女子会
フリル宅のリビング、陽光が差し込む質素な木の部屋。少女が二人。
王宮職員が木目の綺麗な机に髪を広げて突っ伏していた。
「うぅ……フリルが人間じゃないだけなのに……ぐすっ……仕事が遅いだの……うぅ……道路の補修に来て欲しいって言われたから、『距離的に着くまでに一ヶ月はかかります。それから補修となると一週間ほど……』って言ったら……うぅぅ……」
「はいはい。わかります、わかります。『はぁ!? この前、いや、フリルさんなら遅くても翌日には補修してくれたぞ!!』って言われたんですね。」
「うぅぅぅ………っ……スケジュールも………スケジュールもおかしいっ! 分刻みで王国の端から端まで往復できるわけない……っ!! うちは人間だ……! あんな人外狂人基準で仕事を……うぅ……振ってくるなぁ……」
「うんうん、大変ですね。あの人、息吐くように転移魔法使いますもんね……」
「……転移魔法なんて、フリルが使い出したから名前がついた魔法……うぅ……みんな好き勝手言って……ぐすっ………っ」
「ですよねですよね。転移魔法なんて未だに作り話だと思ってる人たくさん居ますもんね。」
ルイスは、五歳ほど歳の離れたヴィネスを慰め、「フリルさんの仕事をたった一つ引き継いだだけで……」とこぼす。
「フリルさんって王宮でどんな感じだったんですか?」
「……フリルは、真面目で、優秀だった。」
ヴィネスは机に伏したまま答えた。
コクコクと頷く。
「……後輩はみんなフリルさんに憧れてた、でも先輩たちには嫌われてた。」
「フリルさん………」
「……外面はフリルのゴミ上司とか国王が、直近二年間の改革を進めたってことになってるけど、」
そこまで聞いてルイスの目が曇る。
「……あのゴミ上司が、できるわけない」
――やはり万死。国の安泰のためには死んでもらうしか。
一瞬、そんな考えがルイスの脳裏をよぎった。
「……でも、うちらの仕事はどんどん減って、最終的に業務はフリルがほとんどやってたから、うちたちがすること言えば王宮内の掃除と、フリルが作った勤務表にそって昨日みたいに検問所に常駐するとか、誰でもできる簡単な書類整理。あとは国民のいろんな相談とか。」
「エリート……じゃなくても、制服着てそれっぽくしてたらできますね……。他には?」
「……フリルは掃除できないからいつも散らかってた。売れば一つで国家予算一年分くらいになる、フリルいわく……《《ゴミ》》が。」
目が点になる。が、一度フリルの投影魔法を間近で見ているので、「あぁ……あれのことか」と自己解決した。
「……フリルが休んでるとこ見たことない。」
「あ、あぁ……」
言葉は出ないがこれには納得のルイス。
「……あんなの人間じゃない。国民もうちらと《《あれ》》を一緒にしないで欲しい。うぅ……」
「心中察するに余りあります………」