考停止して、ただ落ちてくるビルを眺めていた。死ぬ時ってこんなにもあっけないものなのか。

 この人生、短かったなぁ。まさか二十歳で死んでしまうなんて。



 お父さん、お母さん、ごめんなさい。あたしは貴方達より先に逝くみたいです。

 こうやって事故死した方々は同じように思ったのだろうか。

 「結ちゃんっ。早く私に捕まって!」



 瑠海が手を伸ばしていた。あとなんかキャラ変わっているような気が。

 今はそんなことを気にしている暇はない。このまま何もしなければ死を待つだけだ。

 迷うことなく瑠海の手を掴んだ。



 目の前に広がる景色が変わっていた。下を見てみると何かの建物の上にいた。

 どうやらどこかの建物の屋上に移動したみたいだ。

 「ふーっどうやら間に合ったみたいね。夢の中とは言えどあんなものに当たったら、ショック死してしまう可能性もあるからね。無事でよかったわ」



 今、ショック死してしまうってサラッと言ったけど一大事じゃないか。

 九死に一生を得るという言葉にぴったりな体験をしたなと思うと同時に。

 建物が崩れたであろう凄まじい音が、少し遠くから聞こえた。

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