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フリルの実績

 荷物をまとめて王宮を出たフリルは、当てもなく城下町をぶらついていた。


「あ〜あ。これで無職になっちゃったなぁ」


 フリルは王立学院首席である。それもただの首席ではない。

 王立学院とは、王国のみならず、方々の国々からも応募者が殺到する、世界最高峰の教育機関である。

 裏口入学は一切受け付けない、完全実力主義の世界――平たく言えば人外共の巣窟だ。


 ――生まれ落ちた時の第一声で魔法を操り家屋を全壊させた者。

 ――生後二日で大グマを相手に素手で殺り合い、勝利した者。

 ――短刀で周囲二キロはある国宝の大岩を真っ二つに割った者。

 ――魔境と呼ばれる魔物がのさばる森に捨てられ、数年後五体満足で帰還した者。

 ――剣一本で数十万の魔物の大群から村を救った者。

 そして――怒りを買えば一国が滅ぶドラゴンに単身で挑み、素手で殺す者。


 そんな世界だからこそ、入学できれば一生安泰。それどころか平民が一気に上流階級の人間へと昇華できる。それが信じられてきた。

 それゆえ、毎年入試倍率は100倍を優に超えるほどの激戦であった。


 在学期間は6年。


 外界の常識が一切通用しないイカれた世界。その中でも別格のトップ層十人にのみ、王宮で働くことを許される。そのため、王宮内は高いレベルで各々の均衡が保たれていた。


 そこに、それまでの常識を覆す天才の一言で表すにはあまりにも生ぬるいバケモノが現れた。


 ――フリルだ。


 フリルはそんな非常識渦巻く魔境が生み出した、人類最高傑作だった。

 いや、むしろ手に余ったと言った方が良い。


 魔境ゆえに全てが高レベル。その中で頭一つも二つも抜けた存在がいるというありえない事態に、学院は大慌てで対処を検討した。

 飛び級という制度自体なかった学院に、フリルは革命をもたらしたのだ。

 これはフリルが入学した初日のオリエンテーションでのことである。


 飛び級に飛び級を重ね、一年が終わる頃にはもはや誰も教鞭きょうべんを執ることができないほどの成長を遂げたフリル。

 一年生が終わったフリルに、もはや人外魔境学院ですら手を余し、学院は莫大な苦労をかけ、創設時から六百年変わらなかった伝統ある制度をフリル一人のために改訂したのだ。


 急ピッチで事は進められ、それから一年。


 そうして、二年で魔境、王立学院を卒業したフリルは、念願だった王宮で働くことを許可され、その年の倍率一万五千倍の試験にも一発で通ったのだが………


 周りよりも頭ひとつ抜けて優秀で、圧倒的に若かったフリルへの風当たりはそれはひどいものだった。

 その結果、意図的に王宮で四部問あるうち、もっとも過酷だと言われるあのクソ上司の元へ配属されたのだ。


 働き出して二年目。

 フリルの優秀さをしめたクソ上司は、自身の出世のため、王宮内の仕事を集められるだけ集め、それをフリルに丸投げしていた。

 優秀なフリルだからこそ徹夜でなんとかなったもの。常人であれば過労死するレベルの仕事量である。


 ついにはどれだけ自分が仕事を押し付けていたのかわからなくなり、それで出てきたのが先程の「永久追放だ!」だ。


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