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青い春を漂う  作者: CHIKA(*´▽`*)
出会い

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15/39

彼との出会い

 まるで昨日のことのように覚えている。今まで全く何も思い出せなかったのに。

 それは高校二年生の時のこと。6月13日の話になる。

 部活には入っていたけど放送部だけで毎日、活動があるというわけじゃなかった。



 その日は何もなく高校の近くの公園のブランコで一人遊んでいた。

 高校から自宅は近く早く帰っても特にすることがなかった。

 だからブランコをしようと思ったのだ。



 公園にはブランコやシーソー、地球儀、滑り台などありしかもそれなりに広い。

 目の前に広がるのは数々の木々と少し離れたところに見える道路だけ。

 個人的には広いだけが取り柄の公園かなって思っている、今でも。



 ということで時間潰しに持って来いというわけなのだ。

 そして何故たくさん遊具がある中でブランコを選んだのか。理由は簡単だ。



 風を感じられるから。そうたったこれだけの理由。

 でも理由なんてものは単純でもいいと思う。

 だって6月……つまり、そこそこ暑い、そう暑いのだ。



 別にそう言うなら家に帰ればいい、と言う人の方が多数だろう。

 でも本当に家帰って何も、することがなかったのだ。



 ……いやあった。それは実に単純明快な方法。

 自室に引き籠り窓を完全に閉める。

 そして冷房をつけ最低温度にして部屋でごろごろするということ。



 まあなんと環境にも悪く、電気代の消費が激しいことだろう!

 それもそうだし当時はそんな方法なんて、全く思いつかなかった。



 ということで、少し暗くなるまでブランコで時間を潰そう、ということになった。

 文香は生徒会に入っていて、今日も生徒会の活動があり本当に一人だった。



 「あっつ~~~いっ!!!」

 誰もいないと思っていたから、思いっ切り叫んだ。叫ぶとやっぱりスッキリする。

 今まで暑さでイライラしていたのが吹っ飛んだように感じる。



 でも見覚えのある制服の男子生徒がを呆然と見ていた。

 その制服は自分の高校のものと一緒だった。

 「あっ」



 そしてその顔にも見覚えがあった。

 クラスが一緒の野球部のあかつき大河たいが君だった。

 大河君はブランコから少し離れたブランコが当たらない安全な場所から見ていた。



 まさか知り合いにこんな姿を見られるなんて……。しかも野球部の人に。

 当時は野球部に対してあまりいいイメージを持ってなかった。



 勿論、全員が悪いとまでは思ってなかった。でも授業中に騒がしいのが野球部の連中というわけだ。

 下ネタだったり次いつ遊びに行くだったりとか、全く授業に関係ないことばかり。

 それはまさにラジオで時々流れる雑音のよう。その中には彼もいた。



 彼のことは好きでも嫌いでもなかった。まあ好きか嫌いかって言われたら、好きな方に入るのだけど。

 彼はそこまでうるさくなくて、好みの雑音って印象だった。

 うるさいのがあまり好きでもなければ、静か過ぎるのもあまり好きじゃなかった。



 だから彼の騒ぎ声はあたしにとっては心地良かった。

 騒ぎが心地いいって言うと変に聞こえるかもしれない。

 でも心地良かった。



 少しうるさいなあって思う時もあったけど。多分声が好きだったのだと思う。

 彼の声は所謂イケボというのではなかったのかもしれない、彼の声は低かった。

 もっと低い人もいた。



 けどその人の声より彼の声が好きだった。声フェチってわけではないのだけど。

 特別、彼の声は何故か好きだった。

 聞こえない時はちょっとだけ、不安になるくらいに。



 野球部の中にもそれなりに、話が通じる人はいる。彼もその内の一人だ。

 でも何だろう。ほとんど話したことがない彼の方が良かったのだ。



 心の奥で彼と話してみたいという思いはあった。どんな風に話してくれるのだろうと。

 それが叶うなんて思ってもなかった。



 でももっと良い形はなかったのだろうかと本当に思う。

 「……見てた……よね……」

 もっといい言葉があったかもしれない。でも当時はこれがベストだった。



 「お……おう」

 この反応に大河君はちょっと驚いていた。

 誰か今すぐ穴の中に埋めてくれ。本気でそう思った。



 まあ驚くのも無理は無いと思う。言葉だけ聞くと普通に聞こえるだろう。

 でも普通に言ったわけではない。



 もういつもより何倍も低い声。しかも死にかけの老人みたいに言ったからだ。

 反応が見たかったからそうしたのではなく、ただそうなってしまっただけなんだけどね。



 「そっ、そっか~良かったぁぁぁ」

 つい安心してブランコから落ちて、その場にへなへなと座り込んだ。 

 しかしそれが思ったより勢いよく、少しだけ痛みを感じた。



 「だ……大丈夫か?」

 大河君が近付き心配そうな顔で見る。勢いよく落ちたことに気付いたのだろう。

 「ったあ……大丈夫……かな多分」



 ゆっくりとその場に立ち上がる。

 行進してみたり駆け足してみたり、ジャンプしてみたりと。一通りの行動をしてみた。

 ほんの少し痛むけどこの程度なら一日か数日経てば治るだろうと思いホっとした。



 「足、大丈夫か?」

 まだ心配してくれている大河君ににこりと微笑んだ。

 「うん、大丈夫だよ。ありがとう」



 この対応だけで分かる、大河君は他の野球部の人と違うと。

 単純なだけかもしれない。

 他の野球部の人の目の前で、同じようなことをしたとしよう。



 大河君以上の神対応ってやつをしてくれる人がいるかもしれない。

 でもそう感じたのだ。もう少し詳しく説明するなら……女の勘というやつ。



 「そういえば暁君、部活は?」

 この時はまだ上の名前で呼んでいた。男子はみんな上の名前で呼んでいた。



 「ああ今日は部活休みだ。顧問が用事あっていつもなら野球部の奴らと一緒に帰るけど今日はなんとなくここに寄った」

 タイミング悪すぎではないかと真っ先に思った。



 もし未来予知というものが使えるのなら。

 このことを誰よりもいち早く知って叫ぶ前に会いたかったなんて考えたりした。

 今思えばこれは偶然ではなく、必然で運命というものだったのかもしれない。

 


 「……水本は何してたんだ?」

 それ聞きますか、えっ聞いちゃうの、聞かないで下さい。

 と言いたいところだけどまあ聞きたくなるよね~と。頭の中は忙しかった。



 色々と考えた結果、ありのままのことを言うことに。

 「公園で時間潰してたの」

 超分かりやすく簡略化した。でも事実なのは変わらないからいいだろう。



 「そっか。いやなんとなく公園に寄っていると水本がいて驚いたな。しかも叫んでたし」

 「……すみません」

 つい反射的に謝ってしまった。



 「いや別に気にしてないけど」

 咄嗟にそう言われた。

 穴があったら入りたいってこういうことを言うのだろうなあと身をもって経験した。



 「暁君って女子のことを上の名前で呼ぶんだね」

 話を逸らしたくて、何か話題はないかと思いついたのがこれだった。

 「ああ、まあな」



 「何でなの」

 ただ話を逸らしたくて必死だった。だから沈黙を少しでも作りたくなかった。

 「別に……特に何も意味はないけど」



 「じゃあさ、今は二人しかいないし、お互い下の名前で呼ばない?」

 すぐに思いついた返事がこれだった。いやこれを返事と呼んでいいのかただの提案だ。



 「たっ大して意味はないのなら、あたしは下の名前で呼んで欲しいなっ」

 絶賛、パニックに陥っていた。

 だからいまいち自分でも何を言っていたのか理解が出来ていなかった。



 パニック状態になっている自分に大河君はこう言った。

 「……別にいいよ」

 まさかのOK。



 その言葉でやっと我を取り戻した。そしてきちんと今の状況を理解することができた。

 「結……だったよな。俺の下の名前、分かる?」

 彼がちらっと見る。



 名前は覚えていた。

 よく配布物や返却物を配るから。クラスメイトの名前は全員把握していた。



 「そう、結だよ。大河君」

 ふふっと笑った。大河君は少し頬が赤くなっていた。

 なんだが話したばかりなのに、一気に距離が縮まった気分になった。



 彼の見た目は少し厳つかった。目は一重で体型はがっちりとしていて肩幅が広かった。

 大きな背中を見るだけで、もとても頼りになりそう。



 太っているとか痩せたらとかよく友達にからかわれていたけど、全然気にならなかった。

 むしろ今のままの彼が好きだった。変わらないで欲しいなと思っていた。



 とても貫禄があるような見た目。

 真顔はちょっと怖いなと人によっては感じてしまうと思う。

 あと身長は172cmくらい。身長は身体測定での結果を友達同士と話し合っている時に知った。



 そんな人だった。でもその時、彼がとても可愛く思えた。

 ギャップ萌えというやつなのだろうか。

 普段厳ついからこそ照れている顔が良かったのかもしれない。

 だからつい声に出してしまった。



 「大河君って可愛いね」

 「……は?」

 自分が可愛いなんて思ってなかったのだろう。ちょっとだけ動揺していた。



 「俺が……か?」

 「ふふふっ」

 彼が少し子供っぽく思えてつい笑みを浮かべた。



 これが大河君との出会い……と言いたい。

 だけども、その日に起きた出来事はこれだけでなかったのだ。

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