区画整備の重要性
「まずは区画整備から始めよう!」
「区画整備ですか? 半径五十メートルほどなのに必要なんですか?」
ドラゴンを抱いたルイスが首を傾げる。
「小さくても必要だし、これから大きくしていくならなお必要だよ。そうじゃないと住みやすい村づくりができなくなる」
まだピンとこない様子のルイス。
「例えば」と前置きを置いて、空間魔法を発動させ紙を取り出した。
ルイスは「また空間魔法………」と呟き、紙を覗き込んだ。
「白紙………ですね?」
「ここに村を作るとする。今は大体こんな感じかな、」
いうと、その紙が端からみるみる色づいていき、
それを見ていたルイスは「……投影魔法をカラーで………」とまた難しい顔して呟く。
「投影魔法って、普通白黒なんですからね………」
「そうだったけか? カラーの方がわかりやすくないか?」と当然のように返すフリルに、
「だから、やろうと思ってもできないって言ってるじゃ無いですか」と切り返す。
しばらくすると、まるで上空から撮影したかのような綺麗なカラー写真が出来上がった。
「すごい、こんな細かいとこまで……あ! これ私ですね!」
「そうそう、ちなみにこんなこともできるぞ」
フリルはその紙を「これ見てて」とルイスに渡し、そして風魔法で周辺の木を伐採した。
ルイスは言われるまま紙を受け取り、
「!?」目を丸くして投影された紙を二度見し、目を擦る。
「え……? え?」
「リアルタイム投影だ」
「え……?」
「リアルタイム………って知らないか?」
「もちろん知ってますよ。」
「よし、それじゃ区画整備の大切さについて、」そこまで言いかけたフリルに、「待って待って」と声を掛ける。
「そうじゃなくって! 言葉を知らないから驚いたんじゃ無いんですよ!? フリルさんが人間の所業を超えたことしたから唖然として『え………』って反応になったんですっ!」
「だが、便利だろう? 現地の人たちもこっちの方がわかりやすいと言ってくれてたし。あ、一つ前の映像に戻すこともできるぞ」
「仕事で使ってたんですか!? 絶対これ誰も引き継げませんよ……」と、喉まででかかったが、フリルの手元を見て閉口した。
ルイスの持っている紙を横にスライドさせる。すると、フリルが木を伐採する前の状態に戻ったのだ。
「………そうですね。確かに便利ですね。」
いちいち驚いてると話が進まない、そう悟ったルイスはただただ受け入れることにした。
「だろう?」と前置きして、フリルは区画整備の説明を始める。
「区画整備されてないと、色々不都合が起きるんだ。土地を有効活用できなかったり、道が入り組んで住みにくい場所になったり、風通しがわるくなったり、雨が降った際になかなか水がはけなかったり。土地権利の不明瞭化だったり」
「さすが、王宮で働いてただけありますね!」
「都市開発を38件任されてたからね」
「……。どれだけ大変かはわかんないですけど、とんでも無いことだということはなんとなくわかります……」
「誰に引き継がれるのか心配だなぁ……ま、そんな感じで区画整備の大切さがわかったでしょ?」
コクコクと頷くドラゴンとルイスを見て、フリルは大まかな線引きを始めた。
「ここに村のシンボルになる大きな木をおきたいなぁ、それでこの周辺を子供たちが遊べるように公園にして、このスペースに孤児院をおこう。それから――」
着々と進んでいく土地計画を、ルイスは渡された紙越しに見てため息をこぼす。
「『誰に引き継がれるか心配だなぁ』って………誰《《も》》引き継げるわけないじゃないですか……。すごいなぁ……何気にあの木を植えるって言ったとこ、ちょうど開拓したスペースのど真ん中だし。」
またフリルさんと一緒に過ごせるのかぁ。力になれることがあればなんでもしたいけど……フリルさんにはそんなの必要ないか。
そう思い、フリルの背中を見て勝手に落ち込むルイスに、抱かれたドラゴンが「クゥン」と鳴く。
気づいたルイスが両手で抱え上げる。
「おぬしはほんとに愛いやつよのぉ。どこから来たんだい? あ、そうだ。名前をつけてあげよう! おぬしの名前は今日から『ルー』だ!」
戯けるルイスに、ルーは「クゥン!」と嬉しそうな声をあげる。
「そうかそうか。嬉しいかぁ〜」と言って、フリルの元へと駆け出した。