フリルの存在
追放されて四日後、運命の日。
今日、本来なら西国との定期会談の予定があった。
首相とフリルの出会いは、今から二年前の就職翌日、
関係最悪だった西国との会談に望ませ、失敗させ、それをダシにクビにしようという王宮上層部の思惑だった。
で、言われるがまま望んだ結果『ずっと続いてきた戦争の終結』という歴史に残る快挙を果たしてしまったというわけだ。
元々は講和会談という体で行われていた。
しかし、今や西国の首相の日頃のストレス発散になっており、
『一ヶ月に一度のこれが私の生き甲斐といっても過言ではないわっ!』
と公言するほどである。
そのため、会談といっても、西国の首相と一時間ばかり雑談をするだけ。
いつもはそれでよかった。
ただ、今回は勝手が違うらしい。
ものものしい雰囲気で王宮の前に西国の一行が近づいていた。
☆
四日目の朝、フリルの部屋。
朝日が当たるように調節したベット。
妙な息苦しさを感じ、フリルは目を覚ました。
鼻先をくすぐる女の子の優しい匂い。そして微かに木の匂い。
スゥスゥと妙な音も聞こえる。
「……なんだ」
まずは木目の天井、次に窓から見えるシャボンツリー、最後に小さな頭が視界に入った。
「………ヴィ、ヴィ、ヴィ、ヴィネス!? な、なぜここに……!?」
――バタンっ!!
と大きな音を立てて開かれるドア。
学院の制服姿で慌てていたルイスは、部屋の様子を見て一変。
目が合ったフリル。
背筋の凍るような錯覚を覚えた、冷たい汗が頬を伝う。
一瞬の沈黙の後、これはまずいと感じたフリルは、早口で弁明を試みる。
「ち、ちが! これは違うんだルイス!! 俺はなにもしていないっ!! 気づいたらここにヴィネスがいて……それに!! ち、ちょうどよかったなルイス……俺も今起きたところだったんだ……な?」
なおも変わらぬ凍った目。
「なんで二人が………同じベットで寝てるんですかぁぁ!!!」
「だから、俺はなにも、」
「私も寝ますっ!!!」
流石は剣一本で魔物数十万を相手にした英雄、強烈なダッシュで一瞬のうちにフリルの布団へと潜り込んだ。
☆
「つまり、危険な森で暮らしてたから安心できる場所じゃないと寝れない……で、その安心できる場所がフリルさんの腹の上だったから本能的に夜這いしてしまったと………いうことですね」
リビングで、フリルは申し訳なく縮こまっていた。
例によって仏頂面のヴィネスは、目こそ空いているがおそらく起きてはいない。
「そう、そう。わかってくれたか。」
ルイスが「そう言うことなら、別にいいですけど。それはそうと、」と一言おく。
「なんで今日そんなにそわそわしてるんですか?」
「おととい言っただろ? 今日会談があるんだって」
思い出したように「あぁ〜」とこぼす。
「ルイスはなんだよ? 今まで俺の部屋を覗くことなんてなかったろ」
「あっ! そうですよ! 今日学校なんですっ! それで送ってもらおうと思ってフリルさんの部屋に行ったらあんなことに!」
「なるほど、偶然が重なった結果ということか。ヴィネスには俺から言っておくから。んじゃ、行こうか」
「もう、よろしくお願いしますよ。」とルイス。
ルイスはまだ思春期真っ盛りの可愛い女の子です。