3 ララとリリ
二人の少女がじっとこちらを見つめている。
身長は140センチ程。短めの髪は茶髪に所々黒い毛が混じっており、まだら模様になっている。服はアクアマリン色のワンピース。
華奢な白い手足。
大きく丸い目とあどけない顔立ちは可愛いといえば可愛いが。
何より目を引くのは背中の物だった。
二対四枚の羽が生えている。それらは虹色の光彩を放っていた。
「お前たちは……」
「ララ」
「リリです」
「は!?」
「この子たち、あなたのことを追って遮二無二飛び込んできてしまったのです。そのまま消滅させることも考えたのですが、あなたを想う強さに心を動かされましたので転生させちゃいました。このこの、愛されてますね。ひゅー」
こいつ、マームだったか?だんだんウザったらしくなってきたな。
そんなことより……。
これがララとリリ?三毛猫の?
俺はララと言った方に近づく。
髪色はそれっぽいがせめて耳や尻尾くらいいるだろうよ。
それに何だこの羽は。
虹色の薄いそれをつまんでみる。ひんやりツルツルとした感触。
「ひゃん……!」
「す、すまん」
「いえ」とララは首を振ると熱い息を吐く。
ぴとりとリリと言った方が体を寄せてくる。羽をこちらへ向けてくる。
もしかして触れと?
「ひゃん……!えへへへ……」
俺は本能的に危機感を抱き距離を取る。
ひどい夢だ。
彼女いない歴=年齢かつ童貞をこじらせるあまり、夢の中とはいえ、大事な家族であるはずのララとリリをこんな邪な姿形に変えてしまった己の業がショックだった。
深いため息をつく。
それをどう捉えたのか二人が必死に言ってくる。
「あの日、主様に拾われなければ、ララたちは死んでいました」
「主様はリリたちにご飯をくれました。愛情をそそいでくれました」
「ララたちの命、最期の時が来るまで主様に尽くします」
「わがまま言ってごめんなさい。それでも、リリとララちゃんを主様と一緒に連れて行ってください」
「「お願いします」」
二人の目には涙がたまっていく。
まるでこっちが虐めているみたいじゃないか。
「ほら、どうしました?男の甲斐性を見せる時ですよ?」
マームがクスクスと笑う。
あーもう考えるのが面倒だ。
「分かった。一緒に来い」
「「はい!」」
ララは無表情がデフォルトなのか目元と唇を緩めただけだった。
一方、リリは花咲く笑顔で喜んでいる。
「うまくまとまってめでたしですね。ああ、ちなみにこの子たちは人間ではなく精霊という種族になります」
「精霊?」
「オリジナルではなく、コピーの方ですけどね。その辺りの知識はお二人に教えてあるので聞いてみるとよいでしょう。ですが、あくまでさわり程度の知識なのでそれ以上詳しく調べたりするのは、サトウ・タスクさん、あなたの自由です」
「ふーん」
軽く聞き流していいだろう。
それにしても長い夢だ。
それに何というかこうも具体的な夢は人生で初かもしれない。
「あ!忘れるところでした!サトウ・タスクさん、お二人と精霊契約してください」
「はいはい、どうやればいいんだ」
「投げやり気味なのが気にはなりますが、そうですね、ララさんとリリさんはどこに契約紋を刻んでもらいたいですか?」
聞いた瞬間、二人はワンピースの裾をめくり上げた。
白い腹とヘソが露わとなる。
突然のことで凝視してしまったが、下着は履いているのでセーフ……と思いたい。
「主様、ここに」
「主様に触れられるのリリ好きなんです」
「ということらしいですから、手のひらで触れてあげてください」
「……」
沈黙で拒否を表明した。
すると、ララとリリがそれぞれ俺の手を取って腹に触れさせた。
客観的に非常に危うい絵である。
少女の、それもヘソ下のかなり際どい位置だ。
抗議に顔を上げるが、二人はもはや心ここに在らずの表情。
「準備は整いましたね。さあ、魔力をお二人に流し込んでください」
「魔力ってなんだ」
「サトウ・タスクさん、あなたならもう感じ取れるはずです。体の奥にある熱いそれを。そして本能のまま解き放つのです」
何言ってやがると舌打ちするも、確かにそんな物があるのが分かる。
さっさと終わらせるため全神経を集中する。
魔力とかいうそれを手のひらから流すイメージで。
一気に解放する。
「「〜〜〜っ!」」
ララとリリが言葉にならない絶叫を上げる。
体を仰け反らせた後、へなりと倒れ込むと、びくんびくんと小刻みに震わせる。
だらしなく舌と涎を出している。
「サトウ・タスクさん、激しすぎます。もっと優しくしてあげないと女の子の体はデリケートなのですから壊れてしまいますよ」
なんだか急に体が重く、動かなくなる。
俺は糸が切れてしまった人形のように倒れてしまった。
「だけど、一応は成功したみたいですね。ほら見てください。お二人のお腹のところ、ちゃんと契約紋が浮かび上がっているでしょう?これでお二人はサトウ・タスクさんのものになりました。責任持って可愛がってあげないといけませんよ」
マームが何か言っているようだが、意識が薄れていく。
「あら?サトウ・タスクさん?サトウ・タスクさーん?ふふ、魔力切れでしょうか?それでは今のうちにアトラリエに送ってあげますね。あなたたちの旅路に幸あらんことを」
意識が完全に途切れる直前、まばゆい光に俺たちは包まれた。